まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「ハッピー・エバー・アフター(Happy Ever After)」ジュリア・フォーダム(1988)

 おはようございます。

 今日はジュリア・フォーダムの「ハッピー・エバー・アフター」を。

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Don't ask me why, i'm running out of laughter
There's tears in these eyes not happy ever after
And i thought it was plain to see
And i thought the whole world could be
And i thought, we'd be happy ever after

You could say that, i'm living in a pipe dream
It's just looking back, things are never what they seem
And i hope, i can safely say
And i hope, most things go my way
And i hope, they'll be happy ever after

Down in southern africa there's happy ever after
That lasts maybe forever
While they're living comfortably
There's peace and unity
Can we can we be happy ever after

Um by yay
Est ce le south africa

So don't ask me why, i'm running out of laughter
There's tears in these eyes, not happy ever after
And i thought, it was plain to see
And i thought, that maybe you and me
And i thought, we'd be happy ever after

Um by yay
Est ce le south africa

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理由はきかないで  笑えなくなったの
この目には涙が浮かんで 幸せじゃいられない
誰にもわかることだと思っていた
世界中がそうなれると思っていた
私は思っていたの、みんな幸せになれると

 

私は空想に生きている、そう言えるかもしれない
振り返ってみると、物事は見たままとは全然違うの
私は願う、安全に話せることを
私は願う、ほとんどのごとがうまく進んでくれることを
私は願う、みんながこれからずっと幸せになることを

 

南アメリカにも、幸せな未来がある
永遠に続くかもしれない
快適な生活を送っていれば
そこに平和と結束がある
私たちはずっと幸せでいられるの

 

これが南アフリカなの?

 

理由はきかないで  笑えなくなったの
この目には涙が浮かんで 幸せじゃいられない
誰にもわかることだと思っていた
世界中がそうなれると思っていた
私は思っていたの、みんな幸せになれると

これが南アフリカなの?

              (拙訳)

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 1980年代後半から90年代にかけての、熱心な音楽ファンの傾向として、輸入盤店で”おしゃれでかっこいい音楽”を見つける、というのがありました。

 六本木WAVEがそういう”ゲーム・チェンジャー”的役割を果たしたのかもしれませんが、その後渋谷がレコード店が群がる”メッカ”になってゆき、J-Waveなどの洋楽メインのFM局が開局していくと、連動していくことで大きな流れになっていきました。

 

 当時、僕は基本的に”古い音楽を掘る”ことがメインのリスナーでしたが、ときおり渋谷の輸入CDショップに出かけ、試聴機で知らないアーティストを買うこともありました。

 そんな中で、不思議に今も記憶に残っているのが、このジュリア・フォーダムとフェアグランド・アトラクション。どちらも1988年で、渋谷のFRISCOCISCOの系列)ってお店で買いました。特に変わったエピソードがあったわけじゃないのによくおぼえているんですよね。すごい”当たり”だと思ったんでしょう、きっと。

 どちらのアーティストも半年くらいしたら、かなりのヒットになりましたから、やっぱりオレの感性って、普通っていうか一般的なんだな、って思いましたが。

 

 この「ハッピー・エバー・アフター」はフジテレビのトレンディ・ドラマ(懐かしい響き!)「ハートに火をつけて」の挿入歌にもなりましたから、日本では”おしゃれな曲”として人気になったわけですが、歌詞を読んでの通り、南アフリカの人種問題に胸を痛める、内容なんですね。

 

「25年前にこの曲を書き始めたとき、Aメロとサビを書き終えた後に一息ついたの。テレビをつけたら、南アフリカネルソン・マンデラアパルトヘイトについての番組がをやっていて、圧倒され、インスパイアされたわ。それほど衝撃的な情報に心を奪われてしまった私は、これからずっと幸せになれるのか疑問を持たずに、このまま愛や人生についてのテーマを書き進めることができなくなってしまったわネルソン・マンデラ氏は、高潔な光を放ち、エレガントで雄弁な人物です。私たちにみんなにインスピレーションを与えてくれるの」

 (Phil Star Global       February 7, 2014)

 普通のラヴ・ソングとしてある程度書き終えたところに、TVのネルソン・マンデラに心を奪われ、曲が大きく改編された、そうやってこの「ハッピー・エバー・アフター」は生まれたんですね。日本人が感じた”洗練されたラヴソング”の要素も、もともと初期段階にはあったのかもしれません。

 

 

 ジュリア・フォーダムは、生まれ故郷であるイギリスのポーツマスのパブで歌い始め、音楽のキャリアをスタートさせました。

  近所の人が両親に”ニール(ダイアモンド)”の音楽を薦めているのを聞いて、彼女はレコード店に行くと店員がニール・ヤングだと思って彼女に渡したという勘違いエピソードが功を奏して、ニール・ヤングジョニ・ミッチェルなどのフォーク・ミュージックに彼女は没頭していったそうです。

 

 プロとしてのキャリアのしたーとは、なんと「マリのピンクのラブ・ソング」のマリ・ウィルソンのバックバンド”ウィルセイションズ”のメンバーとしてでした。マリの代表作「ショウ・ピープル」やTV番組、ライヴなどにコーラスとして参加しています。

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 彼女とマリは今も交流しているようで、かつてのマリの曲を一緒にライブでやっている動画もありました。

 

  1988年に念願のソロ・アーティストとしてデビューし、アルバム『ときめきの光の中で(Julia Fordham』 からのシングルで全英27位まであがったのがこの「ハッピー・エバー・アフター」でした。

 その後、日本では1989年のこの曲もCMに使われて人気でしたね。

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 世界的に人気があるのは、1992年にデミ・ムーアが主演した映画「夢の降る街」で使われた「愛はミステリアス((Love Moves in) Mysterious Ways)」。ディーン・ピッチフォード作詞、トム・スノウ作曲という「フットルース」の中のデニース・ウィリアムス「レッツ・ヒア・ボーイ」を書いた、バリバリの職業作家の曲ですが、どうもこれはリンダ・ロンシュタットに話が行って断られたので、ジュリアにまわってきたものなのだそうです。

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 この曲が時に人気だったのがフィリピンだったらしく、それ以来彼女はフィリピンの人気アーティストとして、数多くライヴを行なっているようです。

 

 それで思い出すのが、昨日このブログで取り上げたティミー・トーマスです。

 ティミーはウォルター・クロンカイトが伝えるベトナム戦争、ジュリアはネルソン・マンデラアパルトヘイトのTVニュースに衝撃を受けて曲を書いています。

 ティミーの曲は反アパルトヘイトの曲としても支持されて、彼は南アフリカでライブを何度もやっています。

 そして二人とも、1990年代前半に映画がらみの、甘いラヴソングを歌ってフィリピンで大人気になっているんですね。

 全くちがう時代にアメリカとイギリスで、社会問題に深く根ざした曲をヒットさせた二人のアーティストが、同時期にフィリピンで甘いラブソングを大ヒットさせている、全くの偶然ですが、不思議な感じがしてしまいます。 

 ただ、二人とも常に音楽に政治意識を持ち込むようなタイプじゃなく、大衆的なポップソングもやる人だったんですね。だからこそ、大きな社会問題に衝撃を受けて作った曲に、大衆に強くアピールする力があった、僕はそんな風にとらえています。

 

 最後は2013年に亡くなったネルソン・マンデラへのトリビュートとして、彼女が再レコーディングした「ハッピー・エバー・アフター」を

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