まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「堕ちた天使(Centerfold)」J・ガイルズ・バンド(1981)

 おはようございます。

 今日は1981年の大ヒット、J・ガイルズ・バンド「堕ちた天使」です。


Centerfold

 

  " 彼女が歩いてる? 喋ってる?

    もう完璧だって?

 僕のクラスのエンジェルのおかげで

 僕はいつも落ち着いて座っていられない 

 

 彼女は雪の欠片みたいにピュアで

 誰にも汚すことはできない 

 僕のエンジェルの思い出は僕を傷つけることなんて

 けっしてなかったんだ

 

 それから何年もたってから 僕が男性誌を見ていると

    僕のクラスのエンジェルが 中の折込ページに載っていたんだ

 

 ぞっとするくらい驚いたよ 僕の思い出が売られているんだから

    僕のエンジェルが折込ページにのっていた

 エンジェルがヌードモデルになっていた

 

 ぞっとするくらい驚いたよ 僕の思い出が売りに出されてるんだ

 エンジェルがヌードモデルなっていた

 

  彼女のドレスを思い浮かべていたら

  机の下からメモをこっそり渡された

  僕は恥ずかしくて 彼女と目が合わないうちに

  向こうを向いたんだ

 

    その青い瞳にチラッと見られるだけで

  僕の足はガタガタ震えていたものさ

  彼女が近くを通るだけで 何かに支配されてしまった気分だった

 

  彼女の柔らかくふわふわしたセーターは

  神秘的で触れることもできなかった

  ネグリジェ姿を見るなんて

  僕には刺激的過ぎるんだ

 

 ぞっとするくらい驚いたよ 僕の思い出が売りに出されてるんだ

    僕のエンジェルが折込ページにのっていた

 エンジェルがヌードモデルになっていた

 

 ぞっとするくらい驚いたよ 僕の思い出が売りに出されてるんだ

 エンジェルがヌードモデルになっていた

 

 オーケーわかったよ ここはネバーランドなんかじゃないよな

 この号が本屋から消えたら 服を着た君に会うよ

 

 君の車で そうさ 君の車に乗って二人でドライヴしよう

 モーテルに行って 服を脱ぐのさ プライベートで

 

 僕の一部は切り裂かれ 

 心の中のページは剥ぎ取られてしまった

 ああダメだ 抑えきれない やっぱり雑誌を買わなくちゃ!

 

 ぞっとするくらい驚いたよ 僕の思い出が売りに出されてるんだ

    僕のエンジェルが折込ページにのっていた

 エンジェルがヌードモデルになっていた ”(拙訳)

  

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Does she walk? Does she talk?
Does she come complete?
My homeroom homeroom angel
Always pulled me from my seat

She was pure like snowflakes
No one could ever stain
The memory of my angel
Could never cause me pain

Years go by I'm lookin' through a girly magazine
And there's my homeroom angel on the pages in-between

My blood runs cold
My memory has just been sold
My angel is the centerfold
Angel is the centerfold

My blood runs cold
My memory has just been sold
Angel is the centerfold

Slipped me notes under the desk
While I was thinkin' about her dress
I was shy I turned away
Before she caught my eye

I was shakin' in my shoes
Whenever she flashed those baby-blues
Something had a hold on me
When angel passed close by

Those soft and fuzzy sweaters
Too magical to touch
To see her in that negligee
Is really just too much

My blood runs cold
My memory has just been sold
My angel is the centerfold
Angel is the centerfold

My blood runs cold
My memory has just been sold
Angel is the centerfold

It's okay I understand
This ain't no never-never land
I hope that when this issue's gone
I'll see you when your clothes are on

Take you car, yes we will
We'll take your car and drive it
We'll take it to a motel room
And take 'em off in private

A part of me has just been ripped
The pages from my mind are stripped
Oh no, I can't deny it
Oh yeah, I guess I gotta buy it

My blood runs cold
My memory has just been sold
My angel is the centerfold
Angel is the centerfold

Writer/s: Seth Justman

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 洋楽は邦楽に比べて歌のテーマ、設定のバリエーションのバラエティが豊富なのですが、それにしても、よくもまあこんな設定を思いついたものです。しかも全米6週連続1位、年間チャートでも5位という特大のヒットになりました。

