まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「ウェイク・ミー・アップ(Wake Me Up)」アヴィーチー(2013)

 おはようございます。

 今日はアヴィーチーの「ウェイク・ミー・アップ」です。

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Feeling my way through the darkness

Guided by a beating heart

I can't tell where the journey will end

But I know where to start

They tell me I'm too young to understand

They say I'm caught up in a dream

Well life will pass me by if I don't open up my eyes

Well that's fine by me

 

So wake me up when it's all over

When I'm wiser and I'm older

All this time I was finding myself

And I didn't know I was lost

 

So wake me up when it's all over

When I'm wiser and I'm older

All this time I was finding myself

And I didn't know I was lost

 

I tried carrying the weight of the world

But I only have two hands

I hope I get the chance to travel the world

But I don't have any plans

Wish that I could stay forever this young

Not afraid to close my eyes

Life's a game made for everyone

And love is the prize

 

 So wake me up when it's all over

When I'm wiser and I'm older

All this time I was finding myself

And I didn't know I was lost

So wake me up when it's all over

When I'm wiser and I'm older

All this time I was finding myself

And I didn't know I was lost

 

I didn't know I was lost

I didn't know I was lost

I didn't know I was lost

I didn't know, I didn't know, I didn't know

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闇を通ってゆく自分の道を感じている

胸の鼓動に導かれて

この旅がどこで終わるのかはわからない

だけど、どこから始めるかはわかっている

みんな僕が若すぎて理解できないと言う

夢にとらわれているのだと

自分の目をしっかり開かなければ

人生は通り過ぎてしまう

まあ、僕はそれでも構わないさ

 

 

すべてが終わってしまったら

僕を起こしてくれ

もっと賢く、大人になってしまったときに 

今までずっと自分自身を探してきた

僕が道に迷っているなんて知らなかったよ

 

 

この世界の重荷を背負おうとしていた

だけど僕には二つの手しかない

世界を旅することができたらと願っている

だけど何も計画はない

 

このまま永遠に若ければいいのに

目を閉じることも怖れないで

人生はあらゆる人に与えられたゲームだ

そして愛がその賞品なんだ

 

 

 

 

すべてが終わってしまったら

僕を起こしてくれ

もっと賢く、大人になってしまったときに 

今までずっと自分自身を探してきた

僕が道に迷っているなんて知らなかったよ

すべてが終わってしまったら

僕を起こしてくれ

もっと賢く、大人になってしまったときに 

今までずっと自分自身を探してきた

僕が道に迷っているなんて知らなかったよ

 

 

道に迷っているなんて知らなかったよ、知らなかったよ、、

                  (拙訳)

 

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  21世紀のポップ・ミュージックで最大のブームになったEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)。ダンス・ミュージックとしてはディスコ以来の大きな波と言っていいと思います。そのEDMを代表するDJ/プロデューサーのひとりがアヴィーチーで、この「ウェイク・ミー・アップ」はEDMブームをより大きなものにし、その流れも大きく変えた”ゲーム・チェンジャー”としての意義もある1曲でした。

 

 彼は本名をティム・バーグリングといい、スウェーデンストックホルムで生まれ育ています。ダフトパンクスウェーデン出身で世界的に人気のあるDJユニット”スウェディッシュ・ハウス・マフィア”などの影響を受けて、リミックスやダンストラックを作りネットで発表していた彼は、2008年頃からレーベルを通して作品をリリースし始めました。

  ちなみに、アーティスト名のAviciiはサンスクリット語のavīci、「無間地獄」、「阿鼻」(”阿鼻叫喚”の阿鼻です)からきているそうです。

 

 最初の大ヒットは2011年の「LEVELS」。スウェーデンで1位になった他、イギリスでは4位、はじめて全米チャートにも入っています(60位)。

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 ちなみに、この曲の途中に出てくる女性ヴォーカルはエタ・ジェイムズの「Something's Got a Hold on Me」をサンプリングしたものです。2010年にクリスティーナ・アギレラがこの曲をカバーしているとはいえ、22歳のDJとしてはかなり渋い選曲です。

 

   翌2012年には、ニッキー・ロメロをフィーチャーした「I Could Be The One」が全英1位になったり、レニー・クラヴィッツとコラボするなど世界中が注目する存在になっていきました。

 そして、この「ウェイク・ミー・アップ」になるのですが、この曲はまずアヴィーチーアメリカのロック・バンド”インキュバス”のギタリスト、マイク・アインジガーの二人で作り始めています。アヴィーチーのレーベルの担当者がマイクの知り合いだったのだそうです。

 

  インキュバスの「Drive」。2000年に全米9位になりました。

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 マイクはこう回想しています。

「僕はEDMやそんな感じの音楽を作りたいとは思っていなかったけど、彼が会って音楽の話をしたいと言っていると聞いて、僕がやっていることの幅を広げるいい機会だと思ったんだ」

 

「初めて会ったとき、僕たちは音楽は何も作らず、ただ数時間話したんだ。そして、僕たちが一緒に曲を作るべきなのは明らかだった。彼は、もっとオーガニックな方法で音楽を作りたくて、本当に生楽器を活用したかったんだ。フォークに影響を受けたものを作品の基準にしたかったんだ。彼は本当に良い音楽を聴いていたんだよ。

