まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ストップ・ユア・ソビン(Stop Your Sobbing)」プリテンダーズ(1979)

 おはようございます。

 今日はプリテンダーズの「ストップ・ユア・ソビン」です。

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It is time for you to stop all of your sobbing
Yes, it's time for you to stop all of your sobbing, oh, oh, oh
There's one thing you gotta do
To make me still want you
Gotta stop sobbing now (Gotta stop sobbing now)
Yeah, yeah, stop it, stop it, stop it, stop it

It is time for you to laugh instead of crying
Yes, it's time for you to laugh, so keep on trying, oh, oh, oh
There's one thing you gotta do
To make me still want you
Gotta stop sobbing now (Gotta stop sobbing now)
Yeah, yeah, stop it, stop it, stop it, stop it

Each little tear that falls from your eyes
Makes, makes me want
To take you in my arms and tell you
To stop all your sobbing

There's one thing you gotta do
To make me still want you
And there's one thing you gotta know
To make me want you so
Gotta stop sobbing now (Gotta stop sobbing now)
Yeah, yeah, stop it, stop it, stop it, stop it
Gotta stop sobbing now (Gotta stop sobbing now)
Stop, stop, stop, stop
Gotta stop sobbing now (Gotta stop sobbing now)
Stop, stop, stop, stop
Gotta stop sobbing now (Gotta stop sobbing now)
Stop, stop, stop sobbing, sobbing, sobbing
Stop it, stop it, stop sobbing, stop sobbing
Stop, stop, stop, stop
Gotta stop sobbing (Gotta stop sobbing)
Stop, stop, stop, stop
Gotta stop sobbing now (Gotta stop sobbing now)
Stop, stop, stop, stop
Gotta stop sobbing now (Gotta stop sobbing now)

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さあ、メソメソするのをやめる時が来たわ
そう、もう泣きじゃくるのはやめるのよ
あなたがやるべきことはただひとつ
私をまだあなたを好きでいさせること
もう、泣くのはやめなきゃ
そう、やめて、やめて、やめて

 

泣くかわりに笑う時なの
そう、 笑うってもいいのよ、 だからやり続けて
あなたがやるべきことはただひとつ
私をまだあなたを好きでいさせること
もう、泣くのはやめなきゃ
そう、やめるの、やめるの、やめるの

 

君の瞳からこぼれる小さな涙のひとつひとつが
私をこう思わせるの
この腕で抱きしめたいと
泣くのはもうやめてと言いたくなるの

 

あなたがやるべきことがひとつある
私をまだあなたを好きでいさせること
そして、あなたが知るべきことがひとつある
私があなたが好きでいさせるために
たった今泣くのをやめて
そう、そう、やめて、やめて、やめてく、やめて
いま、泣くのをやめて
やめて、やめて、やめて、、、

   (拙訳)

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 プリテンダーズはクリッシー・ハインドを中心に結成されたバンド。彼女はアメリカ・オハイオ出身ですがイギリスが大好きで、自分のロックンロール・バンドを組むという夢を持って22歳のときにロンドンに渡ったというプロフィールの持ち主です。

 

    この「ストップ・ユア・ソビン」はプリテンダーズのデビュー曲で全英34位、アメリカでは1年後にリリースされ65位になっています。

 オリジナルはキンクス。1964年の「The Kinks」に収録されていました。あの「ユー・リアリー・ガット・ミー」が入ってるアルバムですね。

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 この曲を書き、プリテンダーズがカバーした翌年にクリッシーと恋仲になったキンクスのレイ・デイヴィスは2009年のインタビューで、キンクスをカバーしたもので何か好きかと訊かれこう答えています。

「プリテンダーズの「ストップ・ユア・ソビン」が本当に好きなんだ。好きな理由は、彼らが僕らの有名なヒット曲を選ばなかったこと、そして2つ目の理由は、演奏に彼らなりの解釈を加えているということなんだ。素晴らしいよ」

 (MASS LIVE  Nov. 29, 2009)

 

 このサウンドをプロデュースしているのがニック・ロウ

 渡英して以来、自分のバンドを作ろうとしても全然うまくいかなかった彼女ですが(1976年頃には短期間ですがクラッシュ結成以前のミック・ジョーンズと曲を作ったこともあるそうです)、音楽業界内の知り合いは増えていったようで、その一人がニックでした。

 彼女はようやくメンバーを紹介してもらってバンドを組むことになり、デモを録音しましたが、その時ギターを弾いていたジェイムス・ハニーマン・スコットはその後、地元に戻ってしまいました。

 ジェイムスをぜひバンドに入れたいと思った彼女は、デモ録音の時に彼がニック・ロウの大ファンだと話していたことを思い出し、彼をバンドに戻すためにニック・ロウにプロデュースをお願いしたのだそうです。

 

 そしてニック・ロウにデモを送って、後で電話をしたそうです。

「そしたら『やあ、KH(ニックなりの愛着を込めてのクリッシーの呼び方)、このサンディ・ショウの曲、ぜひやりたいよ』ですって。<ストップ・ユア・ソビン>のことをよ。他の曲はあまり気に入ってなかったかもしれないわ。彼は怒りをぶつけた曲は好きじゃなかった。私はその頃、そういうパンクっぽいのに夢中だったんだけどね」

       (「恋するふたり ニック・ロウの人生と音楽」)

 そして、ニックのプロデュースでこの曲をレコーディングしましたが、スタジオにはエルヴィス・コステロもいて、彼の提案でニックがバック・ボーカルを加えています。

 

  この「ストップ・ユア・ソビン」が発売された半年後にニック・ロウは、僕の生涯のフェイヴァリット・ソング「恋するふたり(Cruel To Be Kind)」をリリースしています。この2曲のサウンド、すごく共通するものがあると僕は思っています。

 

 この曲がスマッシュヒットしたことを受け、彼女たちはクリス・トーマスのプロデュースでアルバムを制作します。

 そこから「愛しのキッズ(Kids)」「恋のブラス・イン・ポケット」が立て続けにヒットし、デビュー・アルバム「愛しのキッズ(The Pretenders)」は全英1位、全米9位と大ヒットになりました。

 

 「愛しのキッズ」。アルバムの邦題になったくらいですから、日本ではラジオで主にオンエアされたのはこの曲ですが、イギリスでは33位、アメリカではチャートインしていません。

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「恋のブラス・イン・ポケット」。アルバムからの最大のヒット。全英1位、全米14位。Brass In Pocketとは”ポケットの小銭”と言う意味です

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 「「プリテンダーズを作り上げたもののすごく大きな部分はニックなしでは存在し得なかった」とクリッシー・ハインドは言う。「バンドを結成していなかった、という意味じゃなく。もちろんそうだったかもしれないけど、ニックとの出会いそのものがこのバンドにとって、多くの意味で触媒だったということ。すべての道はニックに戻っていくのよ」

(「恋するふたり ニック・ロウの人生と音楽」)

 

 最後に2021年にリリースされた40周年デラックスエディションに収録されていたデビュー前のデモ音源。ロネッツの「Do I Love You」のカバー。見事なウォール・オブ・サウンドで、セックスピストルズのギター、スティーヴ・ジョーンズとドラムスのポール・クックとの共演。クリッシー・ハインドのヴォーカルは、ロニー・スペクターと同じ匂いがするのだと感心しました。不良っぽいけど、ピュアで一途で、ほのかな母性もあって。

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