まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「永遠の人に捧げる歌(Three Times a Lady)」コモドアーズ(1978)

 おはようございます。

 今日はバラードです。コモドアーズの「永遠の人に捧げる歌」です。


Three Times A Lady

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Thanks for the times that you've given me
The memories are all in my mind
And now that we've come to the end of our rainbow
There's something i must say out loud

You're once, twice, three times a lady
And I love you
Yes, you're once, twice, three times a lady
And I love you, I love you

When we are together the moments I cherish
With every beat of my heart
To touch you, to hold you
To feel you, to need you
There's nothing to keep us apart

You're once, twice, three times a lady
And I love you, I love you

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君が僕にくれた時間にありがとうと言いたい

思い出は全部この胸にあるよ

そして今僕たちは、二人の夢の旅路の終わりまで来たから

はっきり言わなくちゃいけないことがある

 

君は一度目も、二度目も、三度目も僕の素晴らしい女性

そして愛している

君は一度目も、二度目も、三度目も僕の素晴らしい女性

そして愛している 愛している

 

二人が共に大切な瞬間過ごすとき

鼓動がなるたびに

君に触れ 君を抱きしめ 君を感じ 君を必要とする

二人を引き裂くものなどない

君は一度目も、二度目も、三度目も僕の素晴らしい女性
                         (拙訳)

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”ファンク・パーティ・バンド”の初めての全米NO.1となった”ワルツ曲”

 

「『永遠の人に捧げる歌』を書いたとき、インスピレーションを受けたのは、これは家族ではジョークになってるけど...僕の父なんだ。父はとても温かくてよく人に抱きつく男なんだけど、ある日、彼は立ち上がって母に乾杯をしようとしたんだ、母への気持ちを伝えようとして。それは突然のことで、誕生日でもなかったはず。私がいつも言っているのは、男が何もないとき、特別な機会でもないのに発言するのは、何か後ろめたいことがあるってことだってことだ(笑)。姉と私は父を見て、『父さん、大丈夫?』と言うと、彼は『彼女は素晴らしい女性で、素晴らしい母親で、素晴らしい友人だ(‘She’s a great lady, she’s a great mother, and she’s a great friend)』と言ったんだ。

 これは素晴らしい乾杯の言葉だと思って、私はこれをもとにしてこのワルツを書いたんだ。これはR&Bの曲とは考えられていなかったからね」

 (Billboard

 

 この曲の鍵になる”you're once, twice, three times a lady”という有名な歌詞のもとになったのは”She’s a great lady, she’s a great mother, and she’s a great friend”という彼の父親が母親に向けた言葉だったわけですが、それを彼は、もう少し漠然とした言い回し、いろんな解釈のできる言葉にしたんですね。

 三代に渡って愛している、とか、三倍愛している、とかいろんな解釈がネットで見つかって、英語圏の人でもどうもこの歌詞の意味を正確には把握できないようですが、ともかく大変ロマンティックな言い回しなのは間違いないらしく、あとは、それぞれが自分にあった解釈をするのでいいのでしょう。

 

 さて、この曲を書いたライオネル・リッチーも、彼が当時所属していたコモドアーズもアラバマ州の出身です。アラバマ州はカントリーのメッカで彼も幼少からよく聴いていたらしく、それと、彼の祖母がクラシックピアノの教師だったので、クラシックの影響もあったようです。

 プリンスやジャム&ルイスが育ったミネアポリスは白人の割合が多く、白人の音楽を小さい頃から聴いていたことが、彼らの個性となったと以前このブログで書きましたが、ライオネル・リッチーもカントリーとクラシックというルーツが、見事なまでに彼の個性になっています。

 当時僕は、彼は黒人なのになんでケニー・ロジャースに曲を書いたり、カントリーっぽい曲を歌うんだろうと思ったものですが、彼にしてみればいたってナチュラルなことだったわけですね。

 

 コモドアーズは1968年に結成され、1971年にジャクソン5の前座に抜擢され、そのステージをベリー・ゴーディの子供達が見て父親に推薦したことがきっかけになって、モータウンと契約します。

  デビューは1974年、「マシンガン」がいきなり大ヒットします


Commodores - Machine gun (SoulTrain)

   当初は彼らは”ファンク・パーティ・バンド”でした。ライバルはオハイオ・プレイヤーズ、クール&ザ・ギャングなど。

 当時、ライオネルは家にピアノがなく、大学のキャンパスに行ってこの曲を書いたそうです。コモドアーズ以外のアーティストを想定しながら書くこともあって、この曲はフランク・シナトラが歌うのを思い浮かべたそうです。コモドアーズが歌う曲とは思えなかったのです。

 しかし、彼らのプロデューサーでアレンジャーでもある、ジェイムズ・アンソニー・カーマイケルがコモドアーズでやるとジャッジしたそうです。

 

 ジェイムズ・アンソニー・カーマイケルも彼らと同じアラバマ出身ですが、幼少期からピアノを習いLAの大学で音楽をしっかり学んだ人です。

 ライオネルに音楽理論に疎いことに引け目があった彼にとって、ジェイムズは心強い味方でしたし、半数の作家が楽譜が読めなかったっというモータウンに入ることで、彼は自由に作曲をできるようになったといいます。

 モータウンはポップとR&Bの垣根を取り払うことがアイデンディディだったわけですから、ライオネルのような、カントリーやクラシックの影響の大きいアーティストものびのびやれたのでしょう。

 

 ライオネル・リッチーという人は、大物の割に、日本ではモータウンという文脈で語られることがとても少ない人ですが、彼こそがモータウンという特殊な土壌にいたからこそ、才能を開花できた典型的な一人だったんじゃないかと、僕は考えています。

 

  この曲の翌年にリリースされた、カントリー色の強いヒット「セイル・オン」。

   彼らのファンク・ナンバーとのギャップは大きいですが、メンバー全員アラバマ出身ですから、こういうカントリーっぽいバラードへの理解もしっかりあったのかもしれません。


Commodores - Sail On

 

ナチュラル・ハイ

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コモドアーズのバラード路線の先駆けとなった「イージー

popups.hatenablog.com

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