おはようございます。
今日はビーチ・ボーイズの「神のみぞ知る」を。
I may not always love you
But long as there are stars above you
You never need to doubt it
I'll make you so sure about it
God only knows what I'd be without you
If you should ever leave me
Though life would still go on, believe me
The world could show nothing to me
So what good would living do me
God only knows what I'd be without you
God only knows what I'd be without you
If you should ever leave me
Though life would still go on, believe me
The world could show nothing to me
So what good would living do me
God only knows what I'd be without you
God only knows what I'd be without you
God only knows what I'd be without you
God only knows what I'd be without you
God only knows what I'd be without you (God only knows)
God only knows what I'd be without you (what I'd be without you)
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どんな時も君を愛するとは言えないかもしれない
だけど、君の上に星がある限り
疑う必要はないんだ
それをしっかり確信させてあげるよ
神さましか知らないんだ
君がいないと僕がどうなってしまうかは
もし君が僕のもとを去って
それでも人生が続いたとしても、信じてほしい
この世界に僕が見たいものなんて何もない
そんな人生のどこがいいんだろう
神様しか知らないんだ
君がいないと僕がどうなってしまうかは
もし君が僕のもとを去って
それでも人生が続いたとしても、信じてほしい
この世界に僕が見たいものなんて何もない
そんな人生のどこがいいんだろう
神様しか知らないんだ
君がいないと僕がどうなってしまうかは
神様しか知らないんだ
君がいないと僕がどうなってしまうかは (拙訳)
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ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンの音楽的才能と、純粋すぎるほどの感性が奇跡的なほど見事にとけあった曲だと思いますが、歌詞も素晴らしく、今回はこの歌詞を書いたトニー・アッシャーという人物を中心に書こうと思います。
トニー・アッシャーは1939年にロンドンで生まれ、生後6ヵ月でロサンゼルスに移りました。12歳頃からピアノを習い始めるとすぐに曲を作り始めた。大学在学中(UCLAでジャーナリズムを専攻)は、ベーシストの友人と街のクラブで演奏し、後にプロのソングライターになる人たちと一緒に曲を書いていたそうです。
大学卒業後彼は、広告代理店のカーソン・ロバーツ社に就職します。トニーと一緒に働いていた人の中には、モンティ・パイソンのメンバーとしても知られる映画監督テリー・ギリアムもいたそうです。
トニーはアマチュアのミュージシャン、ソングライターで、キャッチ・コピーなどを考えるプロの言葉の使い手だったわけです。
コピーライター出身の作詞家は日本でも阿久悠や売野雅勇など少なくはないですよね。
そして彼らは共通の知人を介して直接会う機会があり、そこでトニーはブライアンの前で自作の曲のアイディアの断片をいくつか聴かせたことがあったそうです。
その後、直接ブライアンから彼に一緒に曲を書けないかと電話があり、彼は驚いたそうですが喜んで引き受け、会社はしばらく休みをとり、ブライアンの家で一緒に曲を書くことになります。
(以下、引用は "ALBUM LINER NOTES.COM Tony Asher Interview”より)
「はっきりとはおぼえていませんが、二人でビートルズの「ラバーソウル」の話をしたことはおぼえています。二人ともそれが信じられないほど素晴らしく、影響力の大きい作品だと思っていました。それだけじゃなく、その当時の他のどんな音楽とも、音楽的に全く異なるものでした。ブライアンはそれによって音楽業界が次の段階に入ったと感じ、自分もそこに行きたいと思ったんじゃないでしょうか」
