まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「うつろな愛(You're So Vain)」カーリー・サイモン(1972)

 おはようございます。

 今日はカーリー・サイモンの「うつろな愛」です。


You're so Vain

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You walked into the party
Like you were walking on a yacht
Your hat strategically dipped below one eye
Your scarf, it was apricot
You had one eye on the mirror
As you watched yourself Gavotte
And all the girls dreamed that they'd be your partner
They'd be your partner, and

You're so vain
You probably think this song is about you
You're so vain,
I'll bet you think this song is about you
Don't you? Don't you?

Oh, you had me several years ago
When I was still quite naive
Well, you said that we made such a pretty pair
And that you would never leave
But you gave away the things you loved
And one of them was me
I had some dreams, they were clouds in my coffee
Clouds in my coffee, and

You're so vain
You probably think this song is about you
You're so vain, you're so vain
I'll bet you think this song is about you
Don't you? Don't you? Don't you?

I had some dreams, they were clouds in my coffee
Clouds in my coffee, and

You're so vain
You probably think this song is about you
You're so vain, you're so vain
I'll bet you think this song is about you
Don't you? Don't you?

Well I hear you went up to Saratoga
And your horse, naturally, won
Then you flew your Learjet up to Nova Scotia
To see the total eclipse of the sun
Well, you're where you should be all the time
And when you're not, you're with some underworld spy
Or the wife of a close friend,
Wife of a close friend, and

You're so vain
You probably think this song is about you
You're so vain, you're so vain
I'll bet you think this song is about you
Don't you? Don't you? Don't you?

You're so vain
You probably think this song is about you
You're so vain,
You probably think this song is about you
You're so vain

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あなたはパーティにやって来た

まるでヨットの上を歩くような足取りで

わざと片目がかくれるように帽子をかぶって

あなたのスカーフときたら、アプリコットだったわ

片目を鏡のほうにむけ ガヴォットを踊る自分の姿に見とれてた

そして、女の子はみんなあなたのパートナーになりたいと夢みるのよ

あなたのパートナーにね、、だから

 

自惚れすぎよ 

この歌は自分のことだと思ってるでしょ

自惚れすぎよ

絶対自分の歌だと思ってるわ

そうでしょ?そうでしょ?

 

何年か前はあなたのものだった

私がまだ本当に世間知らずだった頃よ

あなたは二人はすごくお似合いだって

絶対離れないって言った

でも、自分が愛したものを手放していった

そのうちのひとつが私だったの

いくつか夢も見たわ それはコーヒーに映った雲みたいなもの

コーヒーに映った雲、だから

 

自惚れすぎよ 

この歌は自分のことだと思ってるでしょ

自惚れすぎよ

絶対自分の歌だと思ってるわ

そうでしょ?そうでしょ?

 

いくつか夢も見たわ それはコーヒーに映った雲みたいなもの

コーヒーに映った雲、だから

 

自惚れすぎよ 

この歌は自分のことだと思ってるでしょ

自惚れすぎよ

絶対自分の歌だと思ってるわ

そうでしょ?そうでしょ?

 

サラトガに行ったって聞いたわ

それで、あなたの馬は、当然勝ったって

それから皆既日食を見るために

自分のリアジェットでノバスコシアに飛んだんだってね

あなたはいつも自分がいるべき場所にいるのね

そうじゃないときは、暗黒街のスパイか

親友の奥さんと一緒にいるんでしょうね

親友の奥さんと、、

 

自惚れすぎよ 

この歌は自分のことだと思ってるでしょ

自惚れすぎよ

絶対自分の歌だと思ってるわ

そうでしょ?そうでしょ?               (拙訳)

 

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「うつろな愛」の楽譜はこちら

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 この曲は1970年代前半に彼女を時代を象徴する女性シンガー・ソングライターとしてキャロル・キングジョニ・ミッチェルと並ぶ存在にまで押し上げました。

 ちなみに、彼女はキャロルの3歳下、ジョニの2歳下です。

 

 この歌で、自惚れ屋と歌われている男は誰なのか?というのが、ポップ・ミュージック史上屈指の”謎”とされています。

 

 テレビの視聴者に相手は誰なのか投票させる企画があったり、チャリティでその情報を教えてもらえる権利が競売にかけられたこともあったようです。その際彼女は落札者に他言を厳禁しつつ、相手の名前に入っているアルファベット1文字だけはみんなに教えていいという条件を出したみたいです。

   その後、別の機会に彼女はもう2文字開示しています(その3文字はA,E,R)。

 また、2011年に彼女が「うつろな愛」を新録し曲中で相手の名前を囁いたそうで、ここまでくるともう、カーリー本人がもったいぶったり匂わせながら50年近くネタをもたせようとしている狙いが、はっきり感じられますよね、、

 

 また、このネタがこんなに持っているのは、相手の候補が、ミック・ジャガージェイムズ・テイラー、キャット・スティーヴンス、クリス・クリストファーソンウォーレン・ベイティ、といった当時のスーパー・スターばかりだったからです。

 そして、2015年についに2番の歌詞だけ、モデルがウォーレン・ベイティだったと彼女は告白したようです。

 確かに、1970年代に読んだ映画雑誌ではいつも”ハリウッドで1番のプレイボーイ”というキャッチフレーズが彼にはついてたなあ、などと納得するわけですが、ウォーレン本人は歌詞全部が自分のことだと思っているとのことです。

