まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「危険な噂(Don't Do Me Like That)」トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ(1979)

 おはようございます。

 今日はトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ危険な噂」です。


Don't Do Me Like That

 

 ” 友達としゃべってたんだ 

   ある女がプライドを傷つけたんだってヤツは言った

   オレは言ったよ 彼女はおまえをすごく愛していたけど

   気持ちが変わって おまえと別れただけじゃないかって

   そしたらヤツが言うんだ おまえも気をつけたほうがいいぜ

   でないと傷つくことになるぞ

      誰かがおまえに嘘をついて  プライドを粉々にしちゃうんだ

 

   そんなことしないでくれ そんなことしないでくれ

   オレがおまえを愛していたらどうするんだ、ベイビー

   そんなことオレにしないでくれ

 

   そんなことしないでくれ そんなことしないでくれ

   いつかおまえが必要になるかもしれないんだ、ベイビー

   だから、そんなことオレにしないでくれ

 

    聞いてくれ、ハニー、わかるかい?

       ベイビー、おまえはオレを葬ってしまうかもしれないんだ

    他の誰かを試そうとする世間の目にさらされていたら

    わかるよな、おまえも気をつけたほうがいいぜ

    でないと傷つくことになるぞ

       誰かがおまえに嘘をついて  プライドを粉々にしちゃうんだ

 

       そんなことしないでくれ そんなことしないでくれ

    オレがおまえを愛していたらどうするんだ、ベイビー

    そんなことオレにしないでくれ

 

    そんなことしないでくれ そんなことしないでくれ

    いつかおまえが必要になるかもしれないんだ、ベイビー

    だから、そんなことオレにしないでくれ

 

       というのは、心の奥のどこかで 何者かが言うんだ

  愛なんてそんな長く続きはしないって

  こんな思いに囚われている 昼も夜も

  もう、我慢できないよ

 

  聞いてくれ、ハニー、わかるかい?

       ベイビー、おまえはオレを葬ってしまうかもしれないんだ

    他の誰かを試そうとする世間の目にさらされていたら

    わかるよな、おまえも気をつけたほうがいいぜ

    でないと傷つくことになるぞ

       誰かがおまえに嘘をついて  プライドを粉々にしちゃうんだ

 

  そんなことしないでくれ そんなことしないでくれ

     オレがおまえを愛していたらどうするんだ、ベイビー

     そんなことオレにしないでくれ

 

     そんなことしないでくれ そんなことしないでくれ

     いつかおまえが必要になるかもしれないんだ、ベイビー

     だから、そんなことオレにしないでくれ     ” (拙訳)

 

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I was talking with a friend of mine
Said a woman had hurt his pride
Told him that she loved him so
And turned around and let him go
Then he said, you better watch your step
Or your gonna get hurt yourself
Someone's gonna tell you lies
Cut you down to size

Don't do me like that
Don't do me like that
What if I love you baby?
Don't do me like that

Don't do me like that
Don't do me like that
Someday I might need you baby
Don't do me like that

Listen honey, can you see?
Baby, you would bury me
If you were in the public eye
Givin' someone else a try
And you know you better watch your step
Or you're gonna get hurt yourself
Someone's gonna tell you lies
Cut you down to size

Don 't do me like that
Don't do me like that
What if I love you baby?
Don't, don't, don't, don't

Don't do me like that
Don't do me like that
What if I need you baby?
Don't do me like that

'Cause somewhere deep down inside
Someone is saying, Love doesn't last that long
I got this feelin' inside night and day
And now I can't take it no more

Listen honey, can you see?
Baby, you would bury me
If you were in the public eye
Givin' someone else a try
And you know you better watch your step
Or you're gonna get hurt yourself
Someone's gonna tell you lies
Cut you down to size

Don't do me like that
Don't do me like that
What if I love you baby?
Don't, don't, don't, don't

Don't do me like that
Don't do me like that
I just might need you honey
Don't do me like that

Wait
Don't do me like that
Don't do me like that
Baby, baby, baby
Don't, don't, don't
No
Don't do me like that
Don't do me like that
Baby, baby, baby

 

Writer/s: Tom Petty

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  トム・ペティブルース・スプリングスティーンなどと並ぶ、アメリカのロック・ヒーローであり、ハートブレイカーズは究極のギター・ロック・サウンド を聴かせてくれる偉大なバンドなのですが、日本では十分に評価されないまま、トムは2017年に亡くなってしまいました。

 

 この「危険な噂」はまだ無名だった彼らを一躍”全国区”にしたヒット曲でした(全米最高10位)。

 

  トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズは”マッドクラッチ”というバンドをやっていたトムとマイク・キャンベル(ギター)、ベンモント・テンチ(キーボード)を中心に1976年に結成されました。

 デビュー当時はイギリスで先に火がつき、セカンド・アルバムでアメリカでも人気が出始めたとき、トムは自分たちはまだレコーディング作業を全然マスターしていないと感じて、助っ人を頼むことにします。

