まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ブラック・オア・ホワイト(Black or White)」マイケル・ジャクソン(1991)

 おはようございます。

 今日も、マイケル・ジャクソン。「ブラック・オア・ホワイト」を。


Michael Jackson - Black Or White (Official Video - Shortened Version)

 

 ”僕の彼女を土曜のパーティーに連れていったんだ

  「ボーイ、あの娘はおまえの連れかい?」

  「僕たちは一心同体なんだ」

 

    僕は奇跡を信じてる そして今夜まさに奇跡が起こったんだ

 

    だけど、もし君が僕の彼女のことを想っているとしたら

  君がブラックかホワイトかなんて関係ないことなんだ

 

  僕のメッセージが「SUN」の土曜版の載っている

     僕はそんなに大したヤツじゃないって

        彼らに言わなければいけなかった

  そして、平等について話した

  君が正しかろうが間違っていようが平等、それが真実だって

 

  だけど、もし君が僕の彼女のことを想っているとしたら

  君がブラックかホワイトかなんて関係ないことなんだ

 

  こんなひどいヤツにはうんざりだ こんなことにはうんざりだ

        ひどくなる状況を取り繕うなんてもうこりごりだ

        君の仲間なんて怖くない マスコミを敵に回しても怖くない

  誰も味方にならなくても怖くない

  ひどい状況になっていっても

 

        ギャングやクラブや国家を庇護することが

  人間のつながりに深い悲しみを生み出すのさ

        地球規模の権力争いさ 俺なら両方の言い分を聞いてみたい

  見るがいい 民族の争いじゃない 

  ただの土地の奪い合い メンツの潰し合い

        おまえのルーツがある場所こそがおまえのいるべき場所 

  オレはかつての輝きが濁ってゆくのを見てきた

  オレは有色人種として生きていきたくないんだ

 

        泥を蹴って僕の目に入れておきながら 僕に賛成だなんて言わないでくれ

 

  だけど、もし君が僕の彼女のことを想っているとしたら

  君がブラックかホワイトかなんて関係ないことなんだ

 

  僕は言ったよね もし君が僕の彼女のことを想っているとしたら

  君がブラックかホワイトかなんて関係ないことなんだ

 

  だけど、もし君が僕の彼女のことを想っているとしたら

  君がブラックかホワイトかなんて関係ないことなんだ

 

  それはブラック それはホワイト

        それは彼らにしたら辛いやり方さ

  それはブラック、それはホワイト、、、”     (拙訳)

 

 

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I took my baby on a Saturday bang
Boy is that girl with you
Yes we're one and the same

Now I believe in miracles
And a miracle has happened tonight

But, if you're thinkin' about my baby
It don't matter if you're black or white

They print my message in the Saturday Sun
I had to tell them I ain't second to none

And I told about equality and it's true
Either you're wrong or you're right

But, if you're thinkin' about my baby
It don't matter if you're black or white

I am tired of this devil
I am tired of this stuff
I am tired of this business
Sew when the going gets rough
I ain't scared of your brother
I ain't scared of no sheets
I ain't scared of nobody
Girl when the goin' gets mean

Protection
For gangs, clubs, and nations
Causing grief in human relations
It's a turf war on a global scale
I'd rather hear both sides of the tale
See, it's not about races
Just places Faces
Where your blood comes from
Is where your space is
I've seen the bright get duller
I'm not going to spend my life being a color

Don't tell me you agree with me
When I saw you kicking dirt in my eye

But, if you're thinkin' about my baby
It don't matter if you're black or white

I said if you're thinkin' of being my baby
It don't matter if you're black or white

I said if you're thinkin' of being my brother
It don't matter if you're black or white


It's black, it's white
It's tough for them to get by
It's black, it's white, (x3) whoo

 

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 マイケル・ジャクソンクインシー・ジョーンズのプロデュースによる3枚のアルバム「オフ・ザ・ウォール」、「スリラー」、「BAD」により、世界最高のスーパースターの地位に駆け上りましたが、次のステップとして、クインシーの力なしでも大ヒットを飛ばせることを証明する必要がありました。

 

 それにあたり、マイケルは新しい血を取り入れながら、今までの流れも残す方針でプロデューサーを決めました。

 ”新しい血”とは”ニュー・ジャック・スウィング”の創始者として当時最も注目を集めていたプロデューサー、テディ・ライリーのことです。

  

