まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ハートのときめき(Young Hearts Run Free)」 キャンディ・ステイトン(1976)

 おはようございます。

 今日はキャンディ・ステイトンの「ハートのときめき(Young Hearts Run Free)」です。


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What's the sense in sharing this one and only life
Ending up just another lost and lonely wife
You count up the years
And they will be filled with tears

Love only breaks up to start over again
You'll get the babies
But you won't have your man
While he is busy loving every woman that he can, uh-huh

Say I'm gonna leave
A hundred times a day
It's easier said than done
When you just can't break away
(Just can't break away)

Oh, young hearts run free
They'll never be hung up
Hung up like my man and me
My man and me

Ooh, young hearts
To yourself be true
Don't be no fool when love really don't love you
Don't love you

It's high time now, just one crack at life
Who wants to live in trouble and strife
My mind must be free to learn all I can about me, mmm

I'm gonna love me for the rest of my days
Encourage the babies every time they say
Self preservation is what's really going on today

Say I'm gonna turn loose
A thousand times a day
How can I turn loose
When I just can't break away
(When I just can't break away)

Oh, young hearts run free
They'll never be hung up
Hung up like my man and me
You and me

Ooh, young hearts
To yourself be true
Don't be no fool when love really don't love you
Don't love you

Young hearts run free
They'll never be hung up
Hung up like my man and me
My man and me

Oh, young hearts
To yourself be true
Don't be no fool when love really don't love you
It don't love you

Ooh, young hearts run free
They'll never be hung up
Hung up like my man and me
My man and me

Oh, young hearts
To yourself be true
Don't be no fool when love really don't love you
Don't love you

Ooh, young hearts run free
They'll never be hung up
Hung up like my man and me

 

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このたった一度の人生を

分かち合うことに何の意味があるの?

ただの途方にくれた孤独な妻で終わってしまって

年月を数え上げてみると その月日は涙でいっぱいでしょう

 

愛はもう一度やり直すためだけに壊れるもの

赤ちゃんは授かるでしょう

だけどあなたには自分の男はいない

彼はできる限りいろんな女を愛そうと忙しいから

出てゆくわって言うの

1日に百回も  言うは易し行うは難し、よ

あなたが逃げることができないときは


若いハートは自由に駈ける

決して阻止はできない

阻止できないの 彼と私が阻止されたようには

彼と私みたいには

若いハートは 自分自身に正直に

小賢しくなっちゃだめ 恋人があなたを本当に愛していないなら

愛していないなら

今がそのとき、人生のチャンスよ

問題と争いの中で生きたい人なんている?

私の心は、自分自身のことなら

自由に学べなくちゃいけないのよ

これからの日々は自分を愛していくわ

人々が、自分のことは自分で守ろう、と言うたびに

子供たちを励ますの


解放すると言うの

1日に千回も 

どうすれば解放できるの

逃げ出せないときには

若いハートは自由に駈ける

決して阻止はできない

阻止できないの 彼と私が阻止されたようには

彼と私みたいには

 

若いハートは 自分自身に正直に

小賢しくなっちゃだめ 恋人があなたを本当に愛していないなら

愛していないなら               (拙訳)

 

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 ”悪い男と縁を切る”ことを勧める、軽快で明るいディスコ・チューン”

 

  邦題「ハートのときめき」で原題はYoung Hearts Run Free(若い心は自由に駈ける)、曲調もこんな軽快ですが、歌詞を訳してみたら思いがけずシリアスでした、、。

洋楽ってけっこう、こういうパターンありますね。

 

「その後、私はジミー・ジェイムスという男と付き合うことになったの。彼はヒモで、別れるのがすごく難しかった。彼はすごく脅迫したり乱暴したりする人間でした。そして彼と別れました。実は彼と別れる直前に、デビッド・クロフォード(ステイトンのプロデューサー)と私は長く話をしていたの。彼がメモを取っているのに私が気づくと、「君に曲を書いてあげるよ。永遠に残るような曲を書いてあげるよ」彼は正確にそう言いました。そして、実際に彼はそうしたわ。彼は「Young Hearts Run Free」を書いて、それは約40年変わらずに残っているの」

