まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「ソー・ファー・アウェイ(去りゆく恋人 / So Far Away)」キャロル・キング(1971)

 おはようございます。

 今日はキャロル・キングの「ソー・ファー・アウェイ」です。

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So far away
Doesn't anybody stay in one place anymore
It would be so fine to see your face at my door
Doesn't help to know you're just time away

Long ago I reached for you and there you stood
Holding you again could only do me good
How I wish I could
But you're so far away

One more song about moving along the highway
Can't say much of anything that's new
If I could only work this life out my way
I'd rather spend it being close to you

But you're so far away
Doesn't anybody stay in one place anymore
It would be so fine to see your face at my door
Doesn't help to know you're so far away

Traveling around sure gets me down and lonely
Nothing else to do but close my mind
I sure hope the road don't come to own me
There's so many dreams I've yet to find

But you're so far away
Doesn't anybody stay in one place anymore
It would be so fine to see your face at my door
Doesn't help to know you're so far away

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とても遠く

誰もひとつの場所にとどまらなくなったのかしら

玄関にあなたの顔が見られたらとても嬉しいのに

ただ少し離れているだけだとわかっていても

気持ちは救われない

 

昔、手を伸ばせばあなたはそこに立っていた

もう一度あなたを抱きしめることが、私の気分をよくしてくれるはず

そうできたらいいのに

だけどあなたをとても遠い

 

ハイウェイを走り去る主人公の歌がまたひとつ

目新しいことは何も歌っていない

もし、自分の思うように生きていけるのなら

私はあなたのそばで過ごしたい

 

だけど、あなたはとても遠い

誰もひとつの場所にとどまらなくなったのかしら

玄関にあなたの顔が見られたらとても嬉しいのに

ただ少し離れているだけだとわかっていても

気持ちは救われない

 

旅をしても落ち込んで寂しくなるだけ

心を閉ざすことしかできない

この道が私を飲み込んでしまわないことを望むわ

まだ見つけていない夢がたくさんあるの

だけど、あなたはとても遠い

誰もひとつの場所にとどまらなくなったのかしら

玄関にあなたの顔が見られたらとても嬉しいのに

ただ少し離れているだけだとわかっていても

気持ちは救われない

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 アルバム「つづれおり」の重要な要素として、キャロル・キングはこう語っています。

 ジェイムス・テイラーの存在はアルバムに、水と太陽光をもたらしたのだった」

 (「キャロル・キング自伝 ナチュラル・ウーマン」)

 

 ジェイムス本人がアコースティック・ギターとコーラスで全面的に参加しているだけではなく、「つづれおり」の演奏陣はジェイムスのバックをつとめていたメンバーでした。

 キャロルとジェイムスといえば、おたがいがそれぞれのアルバムで歌った「君の友だち(You've Got a Friend」が何と言っても有名ですが、ソングライターとしてのキャロルにジェイムスが大きなインスピレーションになった曲がありました。

 

 それが、この「ソー・ファー・アウェイ」です。

 

「つづれおり」が発売される前年の1970年の秋、キャロルはジェイムス・テイラーのツアーのバック・バンドのキーボード(ピアノ)として参加していました。

 

「『ソー・ファー・アウェイ』を完全に私一人で書いたのは、そのツアー中の週末だった。個人的にはチャーリーを思って書き、音楽的にはジェイムスを思い描いていた」

   (*チャーリーとは当時の恋人でベーシストのチャールズ・ラーキーのこと)

 

「ジェイムスの曲は一見シンプルな中に罠があり、実はひじょうに複雑で先が読みにくい。彼はメロディやサビそれぞれに、独特かつ巧みな特徴をもたせるが、どの部分も親しみやすく自然と馴染むのだ。ジェイムスの作曲スタイルに強く刺激された私は、自分にもそのスタイルを取り入れるようになった」

 

「アルドン時代に私は、他のアーティストに向けた曲作りの技術を養ってきている。ジェイムスのために作曲している訳ではなかったが、『ソー・ファー・アウェイ』を書いたとき、頭の中に聴こえてきたのは彼の歌声だった」

 (*アルドンは彼女が作曲家として所属していたアルドン・ミュージックのこと)

              (「キャロル・キング自伝 ナチュラル・ウーマン」)

 

 ジェイムスのファースト・アルバム「ジェイムス・テイラー」を聴いたときに、彼女は千回聴いても聴き飽きないだろう、と語ったほどで、もともと彼に心酔していました。

 ニューヨークからLAに移住したキャロルでしたが、ジェイムスもロンドンでファースト・アルバムを作ったあと、次のアルバムを作るためにLAにやってきました。

 ジェイムスのプロデューサー、ピーター・アッシャーの計らいで彼の自宅で二人は一緒に演奏する機会を得ました。

 

「気がつくと私たちは馴染みの曲を演奏し歌い出していた。彼の曲や私の曲や他のアーティストの曲を。不思議・・・?劇的・・・?永遠・・・?形容詞が見つからない。まるで自分の体の延長で演奏している気分なのだ。相手に期待するコードや音符を思い浮かべた瞬間、すでにジェイムスはそこにいる。私たちの音楽の語彙は同じで、二人のボーカルのブレンドは完全無欠だった」

(「キャロル・キング自伝 ナチュラル・ウーマン」)

 ”自分の体の延長で演奏している”、というのは、相当な”息の合い方”だと思います。”音楽的なソウルメイト”と言ってもいいでしょう。

 

 そういう相手が、音楽的にバックアップし、感性を刺激し、精神的な支柱としても存在していたことが、このアルバムの”空気”にも大きく影響したはずです。

 

 昨日紹介した「イッツ・トゥー・レイト」の記事では、夫で作詞のパートナーだったジェリー・ゴフィンと距離が生まれ、トニ・スターンという女性作詞家との出会い共作することで、キャロル・キングの作品作りが受け身から自発的なものに変化しき、それが「つづれおり」の”核”になっていることを書きました。

 

 そこに、ジェイムス・テイラーという存在が、滋養(水と太陽光)をもたらしたんですね。

 

 時を超えるような名盤というのは、ただ、すごくいい曲を、すごくいい演奏で録音しただけのものじゃないのかもしれません。

 目に見えない、いや、音符としては聞こえないような”人間的な”要因が集まり化学反応を起こし、それが不思議なエネルギーになっているということなのだと僕には思えます。

 

 大瀧詠一の「A LONG VACATION」も、彼がそこに至るまでの歩み、精神的な変化、交友関係など、”人間的な”要因が一気に集約するようにして生まれた作品だったことが、ここにきてわかってきています。

 キャロル・キングの自伝を読むと、この「つづれおり」も彼女のそれまでの歩みと、精神的な変化、交友関係などが、一気に集約されていいたような流れをはっきり見つけることができます。

 

  彼女の頭の中で鳴っていたというジェイムスが歌う「ソー・ファー・アウェイ」は、現実にはどうもなさそうですが、「つづれおり」が発売された年に、イギリスBBCで二人がこの曲を共演している動画がありましたので、それを最後にどうぞ。

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