  そして、今までの流れとは、クインシー・ジョーンズの”片腕”的存在のエンジニアとしてマイケルの「オフ・ザ・ウォール」「スリラー」「BAD」のエンジニアも手がけたブルース・スウェーデン。彼がエンジニア兼共同プロデューサーに一人になっています。

 ちなみに、さかのぼれば、フォーシーズンズの「恋のヤセがまん(Big Girl Don't Cry)」のエンジニアも手がけているので相当なキャリアの持ち主ですね。

   彼は残念ながら先月の16日に亡くなってしまいましたが、クインシーは”この音楽ビジネスで疑う余地もなく絶対に最高のエンジニアだ”とコメントしています。

 

 テディ・ライリー、ブルース・スウェーデンともうひとりマイケルの共同プロデューサーに抜擢されたのがビル・ボットレルで、彼もまたエンジニアです。

 

 ビルはジェフ・リンと知り合いE.L.Oのエンジニアとして「タイム〜時へのパスポート」(1981)から関わるようになり、マイケルとはジャクソンズの「ビクトリー」(1984)で仕事をしています。

 アルバム「BAD」の曲は、マイケルが自分のスタジオを使いビルのエンジニアでデモを作り、それをクインシーとブルースが最終形にするという流れで進行したといいます。

 考えてみると、マイケルは”脱”クインシーを図ってもエンジニアは変えなかったわけですね。しかも、逆に共同プロデューサーにまで抜擢しました。

 それだけ音楽制作において、エンジニアというのは”要”となる重要な仕事なんですね。

 

 ビルはこう発言しています。

「マイケルは<BAD>のセッションの終盤、次のアルバムのプロデューサーに僕を指名すると言ってきた。僕らが共同で作った曲は、そもそもマイケルが口ずさんだメロディやグルーヴから生まれたものだ。自分のアイディアを僕に伝えるとマイケルはスタジオを出てゆき、残った僕がリズム・マシンやサンプラーをフル活用してアイディアを発展させていった。」

     (「サウンド&レコーディング・マガジン」2005年9月号)

 

 マイケルも曲を作りに参加しながらも外部から600曲も集めてセレクトされた「スリラー」に対し、「BAD」は基本マイケルの自作曲で構成されたアルバムでした。その際、楽器や機材を思うように扱えなかったマイケルのために、彼のアイディアを具現化させる役割で認められたのがビルだった、というわけなんですね。

 

 そしてこの「ブラック・オア・ホワイト」もマイケルとビルの共同作業で生まれた曲でした。

 

「ウエストレイク・スタジオ(註:「スリラー」「BAD」を録音したスタジオ)で仕事を始めてからマイケルがはじめて口ずさんだメロディが後の<ブラック・オア・ホワイト>へと発展するアイディアとなった。その時口ずさんだのはメイン・リフだったよ。どの楽器で演奏するか指定はなかったので手近にあったギターで、マイケルのハミングに合わせてリフを弾き、そのまま録った。リフを録り終えると、次にマイケルはリズムのアイディアを口ずさんでくれた。マイケルは音楽的な直感がずば抜けて鋭い。精密とでも言おうか、細部のディテールまで作り上げられたレコードが既に頭の中に出来上がっているんだ。それを周りの人間に伝え、現実のサウンドにしてもらおうとしている」

                  (同上)

 ビルいわく、この曲の感想にヘヴィメタのギターを入れることも彼が思いつき、ギタリストに対してメロディ、リズム、コード全部のアイディアを口ずさんで教えたそうで、それが非常に上手く「レコードに収められるそのままのサウンドを口ずさんで教えている感じなんだ」(同上)そうです。

 

 ブラックであろうとホワイトであろうと肌の色なんて関係ない、と声高に訴えている曲ですが、歌詞のメッセージだけではなく、音楽的にも”白人らしい”ヘヴィ・メタと、黒人の生んだラップを、1曲の中に見事に共生させていることにも注目したいと思います。

 

 この曲の意外なカバー。ブラジル音楽界の至宝カエターノ・ヴェローゾのライヴ盤「ポートレイト(Circuladô Vivo)」に収録。メドレーの前半部の短いものなんですが、これを聴いて「ブラック・オア・ホワイト」っていい曲だなって気づきました、、、。

 


Black Or White / Americanos (Live 1992)

 

 

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