 そこで、彼が僕の家に来て、一晩で曲作りをするという計画を立てたんだ。そして、彼はやった、それが「Wake Me Up」ができた時の話だ。わずか数時間しかからなかった。振り返ってみると、今では信じられない、魔法をかけられたような感じだった。初めて一緒に座って曲を作ったときに、「Wake Me Up」ができたんだから」

 (VARIETY Apr 23, 2018)

 

 それまでのEDMのスタイルじゃなく、そこに生楽器を入れたフォークっぽい要素を加えたいというアイディアがもともとアヴィーチーが持っていたんですね。そして彼はクラブ・ミュージック以外の”引き出し”もしっかり持っていた人だったわけです。

 

 彼ら二人でトラックとコード進行はできたのですが、それに歌詞とメロディを乗せて歌える人間が必要でした。

 

   そして白羽の矢が立ったのが、アヴィーチーが別の曲で作業する予定だったアロー・ブラック(Aloe Blacc)でした。彼は2003年にラッパーとしてデビューしヒットに恵まれませんでしたが、2010年にシンガーとしてリリースした「I Need a Doller」がTVドラマに使われたことがきかっけで全英2位の大ヒットになり注目を集めていました。

 

 ちなみに、この時の成功のことを彼はこう分析しています。

「最終的に、何かひとつのことに集中すればするほど、注目される可能性が高くなることを発見したんだ。僕がソウルミュージックに焦点を当てると決心した時に、それまで閉ざされていた世界が開けたんだよ。それまでは僕のスタイルがあまりにも多様で、ファンが定義したり識別したりするのが難しかったんだ」

 (NEXT SHARK  November 6, 2013)

 これは、どんなジャンルにでも共通しそうな”法則”かもしれませんね。

 

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 彼もまたEDMとは全く接点のないアーティストでしたが、アヴィーチーに声をかけられたときにはちょうど歌詞のアイディアがありました。

 

ジュネーブで行われたIWC(スイスの時計ブランド)のイベントからの帰りの飛行機の中で最初のインスピレーションが得られたんだ。"I Need a Dollar "の成功以来、自分の人生がどれほど変わったか、そして、それが決して終わってほしくない夢のように感じられるということを、じっくり考えていたんだ。僕は「Wake Me Up」の歌詞を携帯電話に打ち込んだんだけど、それが何かの役に立つと思ったんだ。言葉がけっこう強かったから。それからすぐに、アヴィーチーから彼のアルバムに参加して欲しいと連絡があったよ」

 (NEXT SHARK  November 6, 2013)

 

 「ウェイク・ミー・アップ」は”僕をいま起こしてくれ”と言う内容じゃなく、”もっと夢を見させてくれ””僕を起こすのは夢が全部終わってからにしてくれ”という気持ちが込められているわけなんですね。

 

 EDMにフォークやカントリーのテイストを合わせるという画期的な「ウェイク・ミー・アップ」は、マイアミで開催されたUltra Music Festivalで初披露され、クラブ・ミュージック・ファンを大変に困惑させたと言われています。彼のSNSには非難する書き込みも少なくなかったそうです。

 ボブ・ディランがフォーク・ギターをエレキ・ギターに持ち替えた伝説の”ニューポート・フォーク・フェスティヴァル”を引き合いに出した人もいたといいます。

 

 ともかく、結果的に「ウェイク・ミー・アップ」はクラブシーンの規模を超えてポップ・ミュージックとクロス・オーヴァーするレベルの破格の大ヒットになりました。ヨーロッパでは軒並み1位、アメリカでも4位まで上がる大ヒットになりました。

 

 そして、この曲以降、EDMに他の要素をプラスした曲が増えていったように思います。

 

 さて、この曲で世界的に成功をおさめた時に彼はまだ24歳でしたが、21歳で急性膵炎になって以降、深刻な健康上のトラブルに悩まされていました。パーティー漬けで過度の飲酒が大きな要因だったとも言われて、2016年にはDJとしての絶頂期にいながら、ツアー活動を完全にやめると宣言しています。

 そして2018年に彼は亡くなってしまいます。しばらくして、自殺だったということが伝えられました。

 

 後年、彼はこういう発言をしていたようです。

「何を選択するにしても、これまで物欲で動いたことは一度もなかった。もちろん、成功したことで得たチャンスや安心感には感謝しているよ。世界中を飛び回って演奏できるなんて本当に恵まれていると分かっている。でも、アーティストとしての人生が大きくなりすぎて、人間としての人生がほんの少しになってしまった」

「4、5、6年前からEDMは過飽和状態になってきた。あの頃から金が全てになったんだ。その頃から俺はEDMとの関わりを持ちたくないと思うようになった」

 (Rolling Stone 2018/04/21)

 

 EDMの大ブームの終焉は、彼の死をもって決定的なものになったように思います。

 そのブームの時期と、彼が活躍し、生きていた期間が完全に重なってしまったことによって、後年、彼はEDMというジャンルの”アイコン”のような存在として認知されていきそうな気もしますが、実際は大胆な改革者であり、一つのジャンルにおさまらない音楽の幅広い素養を持つ才能だった、ということは記憶されるべきじゃないかと僕は思います。

 

 最後はアロー・ブラックが同じ年にリリースした自身のアルバムに収録したこの曲のアコースティック・ヴァージョンを。

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