 (OXFORD AMERICAN  December 2 2010)

 

 

 キャンディ・ステイトンはアラバマ州生まれのソウル・シンガー。幼いころからゴスペルを歌い始め、十代からさまざまなアーティストのバック・コーラスをつとめていました。

 そして、彼女がバックコーラスをしたアーティストの一人、クラレンス・カーターから彼のプロデューサーであるリック・ホールを紹介されます。

 リックはアラバマ州マッスル・ショールズに「フェイム・スタジオ」を作り、地元の凄腕ミュージシャンを集め、アレサ・フランクリンなどR&Bの名作を次々と生み出した人です。

   彼女はリックの作ったレーベル”フェイム”からレコードをリリースし、デビューからR&Bチャートを賑わせます。

 この時代の代表曲は1970年の「STAND BY YOUR MAN」。これは1968年にタミー・ワイネットの歌ったカントリー・ソングでしたが、リックのアイディアでカバーし全米24位のヒットになりました。

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 彼女が生まれ育った土地は、カントリーとブルースのラジオ局がひとつずつしかなく、カントリーもよく聴いていたのでカバーすることに抵抗はなかったと語っています。

 R&Bの名作を数々生み出した”フェイム”の歌姫的存在であった彼女ですが、レーベルが閉鎖になり、1974年にはワーナーに移籍し制作だけフェイムで行いましたが、しかし時代はディスコに一気に流れていき、彼女もそれに歩調を合わせることになります。

 

 1976年に彼女はLAに向かい、プロデューサーのデヴィッド・クロフォードのもとで制作することになり、彼との会話から生まれたのがこの「ハートのときめき」だったわけです。ちなみに、キャンディによると、デヴィッドはなかなか個性的なプロデューサーだったようで、スタジオに入る前に自分をよりスピリチュアルな領域に入れるように40日間の断食を行なったのだそうです。

 

   それから、アレンジャーのシルヴェスター・リバースによると、この曲の演奏陣はレイ・パーカー・ジュニア、スティービー・ワンダーのバンドのオーリー・ブラウンとスコット・エドワーズ、そしてスモーキー・ロビンソンと仕事をしていたレジナルド”ソニー”バーク、それにモータウンファンク・ブラザーズのオリジナル・メンバーも2人いて、バック・シンガーとしてデニース・ウィリアムスもと参加していたといいますから、かなり豪華だったんですね。

 

 この曲は全米チャートでは20位、全英では2位まであがっています。

 

 英語圏では、”悪い男との縁を切る歌”としてちゃんと認知されているようで、あるとき、彼女の元に若い女の子がやってきてこう言ったそうです。

「キャンディ・ステイトン!あなたをハグしなきゃ。毎日学校であの曲を聴いて、私の邪魔する男子を遠ざけておいたの。学校を卒業して、そういう間違いもおかさなかったわ。あなたは私の未来を救ったのよ」

   (THE GURDIAN  30 Jun 2015)

 

彼女もこの歌がヒットする頃には、その男と別れたそうですが、2年後に出したシングル「Victim」と言う曲ではこんな歌詞を歌っています。何があったんでしょう?

”I became a victim of the very song I sing
I told you young hearts run free
When I didn't listen to myself ”

(私は自分が歌った曲の犠牲になったの 

 あなたには”若い心は自由に駈ける”って言ったけど

私は自分自身に耳を傾けなかった)

 

1999年に彼女はこの曲を再レコーディングして全英29位になっています。

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 キャンディ・ステイトンの恩人クラレンス・カーターの代表曲。この曲がヒットした同じ年に二人は結婚しましたが、3年しか続きませんでした。

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