「ブライアンがアルバム(註:ペットサウンズ)の包括的なコンセプトのようなものを持っていたかどうかわかりません。持っていたのかもしれないとも思いますが。どのようなテーマを取り上げるかという意味ではありません。私たちは心から自然にたくさんの曲を生み出したので、そういうテーマは存在しなかったと思います。私が知っている限り、事前に計画されたコンセプトはなかったと言えます」
「曲作りを進めていく中で、アイデアを交換していった "というのが本当のところだと思います。メロディができたから歌詞を書いて、ではありません。もっと対話的なプロセスだったのです」
その対話の中で、ブライアンはトニーにメロディーが上に行くのと下に行くのとどっちがいい?とか、2種類メロディーを弾いてどっちが好みか、というような確認もしていたそうです。
単に作詞家と作曲家という”割り切った”作業ではなかったんですね。
作業を保留にしたり、家に帰ってからブラッシュ・アップしたりすることもあったようですが、この「神のみぞ知る」だけは一回のセッションで出来上がったそうです。
「この曲にかけた時間は、曲の中で「神」という言葉を使うことのメリットを議論することに費やしました。でも、この曲を作るのに時間をかけたわけではありません。曲はすぐにできあがりました。ブライアンは、この曲の演奏パートの制作に多くの時間を費やしました。でも、歌詞のパートは、全体として自然にできあがったものでした」
”神のみぞ知る(God Only Knows)”というタイトルは、トニーが考えたものでした。
当時、”God”という言葉をポップ・ソングに入れることは、冒涜であるとして避けられていました。ブライアン本人は”タイトルのせいでラジオで流すのを禁止されるんじゃないかって怖かったけど、そうはならなかったよ"と語っています。
しかし、レコード会社も”神”という言葉が入っているせいでラジオでオンエアされないんじゃないかという危惧したため、シングルのB面となりリアルタイムではヒットしませんでした。
”神”という言葉を使う以外にもトニーは、歌詞として”掟破り”をしています。
「まず、歌詞の冒頭に「どんなときも君を愛していえないかもしれない」とあって、これはラブソングの始まりとしてはとても珍しいものです。私はそこががすごく気に入っています。私はそのために戦いもしました。そのためにたくさん戦ったわけではあまりありませんでしたが、私はそのために全力で戦いました。そして、戦っている間、私は『神様、私がこれについて私の方が正しいことを願っています』と自分自身に言っていたでしょう。それはラブソングの始まり方としてとても面白いと思ったからで、それは歌詞の二番で報われていると感じていて、そこでは基本的に、太陽が燃え尽きるまで君を愛するというようなことを言っていて、永遠ではないんです。変わらないものではではないんです。いつか太陽が燃え尽きる日が来て、もう君を愛せなくなるんだ』と。それは「永遠に愛し続ける」ということを皮肉るようなやり方でした。私はそれが好きでした。でも、それを聞いて『え?どういうつもりなんだ』と言う人がいることもわかっていました」
永遠に愛する、いつも愛する、のがラブ・ソングの常識なんですが、”そうとは限らない”で始めているというのは、確かに斬新です。
しかし、そこがトリッキーに聴こえないんですよね。
これは僕の個人的な印象なんですが、この皮肉な歌詞が、ブライアンの純粋で美しいメロディとサウンドにつつまれると、皮肉じゃなく、純粋すぎるためにあまりに正直な気持ちを言ってしまっている、いつも、愛したいけれど絶対なんてものはなから、、そんなニュアンスを感じてしまいます。
これはブライアンとトニーが”対話方式”で作ったからこそ生まれた歌詞だったように思います。ブライアンのメロディだけを渡されて、別のところでトニーが歌詞を書いたらこうはならなかったんじゃないかと。
二人で対話しながら曲を作ったおかげで、基本的にトニーはブライアンの感性や世界観に強く影響された歌詞を書き、要所でコピーライターである彼らしい、思い切ったひねりを使っている、というちょうどいいバランスになっているんだと僕には思えます。
これほどたくさんのアーティストから絶賛される曲もなかなかないですが、それを象徴するのが、2014年にイギリスの”BBCミュージック”の発足を記念して作られたこのカバー。ブライアン本人も登場します。
それから、先日「素晴らしき恋人たち」をとりあげたジャック・ジョーンズが1977年に発売したアルバム「フル・ライフ」に収録されているものは、オリジナルの「神のみぞ知る」のバックコーラスをつとまたブルース・ジョンストンのアレンジで、山下達郎の「JOY」に入っているヴァージョンの参考になったものだと言われています。
↓この動画の一番最後に、途中で切れますが聴くことができます。
*おかげさまで今日で丸2年になりました。いつもこのブログを読んでくださっているみなさん、本当にありがとうございます!!
オリジナルのモノラル・ミックスと1997年のステレオ・ミックスを一枚に収録