まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「チャンシズ・アー(Chances Are)」ベン・シドラン(1972)

 おはようございます。

 今日は小粋に(?)ベン・シドランの「チャンシズ・アー」を。


Chances Are

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You’re my man You got no plan, got no leads

You’re just sewing seeds Chasing dreams

So it seems that Chances are, You’ve got to run away

Run away Chances are, chances are

 

I like your face  Got no style, got no grace

But in their place  You got heart

And that’s your start to move

 

They don’t care what you do

As long as they approve

They don’t care what you’ve been through

They don’t care if you hang with the others

or Stand by your brothers

 

The choice is yours The choice is yours

Find your groove And now and then bring a friend

And if you’re in need, simply send

A single word of love

Chances are You’ve got to run away Run away...

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オマエは大事な男さ 計画もなくて、ツテもないのに

ただタネをまいて 夢を追いかけている

そして、どうやら、ひょっとしたら 逃げ出さなくっちゃね

 

オマエの顔は好きだよ 上品じゃないし 優雅でもないけど

だけどその代わりに オマエにはハートがある

だからそういうといころから始めなきゃ

 

オマエがやることなんてヤツらは気にかけちゃいない

ヤツらが許してくれる限りは

オマエがどんな風に生きてきたかなんてヤツらは気にかけないし

誰かとつるもうとが 兄弟を助けようが かまわないんだ

 

オマエのグルーヴを見つけよう

時々 友達を連れてくるんだ 

もし必要ならば、ただ愛の言葉をひとつ贈るだけでいい

ひょっとしたら 逃げ出さなくっちゃね           (拙訳)

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 ベン・シドランはジャズをベースに、ピアニスト、シンガー・ソングライター、プロデューサー、作家、司会者とさまざまな肩書を持つ才人。派手な成功とは無縁ですが、息長く活動をつづけ、日本にもファンが多くいるアーティストです。

 

  彼はウィスコンシン州で育ち大学時代にアーデルズというブルース・バンドにキーボーディストとして参加します。アーデルズはスティーヴ・ミラー・バンドの前身ともいわれるバンドで、ミラーの他にボズ・スキャッグスも在籍していました。

 ミラーとボズはシカゴに移りバンドを続けますが、ベンは大学に残り英文学の学位を取り、卒業後は博士号を取るためにイギリスの大学に入学し、イギリスでも音楽活動をしていたようです。

 

 そしてアメリカの戻ると、1969年ボズ・スキャッグスと入れ替わるようにしてスティーヴ・ミラー・バンドに参加し、ソング・ライティングにも参加します。

(1968年のスティーヴ・ミラー・バンドのデビューアルバム「Children of the Future」 でも彼は1曲ハープシコードを弾いています)

 

 ティーヴ・ミラーと彼が共作した「Going to the Country」(1970年全米69位)


03-Steve Miller Band - Going to the Country

 そして、1971年にファースト・アルバム「Feel Your Groove」をリリース。レコーディングには盟友ボズ・スキャッグスも駆けつけました。

 ボズ・スキャッグスがギターを弾いているタイトル曲「Feel Your Groove」


Feel Your Groove - Ben Sidran

 

 その次のアルバム「I Lead a Life」に収録されていたのがこの「チャンシズ・アー」でした。

 そして「Feel Your Groove」も「チャンシズ・アー」もニック・デカロがストリングス・アレンジを手がけています。AORシーンの重要人物となるる両者がここで共演していたわけです。それを考えると、僕は「チャンシズ・アー」にAORの萌芽のようなものを感じてしまいます。

  同じ年にベンはスティーヴ・ミラー・バンドをプロデュースを任され、そのアルバム「エデンからの旅(Recall the Beginning...A Journey from Eden)」で、ストリングスとホーンのアレンジでニック・デカロを起用し、バンドの世界観に新たな風を吹き込もうと試みました。

 

 ソロ・アーティストとしてはAORと最もクロスオーバーしていた1970年代後半(レーベルはアリスタ)が一番精力的だったでしょうか。特に「The Doctor is In」というアルバムはベン自身が最も気に入っているものです。


Ben Sidran - Song For A Sucker Like You

 

 その後、コンスタントにレコーディングやプロデュースをしながらも、1980年代はラジオのジャズ番組やテレビ番組のホストをつとめ。90年代は自身のレーベル”GO JAZZ”に力をそそぎ、ジョージィ・フェイムの作品を始めとして10年ほどで約50枚のアルバムを制作しています。

 そして、2000年代は本を書き、大学で講義を行い、息子とレコーディングをしていたそうで、ある新聞は彼のことを”現代社会に漂流してきたルネッサンス期の知識人”と評したそうです。

 彼は自分の音楽のエレメントで最も重要な者は?という問いに対して

「グルーヴ、スウィング、ユーモア、声」

 と回答しています。(AOR AGE vol.12)

 けっこうどれも、今の音楽にはかけているような気がしますが、、、。

 

 

 さて、彼がサックス奏者ジョニー・グリフィンバルセロナでレコーディングしているときに、デモテープを持ってきたシンガー志望の女性がいました。それが、クレモンティーヌです。彼女の父親が運営するレーベルから彼女とベンの共演作品(Spread Your Wings 1988年)が作られ、その中に「チャンシズ・アー」も収録されています。


Chances Are - Ben Sidran & Clementine/1988

 

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