まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「アイ・ニュー・ザ・ブライド(I Knew the Bride (When She Used to Rock 'n' Roll)」ニック・ロウ(1985)

 おはようございます。

 6月も後半に入りましたが、ジューン・ブライドにちなんだ曲をまだ選んでいませんでした。ということで、今日はこちらを。

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I knew the bride when she used to rock 'n' roll
I knew the bride when she used to rock 'n' roll

Well, the bride looked a picture in the gown that her mama wore
When she was married herself nearly 27 years before
They had to change the style a little, but it looked just fine
Stayed up all night, but they got it finished just in time

Now, on the arm of her daddy, she's walkin' down the aisle
I see her catch my eye and give me a secret smile
Maybe it's too old fashioned, but we once were close friends
Oh, but the way that she looks today, she never could've then

Well, I can see her now, in her tight blue jeans
Pumpin' all her money in the record machine
Spinnin' like a top, you should have seen her go
I knew the bride when she used to rock 'n' roll
I knew the bride when she used to rock 'n' roll

Well, her proud daddy only wanna give his little girl the best
And so he put down a grand on a cosy little lover's nest
You could've called her reception an unqualified success
At a flash hotel for a hundred and fifty guests

Well, take a look at the bridegroom, smilin', pleased as pie
Shakin' hands all around with a glassy look in his eye
He got a real good job, and his shirt and tie is nice
But I remember a time when she never would've looked at him twice

 

Well, I can see her now, drinkin' with the boys
Breakin' their hearts like they were toys
She used to do the pony, used to do the stroll
I knew the bride when she used to rock 'n' roll
I knew the bride when she used to rock 'n' roll
I knew the bride when she used to rock 'n' roll
I knew the bride when she used to rock 'n' roll

Well, I can see her now, with her Walkman on
Jumpin' up and down to her favorite song
I still remember when she used to want to make a lot of noise
Hoppin' and a boppin' with the street corner boys
She used to want to party, used to want to go
I knew the bride when she used to rock 'n' roll
I knew the bride when she used to rock 'n' roll
I knew the bride when she used to rock 'n' roll
I knew the bride when she used to rock 'n' roll
I knew the bride when she used to do the pony
I knew the bride when she used to rock 'n' roll
I knew the bride when she used to wanna party
I knew the bride when she used to rock 'n' roll

 

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花嫁がロックンロールをやっていた頃をオレは知ってるよ

花嫁がロックンロールをやっていた頃をオレは知ってるよ

 

ママのウェディング・ドレスを着た花嫁はキレイだね

それはほぼ27年前に結婚したときのものなんだ

ちょっと形を変えなきゃいけなかったけど、すごくいい感じ

徹夜して、ギリギリ間に合わせたのさ

 

いま彼女はパパと腕を組んでヴァージン・ロードを歩いてる

彼女は僕と目があうと、こっそり微笑んだ

すごく古いスタイルの時代に、僕らはすごく仲が良かったんだ

ああ、だけど、今日の彼女の外見は、あの頃じゃありえないものさ

 

今も彼女のタイトなブルージーンズ姿が目に浮かぶ

ジュークボックスにお金を全部使って

駒のようにクルクル回りながら彼女が行くのを 君も見ておくべきだったな

花嫁がロックンロールをやっていた頃をオレは知ってるよ

 

彼女の自慢のパパは可愛い娘にただ最高のものをあげたかった

だから、居心地のいい二人の小さな愛の巣に1000ポンド出したのさ

彼女の披露宴は文句なしに成功だって言うこともできた

けばけばしいホテルに150人の客を呼んで

 

ねえ、花婿を見てごらん、微笑うかべて、すごく喜んでいる

目をとろんとさせて、まわりに手を振っている

いい仕事についていて、シャツもネクタイも素敵だけど

僕は彼女が彼を二度と見ようとしなかったことをおぼえているよ

彼女が男たちと酒を飲んでいる姿が目に浮かぶんだ 

ヤツらのハートを人形みたいにこわしながら

彼女はポニーを踊ったものさ ストロールを踊ったものさ

花嫁がロックンロールをやっていた頃をオレは知ってるよ

花嫁がロックンロールをやっていた頃をオレは知ってるよ

 

ウォークマンを聴きながら 

お気に入りの曲に合わせてジャンプする姿が見える

大騒ぎするのが大好きだった彼女を今もおぼえているよ

街のヤツらと飛び跳ねてビーバップを踊りながら

彼女はパーティが好きだったんだ すぐ出かけたがったんだ

花嫁がロックンロールをやっていた頃をオレは知ってるよ

花嫁がロックンロールをやっていた頃をオレは知ってるよ、、、

(拙訳)

