まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。(現在は不定期で更新中)古今東西のポップ・ソングのエピソード、和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ(NIche)”なものになってしまったのかもしれませんが、みなさんの毎日の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出なども絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ファイアー・アンド・レイン(Fire and Rain)」ジェームズ・テイラー(James Taylor)(1970)

 おはようございます。

 今日はジェームス・テイラーの「ファイアー・アンド・レイン」です。

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Just yesterday morning, they let me know you were gone
Suzanne, the plans they made put an end to you
I walked out this morning and I wrote down this song
I just can't remember who to send it to


I've seen fire and I've seen rain
I've seen sunny days that I thought would never end
I've seen lonely times when I could not find a friend
But I always thought that I'd see you again


Won't you look down upon me, Jesus
You've got to help me make a stand
You've just got to see me through another day
My body's aching and my time is at hand
And I won't make it any other way


Oh, I've seen fire and I've seen rain
I've seen sunny days that I thought would never end
I've seen lonely times when I could not find a friend
But I always thought that I'd see you again


Been walking my mind to an easy time, my back turned towards the sun
Lord knows when the cold wind blows it'll turn your head around
Well, there's hours of time on the telephone line to talk about things to come
Sweet dreams and flying machines in pieces on the ground


Oh, I've seen fire and I've seen rain
I've seen sunny days that I thought would never end
I've seen lonely times when I could not find a friend
But I always thought that I'd see you baby, one more time again, now


Thought I'd see you one more time again
There's just a few things coming my way this time around, now
Thought I'd see you, thought I'd see you, fire and rain, now   

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昨日の朝、君が逝ってしまったと知らされた
スザンヌ、彼らの作ったプランが

君の人生を終わらせたんだ
今朝外を歩いて、この曲を書きあげた
誰に送ったらいいのかわからない


僕は炎を見てきた、雨だって
ずっと続くと思えた晴れの日も見てきた
友達が見つけられない孤独な時間も経験した
だけど、僕はいつだって

君にまた会いたいと思っていた


僕のほうを見てください、神様
僕が立ち上がるのを助けてくれなきゃいけません
また今日も一日、僕を見守ってください
僕の体は痛み、最期の時はすぐそこ
僕には他のやり方はできないんです


僕は炎を見てきた 雨だって
ずっと続くと思えた晴れの日も見てきた
友達が見つけられない孤独な時間も経験した
だけど、僕はいつだって

君にまた会いたいと思っていた

 

気楽な暮らしに気を取られて歩んできた
太陽に背中に向けて
神様は知っている 冷たい風が吹くと
やっと人は気づくということを
電話でこれからのことを何時間も語り合った
地面でこなごなになった甘い夢と

フライング・マシーン


僕は炎も見てきた 雨だって
ずっと続くと思えた晴れの日も見てきた
友達が見つけられない孤独な時間も経験した
だけど、僕はいつだって

君にまた会いたいと思っていた

もう一度君に会いたいと思っていた
ほんのちょっとしたことしか起こらないのさ 最近は
君に会いたかった
君に会いたかった、炎と雨、今は

             (拙訳)

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「ファイアー・アンド・レイン(Fire and Rain)」ヤマハぷりんと楽譜

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「ほとんど不快になるほど自分自身に近い曲なんだ。ほとんど告白だ。当時の僕がああいう曲を書けて、今は書けないのは、当時は誰かに聞いてもらうという意識がなかったからだと思う。この曲を書き始めたのは、ロンドンにいたときで、1stアルバムを制作していていて終盤にさしかかった頃だった。だけど、まだ僕は何も発表していないし、全く無名だったので、こういうものを聴いてくれるお客さんがいるというイメージも経験もなかった。だから、決して聴いてもらえないと想定していたので、ただ、好きなことを書いたり言ったりしていたんだ」

 (American Songwriter  2007)

 

   あまりに個人的な曲だったせいか、彼はラジオからこの曲が流れててくるのがたえられず、いつも曲がかかるとラジオのダイアルに飛びついてしまう、とインタビューで語ったことがあるそうです。

 歌詞に出てくるスザンヌはジェームスが1960年代後半に、この歌詞にも出てきますが”フライング・マシーン”というバンドをやっている頃にニューヨークで知り合った友人スザンヌ・シュナーのことです。

 「よく一緒に遊んだり、ハイになったりしたものさ」「彼女は、僕たちとみんなと同じように子供だった」と彼は自伝で書いています。

 

  ”フライング・マシーン”は彼とダニー・コーチマーをメインにしたグループで、トロッグスの「ワイルド・シングス」を書いたことで知られるチップ・テイラーと、セッションギタリストで「サウンド・オブ・サイレンス」のエレキギターも弾いていたアル・ゴルゴニのプロデュースでアルバムを制作しましたが、「ナイト・アウル」というシングル一枚をリリースしただけでお蔵入りしてしまいます。(ジェームズがブレイクした後に、。ちゃっかりアルバムがリリースされましたが、、)

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 「フライング・マシーン」が頓挫(歌詞で象徴的に表現されています)したあと、彼はロンドンに向かい、ビートルズの作ったアップル・レコードのオーディションに合格します。

 その頃、スザンヌは精神療養施設の隔離房で自ら命を経ってしまったのですが、デビューを控えたジェームスを動揺させまいと、友人たちはその知らせを半年たってからジェームスに伝えたのだそうです。

 歌詞の”彼らの作ったプランが君の人生を終わらせた”の”彼ら”とは、実際に彼女を死に追いやった人のことではなく、神様のことだと、彼はのちに語っていたそうです。

 

 そして、2番の歌詞は彼がニューヨークでヘロインを断つために入った病院で、3番はマサチューセッツの精神科の病院で書いたそうで、ジェームス自身が実際に経験した3つのサンプリングのようなものなのだとも、彼は語っています。

 彼が「ほとんど不快になるほど自分自身に近い曲」と言ったのは、そういう理由があったからなんですね。

 しかし、彼の中で最もパーソナルなこの曲が、一躍彼を有名にし、今もなお世界中でたくさんのファンの心を掴む名曲になっているわけです。

 

ダスティン・ホフマンがいつか僕のところに来て言ったんだ”『ファイアー・アンド・レイン』は僕が絶対に抜け出せないと思っていた経験のひとつの側から、反対側に行かせてくれたんだ”って」

 (American Songwriter   2007)

 

 一般的なことを書くのではなく、個人的なことを徹底して掘り下げることで普遍性にたどりつくことができる、といったことを語っていた作家がいましたが、そういうことなのかもしれませんね。

 ただただ個人的であるだけで、共感を得られない作品というのは、掘り下げる技術と努力の両方が足りていないということなのかも、そんなことも思ってしまいました。

 それから、この曲のピアノを弾いているのはキャロル・キング

 彼女はこの曲の”返答”として、あの有名な曲を書いたのだそうです。

 

キャロル・キングと僕は、ロサンゼルスのトルバドールで一緒に演奏していたんだ。彼女は 「きみの友だち(You've Got a Friend )」を書いたばかりで、後になって彼女は これは「ファイアー・アンド・レイン」にレスポンスしたものだと言っていたよ。「ファイアー・アンド・レイン」のサビは、"友達が見つけられない孤独な時間も経験した(I've seen lonely times when I could not find a friend.)"。キャロルの返答は、"友だちはここにいるよ(Here's your friend )"だった。聴いた瞬間、自分でもやってみたいと思ったよ」

(Rolling Stone    AUGUST 20, 2015)

 

 最後は、2007年にトルバドールでジェームスとキャロルが共演したライヴから「ファイアー・アンド・レイン」と「きみの友だち」を。


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