まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「リズム・ネイション(Rhythm Nation)」ジャネット・ジャクソン(1989)

 おはようございます。

 今日はジャネット・ジャクソンの「リズム・ネイション」です。


Janet Jackson - Rhythm Nation (Official Music Video)

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With music by our side
To break the color lines
Let's work together
To improve our way of life
Join voices in protest
To social injustice
A generation full of courage
Come forth with me


People of the world today
Are we looking for a better way of life
We are a part of the rhythm nation
People of the world unite
Strength in numbers we can get it right
One time
We are a part of the rhythm nation

This is the test
No struggle no progress
Lend a hand to help
Your brother do his best
Things are getting worse
We have to make them better
It's time to give a damn
Let's work together

People of the world today
Are we looking for a better way of life
We are a part of the rhythm nation
People of the world unite
Strength in numbers we can get it right
One time
We are a part of the rhythm nation

Say it people, say it different
Say it if you want a better way of life
Say it people, say it different
Say it if you want a better way of life

People of the world today
Are we looking for a better way of life
We are a part of the rhythm nation
People of the world unite
Strength in numbers we can get it right
One time
We are a part of the rhythm nation

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人種差別を打ち壊すため 音楽をすぐそばにおいて

私たちの生活をより良くするために 一緒に行動しよう

社会の不公平さに抗議するために 声を合わせよう

勇気に満ちた世代よ 私と一緒に立ち上がろう

 

今の世界の人たち 

みんな、より良い生き方を求めているでしょう

わたしたちはリズム・ネイションの一員なの

世界の人たちが大勢で力を結集させたなら うまくやれる

わたしたちはリズム・ネイションの一員なの


これは試練なの

必死にがんばらなければ 前へは進めない

助けの手を差し伸べて

仲間は全力を尽くしている

状況はどんどん悪くなっている

それを立て直さなくちゃいけないの

関心を持つべき時よ 一緒に行動しよう

今の世界の人たち 

みんなより良い生き方を求めているでしょう

わたしたちはリズム・ネイションの一員なの

世界の人たちが大勢力を結集させたら うまくやれる

わたしたちはリズム・ネイションの一員なの

 

声に出して、みんな 声に出して、それぞれ違った言葉で

声に出して、もっといい生活を求めているなら、、

 

今の世界の人たち 

みんなより良い生き方を求めているでしょう

わたしたちはリズム・ネイションの一員なの

世界の人たちが大勢力を結集させたら うまくやれる

わたしたちはリズム・ネイションの一員なの        (拙訳)

 

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 ずいぶん前の曲になりましたから、今となればいたって普通にこのPVを見れますが、

リアルタイムでは本当に驚きました。聴いたことのないようなサウンドと、見たことのないような”群舞”、この当時のダンス好きたちはみんな夢中になったはずです。

 ダンス・ポップの玉座にずっと君臨していた兄マイケル・ジャクソンからその座を奪ってしまうんじゃないかと思うほどの勢いと凄みを感じたものです。

 ジャネット・ジャクソンとプロデューサーのジャム&ルイスがまさに”天下を取った”瞬間だったと僕はとらえています。

 

 

  ジャネット・ジャクソンは10人兄妹の末っ子として生まれました(ちなみに兄マイケル・ジャクソンは8歳年上で上から8番目の子供)。

 全米で有名な芸能家族だったおかげで、彼女も7歳でカジノのショーでパフォーマンスし、10歳からTVに出演、その後は女優としてキャリアを歩み始めます。

 そしてジャクソン兄妹をマネージメントする父親の売り込みによって、16歳のときにレコード・デビューを果たしました。

    1982年のアルバム「ヤング・ラヴ(原題:Janet Jackson)」は当時のR&Bシーンで大人気だったレネ&アンジェラとジャクソンズの後追い(?)兄弟グループ、シルヴァーズのフォスター・シルヴァーズがプロデュースしています。

 

 レネ&アンジェラが手がけたデビュー曲「ヤング・ラヴ」


Young Love

 

 そして、1984年のセカンド「ドリーム・ストリート」は、ドナ・サマーを大ヒットさせたジョルジオ・モロダーとピート・ベロッテがメインになって制作しています。彼女はTVドラマ「フェーム」に出演していたので、映画「フェーム」で有名になりモロダーの「フラッシュダンス」で大ブレイクしたアイリーン・キャラあたりの路線を想定していたのかもしれません。

 

モロダー&ベロッテがプロデュースし、クリフ・リチャードがデュエットした「Two To The Power Of Love」


Two To The Power Of Love

 興味深いのはこのアルバムで、プリンスの”おかかえバンド”だった”タイム”のギタリスト、ジェシー・ジョンソンが2曲プロデュースで参加していることです。彼は同じ1984年に彼女と同じA&Mレコードからソロデビューをしています。

 

 この2作はセールス的に成功しなかっただけではなく、彼女としても乗り気のしないプロジェクトでした。すべて、父親のジェセフが仕切っていて、のちに彼女はこの時期の作品を「父親のためにやった」と語っています。

 父親の束縛から逃れたいと思った彼女は、父親との契約を解消しあらたにA&Mレコードのジョン・マクレインに自分の仕事を委ねることにします。

 そして、彼が連れてきた新たなプロデューサーが、ジャム&ルイスだったのです。ジャム&ルイスはジョンにジャネットと仕事をしてみたいと伝えていたのです。ちなみに、ジャム&ルイスはジェシー・ジョンソンと一緒にザ・タイムというプリンスのお抱えバンドをやっていました。

