まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ベイビー・カム・バック(Baby Come Back)」プレイヤー(1977)

 おはようございます。

 今日はプレイヤーの「ベイビー・カム・バック」です。


Player - Baby Come Back

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Spending all my nights, all my money going out on the town
Doing anything just to get you off of my mind
But when the morning comes, I'm right back where I started again
Trying to forget you is just a waste of time

Baby come back, any kind of fool could see
There was something in everything about you
Baby come back, you can blame it all on me
I was wrong, and I just can't live without you

All day long, wearing a mask of false bravado
Trying to keep up the smile that hides a tear
But as the sun goes down, I get that empty feeling again
How I wish to God that you were here

Baby come back, any kind of fool could see
There was something in everything about you
Baby come back, you can blame it all on me
I was wrong, and I just can't live without you

Now that I put it all together
Give me the chance to make you see
Have you used up all the love in your heart
Nothing left for me, ain't there nothing left for me

Baby come back, any kind of fool could see
There was something in everything about you
Baby come back, listen, you can blame it all on me
I was wrong, and I just can't live without you

I was wrong, and I just can't live

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一晩中、あり金はたいて 遊び歩いた

君を頭から追い払えることなら何でもしようとして

だけど朝が来れば 僕はまた元の場所に戻ってしまう

君を忘れようなんて 時間の無駄さ

 

ベイビー、戻ってきて どんなヤツにだってわかるだろう

君のすべてに特別な魅力があったんだ

ベイビー、戻ってきて 悪いのは僕さ

僕が間違っていた 君なしじゃ生きていけないんだ

 

日中は 虚勢の仮面をかぶって

涙を隠すために笑顔を懸命に作っている

だけど太陽が沈めば またあの虚しさが戻ってくるんだ

君がここにいて来れたらどんないいいだろう

 

ベイビー、戻ってきて どんなヤツにだってわかるだろう

君のすべてに特別な魅力があったんだ

ベイビー、戻ってきて 悪いのは僕さ

僕が間違っていた 君なしじゃ生きていけないんだ

 

今の僕ならすべてうまくやれるよ

それを君がわかるようなチャンスが欲しい

君の心の中の愛は全部使い尽くしてしまったのかい?

僕には何も残っていない 何も残っていないのかい?

 

ベイビー、戻ってきて どんなヤツにだってわかるだろう

君のすべてに特別な魅力があったんだ

ベイビー、戻ってきて 悪いのは僕さ

僕が間違っていた 君なしじゃ生きていけないんだ

 

僕が悪かった もう生きていけないんだ、、    (拙訳)

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 曲を書いたときに作者二人とも失恋したばかりだったという切実なラヴ・ソング

 

  プレイヤーは1976年にピーター・ベケットとJ.Cクロウリーを中心にLAで結成されたグループです。

 イギリスからLAに来たピーター・ベケットはプレイヤー結成以前に”フレンズ”と”スカイバンド”というグループにいましたが、そこにはアルバム「ノック・ザ・ウォール・ダウン」でAORファンにはおなじみのスティーヴ・キプナー(オリビア・ニュートン・ジョンの「フィジカル」の作者でもあります)も在籍していました。

 

カイバンド。なかなかのジャケットですねw、売れなかったのがわかるような、、、

www.youtube.com

 

 スカイ・バンドが売れずに解散してしまったあと、ソングライターとしての道を模索していた彼はとあるパーティーでJ.Cクロウリーと出会い、一緒に曲を書いて売り込みを

始めました。

 しかし、まったくいい反応を得られないなかで、出来上がったのがこの「ベイビー・カム・バック」でした。

 

 そして、ピータとクロウリーは、プロデューサー・チームのデニス・ランバートとブライアン・ポッターと知り合い曲を聴いてもらう機会を得ます。

 ランバート&ポッターは都会的なR&B感覚が持ち味の人たち。ソングライター/プロデューサーとしてはハミルトン、ジョー・フランク&レイノルズ の「恋のかけひきDon't Pull Your Love)」(1971)やグラスルーツの「恋は二人のハーモニー(Two Devided By Love)」(1971)などをヒットさせています。


