まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ユー・ビロング・トゥ・ミー (You Belong to Me)」 ドゥービー・ブラザーズ(1977)

 おはようございます。

 今日はドゥービー・ブラザーズの「ユー・ビロング・トゥ・ミー」を。


You Belong to Me (2009 Remaster)

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Why'd you tell me this
While you look for my reaction
What do you need to know
Don't you know I'll always be the one

You don't have to prove to me you're beautiful to strangers
I've got lovin' eyes of my own
You belong to me
In this life

Anyone could tell
Any fool can see who you need
I know you all too well
You don't have to prove to me you're beautiful to strangers
I've got lovin' eyes and I can tell

You belong to me
Tell him you were foolin'
You belong to me
You belong to me
Tell him he's a stranger
You belong to me

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どうしてこんなことを言ったの

僕の反応を探りながら

何を知りたいの?

僕はいつだって君のたった一人の相手さ

 

知らないヤツらにとって君が美しいことを

僕に証明する必要なんてないよ

僕には君を愛しやまないこの瞳があるんだから

君は僕のものさ この人生で

 

誰にだってわかることさ

どんなバカでも自分に必要な人は誰か見分けられることを

君のことは全部わかっているさ

知らないヤツらにとって君が美しいことを

僕に証明する必要なんてないよ

君を愛する瞳があるんだから わかるさ

 

君は僕のもの

ヤツにはからかっているだけだと言うんだ

君は僕のもの

ヤツは赤の他人だって言うんだ

君は僕のもの                (拙訳)

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 野生的で骨太なロックが持ち味だったドゥービー・ブラザーズの中心人物、トム・ジョンストンが体調を壊しバンドを一時的に離脱した1975年、その代わりに加わったのが、当時スティーリー・ダンのレコーディングやツアーに参加していたマイケル・マクドナルドでした。

 そして、加入後最初のシングル「ドゥービー・ストリート (Takin' It to the Streets)」をヒットさせ(全米13位)、その期待にこたえます。


Takin' It to the Streets

  のちにマイケルは古くからのファンからドゥービー・ブラザーズを別のバンドに変えた戦犯みたいな言われ方をするようにもなるわけですが、この曲で僕が感じるのがドゥービーのワイルドでファンキーなノリをしっかりと生かしながら、自分らしい都会的なR&B感覚を巧みにミックスする、という実に絶妙な”さじ加減”です。本来のドゥービーの持ち味をちゃんとリスペクトしているわけですね。

 

 ちなみに彼がドゥービーに参加した時に、一番評判になったのは”歌の実力”でした。

「ダンス・ウィズ・ミー」で知られるオーリアンズのジョン・ホールはこう語っています。

「最初にマイケルの話を聞かせてくれたのはボニー・レイットだった。『ドゥービー・ブラザースに新しいメンバーが入ったの。マイケル・マクドナルドっていうんだけど、とにかく歌がうまくって。彼なら電話帳を歌わせても、きっと最高だと思うわ』」

                      (「ヨット・ロック」)

 そして、バンドの野生的な魅力を残しながらも少しずつ洗練させてゆく手法で、じわじわとバンドの中心メンバーになっていった彼が、アルバム『運命の掟(Livin' on the Fault Line)』の中に何気なく忍ばせた、思いっきり都会的で洗練された曲がこの「ユー・ビロング・トゥ・ミー」でした。シングルにするには、当時のドゥービーのイメージとはかけ離れすぎていたんでしょうね。

 いつもは歌詞も書く彼が、他の人に書いてもらうことにしたのは、この曲のテイストがやはりそれまでのドゥービーの曲とは違ったからかもしれません。

   そして白羽の矢が立ったのは、昨日このブログに登場したカーリー・サイモン。この時期彼女はドゥービーのプロデューサーのテッド・テンプルマンのプロデュースでアルバム(『見知らぬ二人』(Another Passenger))を作っていました。

 

 カーリーはこう語っています。

 マイケル・マクドナルドが書いたメロディーが既にあったの、それでテッドがマイケルに私に電話して歌詞を書くように頼んだらどうかって提案したのよ。本当に切羽詰まっていたみたいで、私はすぐに取りかからなくっちゃいけなかった。だいたい15分くらいで書いたわ。私たちは共作する間一度も会ってないの。それで、最後に彼は植物を私に送って来たわ、印税を受け取った一年後くらいだったけど」

                      (Performing Songwriter)

 

 そして彼女は翌年この曲を自身でカバーし、シングルでもリリースしました。そして、全米6位と彼女の代表曲のひとつになりました。

 
You Belong to Me

 当時の彼女の旦那さんのジェイムス・テイラーがコーラスを担当していますが、なんといってもすごいのが演奏陣です。

 当時”スタッフ”というグループでも活動してジャズ・フュージョン・ファンを熱狂させていた凄腕スタジオ・ミュージシャンの、ゴードン・エドワーズ(ベース)、コーネル・デュプリー(ギター)、エリック・ゲイル(ギター)、リチャード・ティー(キーボード)、スティーヴ・ガッド(ドラムス)、そこにサックスでデヴィッド・サンボーンが加わるという、この時代のニューヨークの最強の布陣でした。

 

 ドゥービーのウエスト・コースト・サウンドに対して、ニューヨーク・サウンドで対抗したわけですね。

 両者甲乙つけがたいというのは、まさにこの曲のことだと思います。

 個人的にはボーカルはドゥービー、演奏はカーリーのヴァージョンが好きです。

 

 そしてカーリーのヴァージョンに強くインスパイアされたのが、昨年残念ながら亡くなられてしまった筒美京平氏で、この曲をモチーフにこんなAOR歌謡の名曲を生み出しています。

www.youtube.com

 

 また、この曲には魅力的なカバーはいくつかあります。

まずはアニタ・ベイカー。1994年のアルバム「リズム・オヴ・ラヴ」収録。


You Belong to Me

ジェニファー・ロペス。2002年リリースの「This Is Me... Then」収録。


Jennifer Lopez - 09. You belong to me

 チャカ・カーン、2007年のアルバム「Funk This」収録ヴァージョンにはマイケル本人も参加しています。

www.youtube.com

 

 

Funk This by Chaka Khan

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