まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「哀しみの序章(Bluer Than Blue)」マイケル・ジョンソン(1978)

 おはようござます。

 今日はマイケル・ジョンソンの「哀しみの序章」、"Bluer Than Blue"です。

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After you go, I can catch up on my reading
After you go, I'll have a lot more time for sleeping
And when you're gone, looks like things are gonna be a lot easier
Life will be a breeze, you know
I really should be glad

But I'm bluer than blue, sadder than sad
You're the only light this empty room has ever had
Life without you is gonna be
Bluer than blue

After you go, I'll have a lot more room in my closet
After you go, I'll stay out all night long if I feel like it
And when you're gone I can run through the house screaming
And no one will ever hear me
I really should be glad

But I'm bluer than blue, sadder than sad
You're the only light this empty room has ever had
Life without you is gonna be
Bluer than blue

I don't have to miss no TV shows
I can start my whole life over
Change the numbers on my telephone
But the nights will sure be colder

And I'm bluer than blue, sadder than sad
You're the only light this empty room has ever had
Life without you is gonna be
Bluer than blue
Bluer than blue
Bluer than blue

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君が出て行った後は、読みかけの本をまた読めるさ
君が出て行った後は、寝る時間もたくさんとれるさ
そして君が出て行ってしまえば
物事がずっと簡単になるように思える
人生も軽やかになるだろう、そうだろ
僕は本当は喜ぶべきなのさ

 

だけど、僕はブルーよりもブルーさ、悲しみよりも悲しい
この空っぽの部屋のたったひとつの灯は君なんだ
君のいない人生は
ブルーよりもブルーさ

 

君が出て行った後は クローゼットをもっと使える
君が出て行った後は その気になれば一晩中遊びまわるよ
そして君が出て行ってしまえば
家中を叫びながら走り回るさ
それでも誰にも聞こえない
本当は喜ぶべきなのさ

 

だけど、僕はブルーよりもブルーさ、悲しみよりも悲しい
この空っぽの部屋のたったひとつの灯は君なんだ
君のいない人生は
ブルーよりもブルーさ

 

テレビ番組を見逃すこともない
人生をそっくりやり直せるんだ
電話の番号も変えて
だけど、夜はずっと寒くなるだろう

 

そして、僕はブルーよりもブルーさ、悲しみよりも悲しい
この空っぽの部屋のたったひとつの灯は君なんだ
君のいない人生は
ブルーよりもブルーさ
ブルーよりもブルーさ

  (拙訳)

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「ある日、テネシー州ナッシュヴィルの道をドライヴしていて、曲のアイディアが浮かんだ。ウェンディーズのドライヴ・スルーに入り、サンドウィッチが出来上がるまでの間に僕は歌詞を作り上げた。オーダーを受け取り、向かい側のBIG Kデパートの駐車場に車をとめ、サビとブリッジをほぼ完成させた。その後、マイケル・ジョンソンという名のギタリスト兼ヴォーカリストに彼がレコード契約を結べるようにこの曲をレコーディングさせた。彼は契約することに成功し、この”Bluer Than Blue"は彼のファーストシングルで、ポップ/アダルト・コンテンポラリー・ヒットとなった」

(ランディ・グッドラム「つらい別れ〜セルフ・リメイク・コレクション」ライナー・ノーツから)

 

 Bluer Than  Blue。キャッチコピーとしてもすぐれたフレーズですね。日本の中高年層は「藍より青し」なんて言葉を思い出す人もいそうですが、そちらは弟子が師匠をより優れている、という意味でした。

 彼女が出て行ったことのいい部分を精一杯いろいろ並べたあとに、でも、ブルーよりもっとブルーな気分なんだ、と持ってゆくわけで、すごく上手いソングライティングだな、と唸ってしまいます。

 曲は大ヒットし(全米12位)、それまでまったく無名だったマイケル・ジョンソンは一躍有名になり、最後まで彼の代表曲であり続けました。

 

 曲を作ったランディ・グッドラムは、この曲の翌月にリリースされたアン・マレーの「辛い別れ」で全米1位になっています。「辛い別れ」も原題が”You Needed Me”と、簡潔でつかみの強いタイトルになっています。

 

 

  マイケル・ジョンソンは1944年にコロラド州アラモサで生まれデンバーで育ちました。彼が音楽を愛するようになったのは、13歳のときにかかった肺炎の療養をしている時期、同じころに交通事故で負傷していた兄のポールと、時間を埋めるために二人はギターを習い始めたそうです。

 大学時代に国際的なタレント・コンテストで優勝したのを機に中退し、21歳で彼はバルセロナに渡ってクラシック・ギターを学びます。その後アメリカに戻り、ジョン・デンバーもメンバーだった”チャド・ミッチェル・トリオ”に参加してします。

 そして1973年にはソロ・シンガーとしてアルバム『There Is a Breeze』でデビューを果たします。

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    しかし、彼はこの1枚で契約を切られてしまい、その後は自身のレーベルで 1975年に「For All You Mad Musicians」、1977 年に「Ain't Dis Da Life」と2枚のアルバムをリリースしています。商業的には成功しませんでしたが、ジェイムス&リヴィングストン・テイラーなど、良質でハートウォーミングなフォーク・ソングがお好きな方には気に入ってもらえそうなクオリティで、日本でもCD化されたこともあり、彼は初期3作がいいというファンもいらっしゃいます。

 

 そして、3枚目のアルバムを出した彼が出会ったのが、ランディ・グッドラムでした。当時、ふたりともナッシュビルで活動していて、当時マイケルのプロデューサー兼エンジニアのブレント・メイハーとデモを作るセッションに参加したランディからこの曲を提案されたそうです。

 そしてこの曲を含む2曲のデモを作って、レコード会社にプレゼンすると気に入られ、マイケルはこの「哀しみの序章(Bluer Than Blue))」で再デビューし、見事大ヒットになったわけです。

 

 そして、この曲の入った『THE MICHAEL JOHNSON ALBUM(恋人たちのアルバム)』、79年作『DIAROGUE(対話)』、80年作『YOU CAN CALL ME BLUE(哀しみのブルー)』、そして81年作『HOME FREE(ホーム・フリー)』の4作は、ランディ・グッドラムの他に、ビル・ラバウンティ、ロバート・バーン、マイケル・マクドナルドなどが曲に参加してることもあってAORファンから人気の作品になっています。

 

 79年リリース、全米19位と彼の2番目のヒットとなった「This Night Won't Last Forever(邦題:この夜の果てに)」。作者のビル・ラバウンティが先にリリースしましたが、ヒットしたのはマイケルの方でした。

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 1986年にレーベルを移籍してから、彼はカントリーミュージックにシフトし2曲がカントリー・チャートのトップに立っています。

 

「The Moon is Still Over Her Shoulder 」。カントリーといっても、やはり彼はクラシック・ギターを弾くんですね。

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 1990年代以降彼はマイペースで活動し、2017年に心臓疾患で亡くなっています。

 僕が注目したいのは1997年の「Then and Now」自身のヒット曲を再演したものですが、その中に昨日このブログに登場したメリサ・マンチェスターケニー・ロギンスが共作した「二人の誓い(Whenever I Call You 'Friend')」のカバーが入っていて、とてもいいのそれを最後に。デュエットの相手はロバート・プラントとの共演でグラミーを取ったことのあるアリソン・クラウス。作者のメリサはこの曲の決定的なヴァージョンがまだないと語っていたようですが、名曲は名曲だと思います。

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