まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「スムース・オペレーター(Smooth Operator)」シャーデー(1984)

 おはようございます。

 今日はシャーデーの「スムース・オペレーター」です。

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Diamond life lover boy
He moves in space with minimum waste and maximum joy
City lights and business nights
When you require streetcar desire for higher heights

No place for beginners or sensitive hearts
The sentiment is left to chance

No place to be ending but somewhere to start


No need to ask
He's a smooth operator
Smooth operator
Smooth operator
Smooth operator

 

Coast-to-coast, L.A. to Chicago: Western male

Across the North and South,to Key Largo love for sale

Face-to-face, each classic case
We shadow box and double-cross
Yet need the chase

A license to love, insurance to hold
Melts all your memories and change into gold
His eyes are like angels'; his heart is cold

No need to ask
He's a smooth operator
Smooth operator
Smooth operator
Smooth operator 

Coast-to-coast, L.A. to Chicago: Western male
Across the North and South,to Key Largo love for sale

Smooth operator
Smooth operator,,,

 

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ダイアモンドのような人生を生きる 魅惑的な男

無駄のない身のこなしと、喜びに満ちた様子で立ち振る舞う

街の灯 ビジネスの夜

それはあなたが、より高みを目指して

欲望という名の電車を求めるとき

 

ビギナーやセンシティヴな人の居場所なんてない

感傷は偶然に任せて

終わりの場所はなくても始まりの場所はどこかにある

たずねるまでもなく

彼はやり手なの、スムースになんでもこなす人

西海岸から東海岸、L.Aからシカゴまで カウボーイのように

北から南 キー・ラーゴまで 愛を売り歩く

 

差し向かいで、古典的なパターン

二人はだまし合い、そして裏切る

それでも追いかけてしまう

愛のライセンス 抱きしめるための保険

あなたの思い出は全て溶けて、黄金に変わる

彼の瞳は天使のようで その心は冷たい

たずねるまでもなく

彼はやり手なの、スムースになんでもこなす人

西海岸から東海岸、L.Aからシカゴまで カウボーイのように

北から南 キー・ラーゴまで 愛を売り歩く

 

彼はやり手なの、スムースになんでもこなす人
                         (拙訳)

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 シャーデーは女性ヴォーカリストシャーデー・アデュを中心としたイギリスのバンドです。

   アデュは本名をHelen Folasade Aduといい、1959年にナイジェリアのオヨ州イバダンに生まれています。ミドルネームの”Folasade”は”富は王冠を授ける”という意味なのだそうです。 父はナイジェリア人の経済学講師で、母は白人のイギリス人で看護師だったそうで、ふたりはロンドンで出会い結婚してナイジェリアに移住しました。しかし、彼女が4歳の時に両親は離婚し、その後彼女は母親に連れられてイギリスに帰国します。

 

「私の母は大変に苦労をしました。彼女は1960年代始めという時代に、褐色の肌の子供を二人抱えた白人女性でした。そして、スーツケース一つでイギリスに帰ってきて、住むところさえありませんでした。本当にどこにも」

                   (May 1985 issue of SPIN)

 結局は祖父母を頼ることになり、そこで彼女は育ちました。

 彼女は音楽に夢中になり、その中でもダニー・ハサウェイカーティス・メイフィールド、ビル・ウィザースといったニューソウルのアーティストを特に好んだようですが、学校では音楽ではなくファッションを学んでいました。

 

 しかし、友人の誘いで歌を歌うようになり、曲作りにも興味を持つようになります。

そして、”Pride"というジャズ・ファンク・バンドのメンバー募集に応募し、そこでギター/サックス奏者のスチュワート・マシューマンと出会います。

 

 こちらが”Pride"の動画

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 二人はプライドでツアーしながら、一緒に曲を書くようになります。

 彼女のレコード・コレクションの中から、カーティス・メイフィールドなどのR&B以外にもチェット・ベイカーニーナ・シモンといったアーティストを参考にしていたようです。

 

 先にあげた動画を見てもわかる通り、バンドの中で彼女の存在感は際立っていて、ライヴでは彼女がジャジーな曲を歌うコーナーが作られるようになっていったそうです。

 その中で披露されたうちのひとつが、この「スムース・オペレーター」で、彼女とPrideのメンバー、レイ・セイント・ジョンが共作した曲でした。

 

 そして、複数のレコード会社が興味を持ち始めましたが、どこもPrideではなく、彼女をソロで契約したがっていました。

 彼女はソロでの契約を拒み、メンバーも一緒という条件を唯一飲んだEpicレーベルと契約することにします。そして、彼女とスチュワート、Prideのベーシストだったポール・スペンサー・デンマン、それに同じクラブによく出演していたキーボーディストのアンドリュー・ヘイルを加えて新しいグループを結成します 。バンドは彼女の名前からシャーデーと名付けられました。

 

 そして、彼女とスチュワートが共作したファースト・シングル「ユア・ラヴ・イズ・キング」がいきなり全英6位のヒットになります。

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 シャーデーというバンドの面白いところは、ジャジーな音楽をやっているのに、ジャズの素養のあるメンバーが一人もいないということなんです。

 シャーデー・アデュが愛し、かつ彼女にぴったり合った音楽を、メンバーが一生懸命やっていたんですね。

 

 彼女の音楽を、例えばアメリカの凄腕ジャズ・ミュージシャンが演奏していたら、当然クオリティは上がったでしょうし、それなりに売れたでしょうが、ここまでの大ヒットにはならなかったように僕には思えます。

 きっと、ポップスとクロスオーヴァーするようなフレッシュでピュアな感じは失われたでしょうし、バンドが上手すぎず彼女をリスペクトしていたからこそ、シャーデー・アデュの個性もより際立ったのだという気がします。

 

 この当時のレコーディングで、彼女たちはコントロール・ルームを真っ暗にしてメンバー全員でリスニング・セッションをしていたそうです。かけたレコードは、レイ・チャールズ「Don't You Love Me Anymore」、ギル・スコット・ヘロン「Pieces Of A Man」、マーヴィン・ゲイ「トラブル・マン」、ビリー・ホリデイ「奇妙な果実」、ニーナ・シモンのアルバムなど、だったそうです。

 

 過去の偉大な作品と精神的に”シンクロ”しようとしていたのでしょうか。でも、こういう真摯で先人への敬意をしっかり感じさせる行動は、作品にはっきりとは現れなくても、知らぬ間に聴き手に伝わって”感動の質”に影響を与えるものだと僕は思います。

 

 そのせいもあってか、R&Bの本場アメリカで、彼女たちは大成功を収めます。「スムース・オペレーター」はイギリスでは最高19位でしたが、アメリカでは5位、R&Bチャートでも5位を記録しています。

 R&Bのジャンルで、イギリスのアーティストが活躍することは非常に稀で困難なことです。そんな中でシャーデーはその高い壁を超え、しかも音楽シーンの流れを変えるチェンジ・メイカーにもなりました。

 

 シンセやドラムマシーンが前面に出た賑やかなポップスやR&Bの人気がおさまり、彼女たちのような落ち着いて洗練された音楽をやるアーティストが増えていったのです。

 

 最後は2011年の彼女のライヴ動画を。このツアーは大盛況で、2010年のアルバム「ソルジャー・オブ・ラヴ」の売り上げと合わせて、シャーデーはアデルを抑えて2012年のアメリカで最も売り上げの大きいイギリス人アーティストになったのだそうです。

 ライヴの演出を見ても、シャーデーというのはいちアーティストというより、一つの時代のイメージそのものなんだと思えます。都会がおしゃれで華やかだった時代の。

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popups.hatenablog.com

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