まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ベンのテーマ(Ben)」マイケル・ジャクソン(1972)

 おはようございます。

 今日もマイケル・ジャクソン。彼が14歳の時の全米NO.1ヒット「ベンのテーマ(BEN)」です。


Ben

 

 ”ベン、僕たち二人、もう探す必要はないんだ

  お互い探していたものを見つけたんだ

     僕だけのって言える友達ができたから

  もうひとりきりじゃないんだ

  そして 友達の君も 僕という友達ができたことに気づくよ

 

   ベン、君はいつもあちこち走り回っているね

   自分の居場所がないって感じているんだね

      だけど振り返ってみれば そこに見つけたものが好きになれなくても

   君には行くべき場所があるって何かが教えてくれるはず

  

  僕はよく「僕は」とか「僕を」と言っていた

  でも今はそれが「僕たちは」や「僕たちを」になったんだ

 

  ベン、ほとんどの人が君を追い払うかもしれない

  僕は彼らの言うことなんかに耳は貸さないよ

  みんな僕のように君のことを見ていないんだ

  そうしてほしいと心から願っているよ

  もし彼らがベンみたいな友達ができたら

  考え直してくれるはずだよ

 

  ベンのように ベンのように、、、  ”(拙訳)

  

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Ben the two of us need look no more
We both found what we were looking for
With a friend to call my own I'll never be alone
And you my friend will see you've got a friend in me
(you've got a friend in me)

Ben you're always running here and there
(here and there)
You feel you're not wanted anywhere
(anywhere)
If you ever look behind and don't like what you find
There's something you should know you've got a place to go
(you've got a place to go)

I used to say "I and me"
Now it's us now it's we
(I used to say "I is me")
(now it's us now it's we)

Ben most people would turn you away
(turn you away)
I don't listen to a word they say
(a word they say)
They don't see you as I do I wish they would try to
I'm sure they'd think again if they had a friend like Ben

Like Ben
Like Ben
Like Ben

 

Writer/s: Don Black, Walter Scharf

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  この曲は1972年に公開された映画「ベン」の主題歌でした。

 映画の方は見たことがなかったのですが、ネズミの映画だというのは聞いたことがありました。それで、今回あらためて調べてみると、ネズミが人間を襲うシーンがあるホラー/パニック映画の系統の作品でした、、。

 こんな純粋できれいな曲のイメージからは相当離れている感じがします。

 

 「ベン」は「ウィラード」という映画の続編にあたります。

「ウィラード」は27歳の社会性がなくネズミが好きな青年ウィラードがネズミの集団を使って人間を襲わせる話だったようで、公開当時はヒッチコックの有名な映画「鳥」の”ネズミ版”と表現されていたようです。「ウィラード」が意外に(?)ヒットしたためすぐさま作られたのが「ベン」でした。

 ウィラードが飼育したネズミの中でボス的存在だったのが”ベン”で、映画「ベン」ではネズミの大軍団を率いて人間を恐怖に陥れるベンと、心臓病を患う少年ダニーとの交流が描かれています。

 ちなみに、人間たちとの戦いで傷だらけになりながらダニーの部屋にたどりついたベンを、ダニーは手当てをしてあげるラストシーンでこの曲が流れます。

 

 CGの技術のない時代の映画ですので2本とも本物のネズミを撮影に使ったそうで、しかもそのネズミが大量に現れるわけで、YouTubeにあがっている予告編をちらっと見ただけで怖かったので、動画はここには貼り付けませんが、もし興味のある方はご覧になってみてください、、。

 

 さて、マイケルの歌う「ベン」と映画全体の音楽を手がけたのがウォルター・シャーフバーブラ・ストライサン主演のミュージカル映画「ファニー・ガール」を手がけたことで知られています。

  作詞を手がけたドン・ブラックは007シリーズで知られる作曲家ジョン・バリーとのコンビで知られていて(「ダイアモンドは永遠に」「黄金銃を持つ男」)「野生のエルザ」の主題歌「ボーン・フリー」も大ヒットしアカデミー賞の主題歌賞を獲得しています。

 

  この曲は最初はマイケルじゃなく、ダニー・オズモンドに話が行ったそうです。

 ダニーはマイケルと同い年で、ジャクソンズと同様に兄弟グループであるオズモンズのメンバーとしてティーンから大変人気がありました。しかし彼はツアー中でそのオファーを断ったため、マイケルにこの話が行くことになりました。

 

 ドン・ブラックはマイケルのことをこう思い出しています。

「彼は偶然LAで僕の家の近くに住んでいたんだ。14歳か15歳で、あらゆる種類の音楽にとても好奇心が旺盛だったんだ。彼は僕にフランク・レッサーが作って、映画「アンデルセン物語」で歌われた「inchworm」が一番好きな歌だと話してくれた。

 その頃の彼は本当に純粋だったと思います。苦悩や不安などがあるようには思えませんでした、マイケルはただのティーンエイジャーで、家に来て私たちと一緒に過ごしたり、プールで遊んだりしていました。妻と一緒に絵を描くこともありました。

 僕は彼の父ジョーのことをあまり好きではなかったと言わざるを得ない。彼はしつけが厳しいという評判だったし、彼は最終的にはマイケルとこれ以上接触するなら自分を通すようにと言ってきたんだ。それがそれまでの良好な友情の邪魔になってしまい、だんだんと疎遠になっていってしまったんだ」 

                     (BBC NEWS 2020 7月19日)

 

 ちなみに「inchworm」とは”シャクトリムシ”のことで、こんな感じの歌です。


Inchworm

 

 ドンはこの曲の歌詞について、ネズミの映画の曲ということのとまどいはあったようですが、チーズとかネズミ捕りとかが出てくるようなネズミの歌詞はとても書けないので、この映画のテーマにある”友情”について書くのがいいと決めたと語っています。

 

 そしてマイケル本人もこの曲をとても気に入っていたようで、なかでも彼が好きだったのはこの歌詞のパートだったそうです。

 

 ”I used to say "I and me"  Now it's us now it's we "

(今まではよく「僕は」と「僕を」と言っていた

  でも今はそれが「僕たちは」と「僕たちを」になったんだ)

 

 

  ホラー/パニックものでありながら、少年とネズミの純粋な友情も描かれているという”ノーマルじゃない”映画のために作られながら、この上なくピュアな名曲となった「BEN」という曲をダニー・オズモンドではなくマイケルが歌うことになったのも、今思えば運命だったのかもしれないとさえ思えてしまいます。

 

 彼がアカペラで歌う「BEN」


Michael Jackson - Ben - Acapella HD

 

 

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ダニー・オズモンドの代表曲がこれです。 

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