 

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   ケレン味のないロックンロールに皮肉の効いた歌詞、これぞニック・ロウという感じの曲ですね。

     この曲のプロデュースと演奏を担当しているのはヒューイ・ルイス&ザ・ニュース!ヒューイ・ルイス本人も得意のハーモニカとバックコーラスをやっています。

 

 ニック・ロウとヒューイ・ルイスのつきあいは古く、ニックがやっていたブリンズリー・シュウォーツというバンドはヒューイがいた”クローヴァー”というバンドから大きな影響を受けていて、ニックがアメリカに行った時にクローヴァーのライヴを観に行ったことから交流が始まっています。

 そして、アメリカではなかなか日の目を見なかったクローヴァーにニックは声をかけ、ロンドンに呼ぶと自らツアー・マネージャーになってサポートしたそうです。

 イギリスはパンク・ブームが盛り上がっていて、カントリー・ロックの”クローヴァー”が渡英すには最悪のタイミングだったようですが、ニックは自身がプロデュースしたエルヴィス・コステロのデビュー・アルバム「マイ・エイム・イズ・トゥルー」の演奏をクローヴァーの面々に託すなど最善を尽くしたようです(ヒューイ本人は休暇中で参加しませんでしたが)。

 そういう古くからの信頼関係がこの曲に反映されているわけですが、それはちょっとほろ苦い経緯があったようです。

 

 この当時ニックが「ザ・ローズ・オブ・イングランド」というアルバムを作ってレコード会社の人間に聴かせると、ヒットしそうなシングルがない、と言われてしまったのです。しかも、ヒューイ・ルイスと友達だったよな?と暗にコラボを示唆されたようです。

 

 この時代はヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの最盛期、この曲と同じ1985年には映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主題歌「パワー・オブ・ラヴ」が大ヒットしています。

 ヒューイたちがヨーロッパにツアーが来た時に、ニックはこの曲のプロデュースを依頼するとヒューイは快諾、彼らの本拠地サンフランシスコにニックが来てレコーディングをしました。

 

「そこは超高価な一流のスタジオ。ヒューイはやる気満々だった。あいつにこんなことを頼まなきゃならないのは嫌だった。でも彼はやるよと二つ返事で、”端正な曲”に仕上げてくれたんだ。」

 (「恋するふたり ニック・ロウの人生と音楽」)

 そして、曲のミックスを手がけたのはボブ・クリアマウンテン。1980年代サウンドを作った大人気エンジニア。この当時のヒットの方程式に則ったんですね。

 その結果全米77位と、彼にとって「恋するふたり」以来の全米100位入りのシングルになりました。

 

 

 実は、この曲はもともとは、1975,6年頃にニック・ロウデイヴ・エドモンズのために書き下ろしたものでした。

 デイヴ・エドモンズはニックより6歳上で、1970年に「I Hear You Knocking」が全英1位になるなどキャリアもあり、この当時はニックにとっては雲の上の存在でした。

 だた、デイヴはこの頃はヒットに恵まれず、離婚をしたことを契機にウェールズからロンドンに出てきたばかりで、人脈もまだなかったため、知り合いだったニックが協力していたんですね。

 そこに、レッド・ツェッペリンロバート・プラントからデイヴが声をかけられ、彼らのレーベルと契約することになり、そのアルバム用にニックが書いたのがこの曲でシングルにもなり全英26位、実に4年ぶりのヒットになったのです。 

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 本来はチャック・ベリー・タイプのオーセンティックなロックンロールだったんですね。

    翌1978年にはニック・ロウ本人が演奏した音源が、当時彼が在籍していた”STIFF(スティッフ)”レーベルのライヴ盤「LIVE STIFFS LIVE」に収録されています。

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 パンク全盛の時代でもあり、かなりワイルドで疾走感のある演奏です。1985年おシングルとはかなり趣が違いますね。

 

 ともあれ、この曲は結婚式でも演奏される隠れた人気曲のひとつになっているようです。

 先日このブログに登場したディオンもカバーしています。ロックンロール・レジェンドからも気に入られたんですね。

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 ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースも歌っています。彼らのオリジナルだと言っても違和感を感じません、、。

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 最後はニックとデイヴ・エドモンズが一緒に組んだバンド”ロックパイル”のヴァージョンを。

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