 

 ジミー・ジャムが彼女と最初に仕事をすることになったときにこう思ったそうです。

「僕たちはジャネットは素晴らしい歌声を持っていると感じていた。だけど彼女のレコードからは彼女の”attitude"が失われていたことを僕たちはわかっていたんだ」

 

 キーワードとして、”attitude"という言葉を使っています。態度、心構え、気持ちなどと訳される言葉ですね。TVで女優をやっていた時の彼女には”attitude"があったのに、今まで出したアルバムには”attitude"がない、と思ったそうです。

 その作品における”強い自分の意思”ということじゃないかと、僕は思います。それまでの彼女は、出来上がったものをあてがわれていただけだったわけですから。

 

 そこで、ジャム&ルイスはまず彼女を自分たちの本拠地であるミネアポリスのスタジオに招き、そこで創作のプロセスに最初から関与させようと決めたそうです。

 すでに、当時彼らは独自の”売れるサウンド”を作り上げていたのですが、ただそこに彼女をのせるのではなく、もっと深くコミットさせたほうが作品のクオリティが上がるとジャッジしたわけなんですね。

 そして、彼女の意欲に火がつき制作に没頭することによって、出来上がったのがアルバム「コントロール」(1986)でした。

 

「コントロール」からのファースト・シングル「What Have You Done for Me Lately」(全米4位)


Janet Jackson - What Have You Done For Me Lately (Official Music Video)

 アルバム「コントロール」は全米TOP5入りしたシングルが5曲も生まれる大ヒットになりました。

 

 そしてその次にジャネットとジャム&ルイスが生み出したのがアルバム「リズム・ネーション1814」でした。

  大ヒットした「コントロール」の続編的アルバムではなく、まったく新たな世界を生み出そうとした、当時としたらかなり”攻めた”作品だったと言えます。

 

  ジミー・ジャムはこう回想しています。

 「ジャネットが”リズム・ネイション”というコンセプトを思いついたんだ。それはいろいろTVを見たことが大きく関係している。僕らは熱心なTV視聴者なんだ、MTVを見たらCNNという風に、そこではいつも無茶苦茶なことが起こっていた、決していいニュースじゃなくて、いつも悪いニュースなんだ」

 「ある晩ディナーの時、ジャネットが”リズム・ネイション”と言ったんだ、それを僕がテリーに言うと、彼は "We are part of the rhythm nation."というメロディを歌ったんだ、だから続けて僕は"The people of the world today, searching for a better way of life"と口に出し、ジャネットが歌う、”リズム・ネイション”って。そういう風に全部一緒になって出てきたんだ」

 

 

  「リズム・ネーション1814」は人種の壁を超えた”リズム国家”というコンセプトのもと、メッセージ色の強い曲も含まれる内容になります。1814はアメリカ国歌「The Star-Spangled Banner」が作られた年なのだそうで、「リズム・ネーション」という曲は”リズム国歌”の国歌というイメージなのだそうです。

  そして、この曲の強力なビートは、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの「サンキュー」にインスパイアされています。


Sly & The Family Stone - Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin) (Official Audio)

「”Thank You"は僕の一番好きな曲の一つで、ギターのリフのファンキーさがいいんだ。僕はレストランにいたんだ、ジャネットと一緒だったかもしれないけど、誰と一緒だったかは思い出せない。だけど、店にはアンビエントなBGMが流れていて、すると突然m"Thank You"のギターのリフが流れてきただ”ダ、ジン、ダ、ジン、ジン”てね。僕は今までそれを100万回は聴いてきたんだけど、初めてその時曲全体の流れから外れて、それが僕の耳をとらえたんだ。それですぐに僕は”スタジオにすぐ戻って、その部分をループさせて曲にしないと”と言ったんだ。そのときはそれが「リズム・ネイション」になるなんて思いもしなかったけど、そのトラックはすごくいいと思った。ただ他か抜きん出ていて、アイディアがスパークしたものだって」

         (ジミー・ジャム:Songfacts)

 

 このアルバムはミネアポリスのスタジオに7ヶ月間、3人でこもって作り上げたそうです。このタイミングで、ジャム&ルイスは自分のスタジオをリニューアルし最新の機材を導入し、意欲的に新たなサウンドを作る試みをしました。「コントロール」とは全く違うコンセプトのアルバムだったので、彼らはポップさではなくワイルドで攻めたサウンドを意図的に作り出しています。そして、ジャネットは相当な時間ボーカル・ブースにこもって、バック・コーラスを含む膨大な量のボーカル・テイクを一人で歌いきったたそうです。

 その結果、「リズム・ネイション1814」は全米1位のシングル4曲をふくむ7曲がTOP5入りという「コントロール」をしのぐ大ヒットアルバムになりました。

 

 ジミー・ジャムによると彼女との仕事が成功した大きな理由として、彼女はジャンルにとらわれずいろんな音楽に寛容で、ジャム&ルイスのアイディアに一切制限をかけなかったことということをあげています。

 また、この頃が自分たちが最もクリエイティヴな時代だったと回想しています。

 

 サウンドの流行はめまぐるしく変わるものですから、この曲もリアルタイムで聴いたよいうな”衝撃”や”新鮮さ”はもはや失ってしまったのかもしれませんが、アグレッシヴな創作意欲や気迫、勢いのようなものは今も十分感じ取れます。そして、それが彼女の作品の中でこの曲を特別なものにしているように思います。

 

 

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