 ブルース・スプリングスティーンが作った、パティ・スミスの「ビコーズ・ザ・ナイト」(作詞はパティ)のドラム・サウンドを非常に気に入ったトムは、その作品のエンジニアとプロデューサーのジミー・アイオヴィンにエンジニアをやってもらうためニューヨークからLAまで呼び、住む場所も提供したそうです。


Patti Smith Group - Because the Night (Official Audio)

 

 ジミー・アイオヴァインは、スプリングスティーンの名作「明日なき暴走」のレコーディングでエンジニアのアシスタントだったのですが、レコーディングの過酷さにそのエンジニアが逃げてしまい、急遽メインに抜擢され有名になったというプロフィールの持ち主です。スプリングスティーンはスネア・ドラムをスティックでたたく音ひとつを決めるだけのためにスタジオで3週間も作業したそうですから、ジミーは”ドラムの音作り”には長けていたのでしょう。

 

 そして、レコード会社での打ち合わせでジミーは別のエンジニアを連れてきたそうで、トムがジミーにおまえがエンジニアだろ?と聞くと、ジミーは”オレはプロデューサーをやる”と答えたそうです。そして、やがてトムはジミーがエンジニアよりプロデューサー向きだとわかっていったそうです。

 

 ちなみにジミーが連れていったエンジニアはシェリー・ヤーカス。ジミーがアシスタントをした、ジョン・レノンの「心の壁、愛の橋」のメイン・エンジニアをやっていた人で、ジミーが手がけたパティ・スミスのアルバムでも共同でエンジニアをやっていました。

  エンジニアとしてのキャリアも技能もジミーより上で、その後、ジミーがプロデュースしたU2スティーヴィー・ニックスボブ・シーガーダイアー・ストレイツなどの作品も彼がエンジニアをつとめていて、強力なタッグ・チームだったことがわかります。

 

 アルバムのためにトムからいろいろ曲を聴かせてもらっているなかで、ジミーがとても気に入った曲がありました。

 それが「危険な噂」でした。

 これはトムが”マッドクラッチ”時代にギターのマイク・キャンベルと一緒に書いた古い曲で、自分たちがやるよりJ・ガイルズ・バンドに提供したほうがいいとトムは考えていました。1977年に彼らはJ・ガイルズ・バンドのツアーで前座を務めていたのです。

 

 マッドクラッチのヴァージョン


Mudcrutch - Don't Do Me Like That.wmv

 

 しかし、この曲はいけると感じたジミーはとりつかれたようになり、納得できるテイクができるまで、12時間レコーディング続けたあと3時間打ち合わせ、ということを繰り返し、この曲を彼らに100回以上演奏させたそうです。

 

 そして、その執念が実を結び、この曲がヒットしたわけです。

 

 スプリングスティーンの「明日なき暴走」の地獄のようなレコーディングを見事に自分の糧にして、トム・ペティというもう一人のヒーローを世に出すことにジミーは大きく貢献したわけです。

 

 ちなみに、ジミー・アイオヴィンは、現在U2、スティング、マドンナ、レディ・ガガ、マルーン5、ビリー・アイリッシュなど錚々たるアーティストを擁するインタースコープ-ゲフィン-A&Mレコードの社長をつとめる、超VIPになっています。

 

 さて、トムの死後、J・ガイルズ・バンドのボーカルだったピーター・ウルフがこの「危険な噂」について語っています。

 実は当時「危険な噂」のデモが入ったカセットテープがピーターのところに送られてきていたのだそうです。「僕はこの曲は君らにぴったりだと思ってる。君たちならこの曲を素晴らしくしてくれると思う」というトムの直筆のメモまでついていたといいます。

 しかし、そのタイミングではアルバム用の曲は揃っていたので、その次のアルバムならやれると思って、ピーターはトムとジミーに「すぐレコーディングできるかどうかはわからないけど、オレはこの曲すごく好きだ」と電話したそうです。

 

 しかし、しばらくしてトムが自演する「危険な噂」が大ヒットしたのを聞いて、早くやっておけよかったとピーターは悔やんだそうです。

 

 そんな話をピーターがトムに直接したのは、トムの最後のツアーでピーターのバンド”ミッドナイト・トラベラーズ”が前座としてトムと一緒にツアーをまわっていた(主従が逆転したんですね)楽屋だったそうです。

 実はJ・ガイルズ・バンドも「危険な噂」の制作途中だった事実を告げると、

 トムは「それはお礼を言わなくちゃ。君たちが曲を仕上げなかったおかげで、みんなから自分でやれと言われてやったんだ。それで大ヒットになったんだから」と言ったといいます。そして、それがピーターがトムと最後に会話したときの話だったそうです。

 

 

「危険な噂」の収録されたアルバム「破壊」から、もう一つの代表曲「逃亡者」。ジミー・アイオヴィンもお気に入りだったようです。


Tom Petty And The Heartbreakers - Refugee (Official Music Video)

 

 

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