 1番、3番についてはまた別の相手だったようで、43年もかかってようやく2番の歌詞のモデルを打ち明けたわけで、彼女の生存中に他の2人を知ることはできないんじゃないか、なんて思ってしまいますが、。

 

「『うつろな愛』の場合、最初に”You're so vain You probably think this song is about you"というサビが浮かんで書きとめておいたの、曲が出来上がる一年前くらいに。なんか面白いし、いい感じでひねりが効いているって思ったわ、だからノートに書いておいたの。それから、一年くらいたって妹の部屋でパーティをやっていたときに、一人の男がやって来たの、大きくて長いスカーフを巻いていて、玄関にある鏡をじっと見ながらスカーフを巻きなおし、帽子を少し左に傾けたの、本当に自惚れ屋だと思ったわ」

                     (VARIETY 2012 4月)

 

 歌詞に出てくる”ガボット”は、フランス宮廷の踊りの名前で、歌詞の前に出てくるヨット、アプリコットと韻を踏む言葉を探すうち、気取って自惚れた男の感じを出すために浮かんだものだそうです。

 ヨットの上を歩くような、というのもその人物を見た彼女の友達が言った言葉なのだそうです。

 そして彼女は、それまで「Bless You,Ben」というタイトルで進行していた曲の歌詞を、このパーティがきかっけで大幅に書き換えたわけです。

 

    ちなみにこの曲の中で最も有名なフレーズ”Clouds in my coffee(私のコーヒーの中の雲)”は、彼女が飛行機に乗っている時に、自分のコーヒーの表面に窓の外の雲が映ったことから浮かんだフレーズなのだそうです。そこから、底まで見通すことはできないけれど、表面上は魅力的に見えるものをイメージしていて、人生や愛の混乱した局面を暗示しているとのことです。

 

 

 また、この曲はもともとフォーク・バラッド調のゆったりしたテンポだったそうですが、テンポを上げることを提案したのがプロデューサーのリチャード・ペリーでした。

 最近このブログでピックアップした二ルソンの「ウィザウト・ユー」やリンゴ・スターの「ユア・シックスティーン」や「想い出のフォトグラフ」のプロデューサーですね。

 この頃はまさに彼は二ルソンのプロデュースを手がけていたので、その流れでこの曲のコーラスは二ルソンがやることになっていたそうです。

 レコーディングが二ルソンの「ウィザウト・ユー」同様ロンドンで行われていました。

 そして、コーラス録りをしていたときに、ミック・ジャガーが彼女に電話をかけて来たので、彼女がミックを呼んで3人で歌ってみたそうですが、二ルソンが”君たち二人の声は本当によく合ってるから、二人きりでやるべきだ”と言って辞退したのだと言います。

 ミック・ジャガーが電話してこなかったら、それ以前にイギリス・レコーディングでなかったら、このコラボレーションは生まれなかったわけですね。

 二ルソンがこの曲のコーラスをやっていたら、この曲の運命はまた違ったものになっていたのかもしれませんね。

 

 

  彼女は1964年に、妹のルーシーと組んだ「サイモン・シスターズ」というフォーク・デュオでデビューしています。


Winkin' Blinkin' and Nod by the Simon Sisters

 しかし、1969年にルーシーが結婚のため脱退し、彼女はソロになります。

 そしてソロ・デビュー・シングル「That's the Way I've Always Heard It Should Be」

(1971)がいきなり全米10位のヒットになります。


That's The Way I've Always Heard It Should Be

そして次のアルバムからのシングル「Anticipation」も全米13位と好調をキープします。


Anticipation

 当時のキャロル・キングと近い雰囲気がありますね。正直言って、彼女のファーストとセカンド・アルバムを聴くと、キャロル・キングっぽい曲やジョニ・ミッチェルっぽい曲が多く、彼女たちのフォロワーというイメージに収まってしまっているように思えます。

 そして、ようやく彼女らしさ、キャロル・キングジョニ・ミッチェルが持ち合わせていない”情感のある奔放さ”のようなものを全面に打ち出すことができたのが、次の3枚目のアルバム「ノー・シークレッツ」からのシングル、この「うつろな愛」だったわけです。

 彼女の場合、キャロル・キングジョニ・ミッチェルほどのリスペクトを受けるまでには至っていませんが、精力的に活動は続けていて、特にこの「うつろな愛」のパワーはいまだにまったく衰えてはいないようです。

 

2011年の新録ヴァージョン


Carly Simon - You're So Vain

 テイラー・スウィフトはこの曲を"Song That Made Me "の第一位にあげたそうで、2013年には彼女のスタジアム・ライヴでカーリーがゲスト出演しこの曲を一緒に歌っています(テイラーはこの曲のモデルは誰だかをカーリーから教えてもらったようです、、)


Taylor Swift and Carly Simon: You're So Vain

 

 

 この曲が収録されているアルバム「ノー・シークレッツ」。「うつろな愛」のインパクトが大きすぎるのですが、アルバム全体としては同時代のキャロル・キングジョニ・ミッチェルと共通するムードを持つ、好曲揃いの名盤です。

No Secrets

No Secrets

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彼女と時代の女性シンガーソングライター

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追記:日記ブログはじめました。よかったらのぞいてみて下さい

voz.hatenablog.com