Don't Pull Your Love


Two Divided By Love

 

 ピータはこう語っています。

 

「何曲かやったあとで、<ベイビー・カム・バック>を聞かせると、ランバート&ポッターは椅子から転げ落ちそうになって、「ヒットまちがいなしだ!」といった。そしてふたりがそれをRSOレコードのアル・カーシーのところに持って行くと、アルも椅子から転げ落ちそうになって、僕らに契約を申し出た。」

              (「ヨット・ロック」)

 

 その時はまだ”プレイヤー”を組んだばかりでライヴ経験さえなく、契約が決まってから本格的に練習を始めだったそうです。

 プレイヤーは「ベイビー・カム・バック」をリリースするために契約されたバンドだったといいでしょう。

 そして、実際にこの曲は1978年の1月に全米チャートで3週連続1位という大ヒットを記録します。

 

 この時期の全米チャートで面白いデータがあります。

 この曲の前の1位がビー・ジーズの「愛はきらめきの中に」で、この曲のあとの1位がビー・ジーズの「ステイン・アライヴ」、まさに「サタデー・ナイト・フィーバー」が盛り上がっている最中だったんですね。そのあとの1位はビー・ジーズの弟アンディ・ギヴのビー・ジーズのバリー・ギヴが作、プロデュースした「愛の面影」、その次の1位がビー・ジーズの「恋のナイト・フィーバー」、その次の1位が「サタデー・ナイト・フィーバー」のサントラから、ビー・ジーズが曲を書いてプロデュースしたイヴォンヌ・エリマンの「アイ・キャント・ハヴ・ユー」と、いう凄まじいほどのビー・ジーズ旋風だったのです。

 

 プレイヤーはそこにポツンと挟まれているかのように見えますが、実は彼らの契約したRSOレコードはビー・ジーズのレーベルなんです。「ベイビー・カム・バック」のデモを受け取ったRSOのアル・カーシーはビー・ジーズのマネージャーでもあったRSOの社長とビー・ジーズのメンバーにも聴かせて、彼らがとても気に入ったので契約に至っているのです。

 「愛はきらめきの中に」から「アイ・キャント・ハヴ・ユー」までの21週間ずっとRSOレコードの曲が1位を独占していたことになります。そして、その中で唯一ビー・ジーズが制作に関係していない「ベイビー・カム・バック」も、実はビー・ジーズが契約に関係した、彼らのお墨付きの曲だったわけです。

 

 この曲を書いた時のことについてピーターはこう語っています。

 

「僕がアメリカにやって来た時は結婚していたんだ。彼女はLAの暮らしに耐えられなくなって僕たちは離婚してしまって、それが<ベイビー・カム・バック>につながってゆくんだ」

  (Gary James' Interview )

「あの曲を書いたとき、J・C・クロウリーは長年のガールフレンドと別れたばかりで、ぼくもやっぱりそうだった。だからどっちも心に傷を負っていたわけで、そこが多分、人々の琴線に触れたんだと思う。ほかにああいうタイプの曲はなかった。あれな嘘いつわりのない曲で、嘘偽りのない歌詞だった。だからあれだけの人気を博したんだよ」

  (「ヨット・ロック」)

 

 愛を失った心境を歌にしたソングライターは数え切れないほどいるでしょうが、共作者が同時期に同じような大きな心の痛手を負い、そこから曲を作るというのはかなりレアじゃないでしょうか。

 それだからこそ、この曲の説得力も一段と増したのかもしれませんね。

 

ベイビー・カム・バック~ベス

ベイビー・カム・バック~ベス

  • アーティスト:プレイヤー
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 こちらもランバート&ポッター・プロデュースの大ヒット曲。

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