まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「ウォータールー・サンセット(Waterloo Sunset)」キンクス(1967)

 おはようございます。

 今日はキンクスの「ウォータールー・サンセット」です。

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Dirty old river, must you keep rolling
Flowing into the night?
People so busy, make me feel dizzy
Taxi light shines so bright

But I don't need no friends
As long as I gaze on
Waterloo sunset
I am in paradise

Every day I look at the world from my window
But chilly, chilly is the evening time
Waterloo sunset's fine (Waterloo sunset's fine)

Terry meets Julie
Waterloo station
Every Friday night
But I am so lazy, don't want to wander
I stay at home at night

But I don't feel afraid
As long as I gaze on
Waterloo sunset
I am in paradise

Every day I look at the world from my window
But chilly, chilly is the evening time
Waterloo sunset's fine (Waterloo sunset's fine)

Millions of people swarming like flies 'round
Waterloo underground
But Terry and Julie cross over the river
Where they feel safe and sound
And they don't need no friends
As long as they gaze on
Waterloo Sunset
They are in paradise

Waterloo sunset's fine (Waterloo sunset's fine)
Waterloo sunset's fine

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薄汚れた懐かしき川よ

おまえは絶えず流れこまなきゃいけないのかい?

夜の中へと

人々がせわしなくて 僕はクラクラしてしまう

タクシーのライトがやけに眩しい

 

だけど、僕には友だちはいらない

ウォータールーの夕陽をじっと見ていられる限り

僕は楽園にいるようなもんさ

 

毎日僕は窓から世界を見つめている

だけど、冷んやりと、肌寒い夕暮れ時には

ウォータールーの夕陽が美しい

 

テリーはジュリーと

毎週金曜の夜になると

ウォータールー駅で会う

だけど僕はひどく怠け者だから

出歩きたくない

夜も家にいるのさ

だけど僕は怖くなんかならない

ウォータールーの夕陽をじっとみていられる限り

楽園にいるようなもんさ

毎日僕は窓から世界を見つめている

だけど、冷んやりと、肌寒い夕暮れ時には

ウォータールーの夕陽が美しい


何百万人もの人がハエのように群がっている

ウォータールーの地下鉄の駅

だけどテリーとジュリーは川を越えて

安心できる場所へ行く

 

だけど、彼らには友だちはいらない

ウォータールーの夕陽をじっと見ていられる限り

彼らは楽園にいるようなもんさ


ウォータールーの夕陽が美しい

ウォータールーの夕陽が美しい      (拙訳)

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 2010年にローリング・ストーン誌が選ぶ史上最高の500曲で42位にランクされた他、イギリスの”BBCラジオ4”が選んだ「Best Songs About London」で1位になるなど、ロンドンの”ご当地ソング(?)"の代表としてゆるぎない地位を確立している曲です。

 

 舞台になっているウォータールー駅はロンドン最大規模の鉄道駅、”Dirty old river”とはテムズ川を指しています。

 肌寒く、でも夕陽がとても美しい時間帯に、家の窓から外を見ている主人公が、テムス川の橋を越えてゆく恋人たちに思いを馳せるという、聴く人の胸にさりげなく入り込んでくるような詩情のある楽曲です。

 

「『ウォータールー・サンセット』は夢の中で僕のところにやってきたんだ」

「めざめたら、そこにあった」

                 (CLASSIC ROCK  April 23, 2014)

 この曲を作ったキンクスのレイ・デイヴィスはこう語っています。

 

「もともと僕は『リバプール・サンセット』にしたかったんだ。リバプールもマージービートも大好きだったから。だけど、ものを書く人間に対してよく言うだろーお前の知っていることを書けーと。僕はリバプールよりロンドンをよく知っていた。だから変えたんだ」 

         (CLASSIC ROCK  April 23, 2014)

 この曲の発売の3ヶ月前にビートルズが「ペニー・レイン/ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」というリバプールを舞台にした曲をリリースしたから、と言う説もあるようです。

 また、後年のインタビューでは『リバプール・サンセット』という話自体が作り話だったとレイが語ったという記述も見つかっています。どういうことなんだか、、(苦笑)。

 

「ウォータールーは僕の人生で極めて大切な場所なんだ。何度かウォータールの夕陽も見た。子供の頃大変な病気になったとき、そこにあるセント・トーマス病院に入院していて、テムズ川を眺めていたよ。その後、美術学校に通っている時にそこを通ったものさ。それから、僕のガールフレンド、最初の妻になった人だけど、彼女と会ったのがウォータールーのテムズ河岸通りだったんだ」

                  (CLASSIC ROCK  April 23, 2014)

 

 また、この曲に出てくる”テリーとジュリー”にも諸説あるようです。

「あの曲を映画みたいに見るとしたら、『テリー』はテレンス・スタンプで『ジュリー』はジュリー・クリスティになるだろうな』

           (「ザ・キンクス ひねくれ者たちの肖像」)

 テレンス・スタンプジュリー・クリスティは前の年(1967)に公開された映画『遥か群衆を離れて(Far from the Madding Crowd)』で主役を演じ、当時ロンドンで旬な二人でした。

 

 しかし、後年のインタビューでは"少年時代の思い出を自由に連想しているうちに、2人の名前が不意に出てきた"(CLASSIC ROCK  April 23, 2014)とあり、実在の俳優との関連性は否定しています。

 

 昔のインタビューの発言を否定することはミュージシャンにはよくあることなので、レイ・デイヴィスを気まぐれだと非難しようとは思いませんが、これは僕の想像ですが、この曲がロンドンを愛する人たちのアンセムのようなものになってゆくにつれ、曲にまつわる本質的なことではないエピソードは消していって、聴き手のものにすべきだという気持ちがそこにあるように思います。

 

 レイ・デイヴィスにとって思い出深い大切な場所を歌った歌なのだ、というエピソードだけで十分だと。

 

 

 最後は2010年に発売されたレイ・デイヴィスがさまざまなアーティストと共演しセルフ・カバーしたアルバム「SEE MY FRIENDS」に収録されていたジャクソン・ブラウンとレイによるヴァージョンを。

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