まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「マリのピンクのラヴソング(Just What I Always Wanted)」マリ・ウィルソン(1982)

 おはようございます。

 今日はマリ・ウィルソンの「マリのピンクのラヴソングJust What I Always Wanted」です

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Said he was giving me a taffeta dress
That's just what I've always wanted
And then he said he'd give me more or less
Of just what I've always wanted

But you don't give me anything and I don't ask you
Just yourself is good enough

That's just what I've always wanted
Just what I've always wanted
Hoh-oh, just what I've always wanted

He said he'd make of me a millionaire
That's what I've always longed for
Not one Picasso, he'll give me a pair
Just what I've always dreamed of

But you don't give me anything and I don't ask you
Just yourself is everything

That's just what I've always wanted
Just what I've always wanted
Hoh-oh, just what I've always wanted

I've got a mink from Paris, a ring from Rome
A whole new wardrobe in my home
A tune from Teddy, an Ashworth snap
These are the landmarks on my map

I've got just what I always wanted
She's got just what she's always wanted
But you don't give me anything and I don't ask you
Just yourself is everything

That's just what I've always wanted
Just what I've always wanted
Hoh-oh, just what I've always wanted
Hoh-oh, just what I've always wanted
Hoh-oh, just what I've always wanted

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タフタのドレスをあげるよと彼が言った

ずっと欲しいと思っていたものなの

それから彼はこう言った だいたいあげられるよ

君が欲しいと思っていたものならね

 

だけど、私に何もくれなくても おねだりなんてしないわ

ただあなたでいてくれるだけで十分よ

それが、ずっと私が欲しかったもの

ずっと私が欲しかったもの

彼は大金持ちにしてあげるって言った

それは、私がずっと憧れていたもの

ピカソも一枚じゃなくて、二枚ペアでくれるの

それは私が夢見てきたこと

だけど、私に何もくれなくても おねだりなんてしないわ

ただあなたがいることがすべてなの

 

それが、ずっと私が欲しかったもの

ずっと私が欲しかったもの


パリで買ったミンクのコートや、ローマで買った指輪も持っている
お家には新品のワードローブ

テディの作った歌 ピーター・アシュワースのスナップ写真

みんな私にとって特別なもの

 

私はずっと欲しかったものを持っている

彼女はずっと欲しかったものを持っている

だけど、あなたが何もくれなくても おねだりはしない

ただあなたがいることがすべてなの

 

それが、ずっと私が欲しかったもの

ずっと私が欲しかったもの            (拙訳)

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 1980年代前半のイギリスで、印象的なビーハイブ・ヘアと、60年代ポップスを80年代のシンセ・サウンドでリメイクしたような楽曲で人気だったのがマリ・ウィルソン。

 

 現在も精力的に活動をしている彼女はロンドンのニースデンに生まれ、”ニースデンのクイーン・オブ・ソウル”というキャッチコピーを自身につけています。

 

 10代の2年間にニューヨークで過ごして、そこで聴いたモータウンフィラデルフィア・ソウルが彼女のベースになっています。

 

 彼女の音楽を支えたのがトット・テイラー。

    彼は1970年代に「A Special Moment」や「Advertising」と言ったバンドでメジャー契約をしますが成功せず、80年はじめには”雇われソングライター”として活動をしていました。

  そしてある日、彼のデモテープ用のシンガーとしてやってきたのがマリ・ウィルソンだったのです。

 

 そして、彼が曲を作り、ザ・イマジネーションズというというバックバンドでピアノを弾くというかたちで彼女のサポートを始めました。

 

 1980年にマリ・ウィルソン&ザ・イマジネーションズの名義で「Love Man」という曲でデビューします。

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 翌1981年にリリースした「Dance Card」

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 こちらはトット・テイラーとポール・キンダーが設立したレーベル”コンパクト・オーガニゼーション”からリリースしています。

 ”コンパクト・オーガニゼーション”は、デザイン性を重視したポップなプロダクツをリリースし、日本の渋谷系アーティストの大きなインスピレーションになりました。

 

 1982年「BEAT THE BEAT」が初のチャート入り(全英59位)します。

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  続く「Baby,It's True」も全英42位になり、その次にリリースされたのがこの「マリのピンクのラヴソングでした。

 

 ここでプロデューサーとしてサウンドを生み出したのが、テクノ・ポップのパイオニアの一人、トニ・マンスフィールドです。a-haの「テイク・オン・ミー」の最初のヴァージョンを作った人としてこのブログでも紹介していました。

 

 この人選がピタッとはまったわけです。トットの職人的なポップスのソングライティングと、80年代らしいトニのテクノ・サウンドが絶妙に融合したのだと思います。

 そして、その音楽と彼女の独特のスタイリングが大きな相乗効果を生み出しのです。

 

 彼女はこう回想しています。

「みんなおしゃれしていなかったのよ。パンクが終わったばかりで。十二人のバンドが全員正装しているのは普通のことじゃなかった。でもそのあとは、もちろん、ユーリズミックスとかABCとか、バンドがおしゃれするようになったわ」

( December 2011 issue of Beige)

 

 そのビジュアルを最もアピールできるのはTVで、冒頭のビデオがそうですが、イギリスの国民的音楽番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」に出演したのがヒットの引き金になりました。

 また、当時のエピソードでこんなことがあったといいます。

「1982年に私のマネージャーだったトット・テイラーが”イブニング・スタンダード”紙に電話して、デビッド・ボウイHMVでマリ・ウィルソンのレコードを買っているところを目撃されたと伝えたところ、それが記事になったのよ」

( December 2011 issue of Beige)

 

  そういうことが重なって彼女の”キャラ”が大衆にインパクトを残し、息長く芸能人として生き残ってゆくことに繋がっていったのでしょう。

 

 その後も、ミュージカルにいくつも出演し、ボーイ・ジョージと共演したり、彼女のアイドルの一人であったダスティ・スプリングフィールドを演じる機会もあったそうです。

 コンスタントにアルバムも発売していますが、個人的に気になったのが2012年のカバー曲集「Cover Stories」。

    ロネッツ「ビー・マイ・ベイビー」プリテンダーズ「ドント・ゲット・ミー・ロング」、ダスティ・スプリングフィールドの「二人だけのデート」といったポップな楽曲をしっとりバラードで歌うという企画です。

 

 最後はそのアルバムから、彼女と同じ時期に、同じような”オールディーズ・リバイバル”スタイルで大ヒットを飛ばしたトレイシー・ウルマンの「夢見るトレイシー(They Don't Know)」を。

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