おはようございます。
今日はクラレンス・カーター。盲目のR&Bシンガー/ギタリストです。
Clarence Carter - Patches (High Quality)
語るように歌う展開からメロディアスなサビにつながってゆくキャッチーな曲ですが
"僕はアラバマで生まれ育った 森のずっと奥にある農場でね。
ボロボロの身なりをしてたから
みんな僕を”パッチズ(つぎはぎ)”って呼んでいたんだ。
パパもそのことで僕をからかったけど
心の奥底ではパパも傷ついていたんだ
だって精一杯働いていたんだから
パパは立派な男だった いつもシャベルを持っていた
学校も出てないけど 景気の悪い時だって
作物のわずかな売り上げで ちゃんとやりくりしてみせた
でも人生は彼を地面に蹴倒した、なんとか立ち上がろうとすると
また踏みつけたんだ
ある日死の床にいるパパに呼ばれて行くと
僕の肩に手を置いて 涙を流しながら言ったんだ
”パッチズ(つぎはぎ)おまえが頼りだ、息子よ
家族をなんとか守ってくれ
あとは全部お前にかかっているんだ”
歌はその後も少年”パッチズ”の歩みを描いていきます。まさに”ストーリー・テリング”の極みとも呼びたくなる歌です。
この曲は全米4位まで上がる大ヒットとなり、グラミー賞の最優秀R&Bソングも受賞しました。
アラバマ出身の盲目のシンガーであるクラレンスが歌うことで、ほとんどの人はこの歌は彼の実話だと思ったそうです。
しかし、この曲はカバーでした。オリジナルは”チェアメン・オブ・ザ・ボード”といって、モータウンの大ヒット・ソングライター・チーム”ホランド・ドジャー・ホランド”のプロデュースしたグループです。”パッチズ”はシングルのB面だったそうです。
Chairman Of The Board - Patches (original,1970)
曲を書いたのはグループのメンバーのジェネラル・ジョンソンとソングライターのロン・ダンバー。ロン・ダンバーはフリーダ・ペインの「バンド・オブ・ゴールド」も書いている人です。この曲が少しポップなのも理解できます。
この曲をクラレンスに歌わせようと思ったのが、彼のプロデューサーであり、アラバマ州マッスル・ショールズでアレサ・フランクリンなど伝説のレコーディングを行ってきたリック・ホールです。
リックの父がこの歌のように農場で息子のために必死に働いてきた人でした。リックは自分の音楽の稼ぎで父親が欲しがっていたトラクターをプレゼントしたそうですが、
ある日トラクターが転倒してしまい、彼の父は下敷きになって亡くなってしまったそうです。喪失感に苛まされていた彼は、ある時この歌を耳にして自分と重ね、クラレンスに電話して歌ってほしいとリクエストしたそうです。
クラレンスは、この曲は黒人を卑下しているんじゃないかと抵抗したそうですが、結局押し切られたそうです。
そして、クラレンスは自分流に考えてリアルでナチュラルな、ある人には少しハードに聴こえるかもしれない歌い方にしたそうです。そして、そこにリックがストリングスを配したアレンジにしたことで、この曲の説得力は劇的にアップすることになりました。