 この当時、僕は高校生で”centerfold”の意味を調べたのですがわからず、ずいぶん後になって知りました。

 センターで<fold>折られている、ということで雑誌の”真ん中の折込ページ”のことでした。男性誌ではヌードのグラビアになっていることが多いので、そういうヌードページに載っている人、載りそうなほどセクシーな人、までも指すようになったようです。

 

 さて、J・ガイルズ・バンドは1960年代にボストンでギタリストのジョン・ガイルズを中心に結成され、はじめのころはJ・ガイルズ・ブルース・バンドと名乗っていた時期もあって、まさに本格的なブルース・バンドでした。

 

 デビュー曲はモータウンのコントゥアーズの「First I Look At the Purse」(スモーキー・ロビンソン作、プロデュース。全米57位)という、いきなり通好みの選曲でした。


The J. Geils Band "First I Look At The Purse"

 

 ヴォーカルのピーター・ウルフのスター性もあって、彼らはライヴで名を上げていきました。”アメリカのローリング・ストーンズ”と呼ばれたり、”アメリカ最高のライブ・バンド”といったコピーも音楽雑誌で見た記憶があります。

 

  ピーターとキーボードのセス・ジャストマンがタッグを組んで曲を書くようになったサード・アルバムの頃からオリジナル曲のクオリティが上がっていき、渋いカバーをワイルドに演奏するブルース・バンドからコマーシャルなスタイルへと徐々に変わっていきました。

 そして、1980年のアルバム「Love Stinks」から、ジャストマンが単独でプロデュースも 行うようになると、その売れ線の傾向に拍車がかかっていきました。

 

 そして1981年の大ヒット・アルバム「フリーズ・フレーム」では、全曲ジャストマンの作品でうちピーターとの共作は4曲、この「堕ちた天使」を含む5曲が彼の単独作でした。

    曲は大ヒットしますが、古くからのファンは大きく変わったスタイルに戸惑ったようです。

 

 この時代を思い出してみると、キャリアの長いバンドが、大きく路線変更をして再ブレイク、ということがありました。

 

 ドゥービー・ブラザーズやシカゴも以前とは別人のようなスタイルで大ヒットさせましたが、ドゥービーはマイケル・マクドナルド、シカゴはデヴィッド・フィスター、J・ガイルズ・バンドはセス、と路線変更の中心人物はキーボーディストなんですね。

 

  そういえば、ジャーニーもそれまでも売れてはいたのですが、キーボードのジョナサン・ケインが加入して全面的に曲作りに加わったアルバム「エスケイプ」で大ブレイクしていました。

 

 もちろん彼らはみな売れる曲を書く才能があったわけですが、キーボード、シンセがサウンドの主役になっていった時期でもあったんだなあとも思います。それまでのロックは、ギターが絶対的な主役でしたが。

 

 さて、バンドの創設者J.ガイルズは2010年ころ、他のメンバーとの対立や体力的な問題もあってバンドを正式に脱退します。バンド名の権利を巡って他のメンバーと裁判沙汰になったようですが、決着し残ったメンバーで引き続き”J・ガイルズ・バンド”と名乗り2015年くらいまで活動していたようです。

 

 バンド結成時に自分の考えていた音楽性から大きく変わることで成功したわけですが、その辺りをどう感じていたのでしょう。

 

 ガイルズは2017年に亡くなってしまいますが、2015年のインタビューで、当初のバンドの活動を振り返ってこう語っています。

 

「もちろん、僕たちが遺した音楽を誇りに思っているよ。僕はシカゴ・スタイルのブルース・バンドとして始めたんだけど、それがブルージーなロック・バンドへと進化していったんだ。他のレコーディング・アーティストが何を言おうと気にしないよ。だってみんなゴールド・シングル(売り上げ50万枚以上)を欲しがっていて、僕らには2曲あるんだから。セスとピーターのオリジナル曲だ。「堕ちた天使」と 「フリーズ・フレーム」。エンジェルという女の子が載っていて、僕あてにサインを書いてくれた「プレイボーイ」誌のセンターフォールド(折込ページ)を持っているんだよ。(まさに”Angel is the Centerfold”)「堕ちた天使」は彼女のお気に入りだったのさ」

                      (「BEST CLASSIC BANDS」)

 

 最後に、彼らのもう一つのヒット曲「フリーズ・フレーム」を。


J. Geils Band - Freeze Frame

 

 

J・ガイルズ・バンドは”アメリカのストーンズ”とも呼ばれていましたね

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