まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ゴー・アウェイ・リトル・ガール(Go Away Little Girl)」ダニー・オズモンド(1971)

 おはようございます。

 今日はダニー・オズモンドの「ゴー・アウェイ・リトル・ガール」です。


Go Away Little Girl - Donny Osmond (Audio)

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Go away, little girl
Go away, little girl
I'm not supposed to be alone with you

I know that your lips are sweet
But our lips must never meet
I'm dating somebody else
I must be true

Oh, go away little girl
Go away, little girl
It's hurting me more each minute that we delay

When you're near me like this
You're much too hard to resist
So go away, little girl
Before I beg you to stay

Go away, little girl
Go away, little girl
It hurts me more the more that we delay
When you're near me like this
You're much too hard to resist

So go away, little girl
Let's call it a day, little girl
Please, go away, little girl
Before I beg you to stay

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行ってくれ リトル・ガール
もう行ってくれ リトル・ガール
君と二人きりでいちゃいけないんだ

君の唇が甘いのは知っている
だけど、僕たちの唇は決して重なることはないんだ
僕は他の誰かと付き合っているんだ
僕は正直じゃなくちゃいけないのさ

行ってくれ リトル・ガール
もう行ってくれ リトル・ガール
引き延ばすほどに胸が痛くなるから

こんな風に君が近くにいると
君の魅力には抗えないんだ
だから、行ってくれリトル・ガール
僕がここにいてほしいと頼んでしまう前に

行ってくれ リトル・ガール
もう行ってくれ リトル・ガール
引き延ばすほどに胸が痛くなるから
こんな風に君が近くにいると
君の魅力には抗えないんだ

だから行ってくれ、リトル・ガール
これで終わりにしよう リトル・ガール
お願いだから行ってくれ リトル・ガール
僕がここにいてほしいと頼んでしまう前に

       (拙訳)

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 この「ゴー・アウェイ・リトル・ガール」は昨日紹介しましたクラレンス・カーターの「パッチズ」の1年後に、同じプロデューサー(リック・ホール)、同じスタジオ(アラバマ州マッスル・ショールズ”FAMEスタジオ”)で制作された全米NO.1ヒットです。

 

 ダニー・オズモンドは兄弟グループ”オズモンド・ブラザーズ(のちにオズモンズ)のメンバー。ジャクソン5でいうところのマイケル・ジャクソンのポジションにいました。

 日本でもカルピスのCMをやっていたくらいですから大変な人気者でしたね。


The Osmond Family, Calpis CM ( オズモンズ カルピスCM )

 1960年代にTVのアンディ・ウィリアムス・ショーのレギュラーで人気者になった彼らは、レコード・デビューすることになり、送り込まれたのがアラバマ州マッスル・ショールズ。まさにド田舎ですが、そこにはヒット・レコードを作ると評判のスタジオがあったのです。FAMEスタジオ、持ち主はエンジニア、プロデューサーのリック・ホールでした。

 しかし、リックの作るサウンドの最大の売りであった”スワンパーズ”というスタジオミュージシャンを、信頼していた大物プロデューサー、ジェリー・ウェクスラーに引き抜かれ地元に別のスタジオを作られるという大ピンチに陥っていました。しかし、彼はあきらめず、新たにミュージシャンをかき集め自分のチームを作ります。この時期の彼は、大きな屈辱からの逆襲モードにありました。絶対ヒットさせてやるという気迫が半端じゃなかったはずです。

 そして作ったのが「パッチズ」でり、オズモンズでした。オズモンズはまず「ワン・バッド・アップル」という、明らかにジャクソン5の「帰ってほしいの」を踏襲した曲で全米NO.1を獲得します.

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 そして、そのうちの一番の人気者であるダニー・オズモンドのソロも制作することになります。

 シングルに選ばれた「ゴー・アウェイ・リトル・ガール」はキャロル・キングとジェリー・ゴフィンの楽曲。シンプルな曲ではありますが、"When you're near me like this
You're much too hard to resist"のところの、歌詞とメロディの高まりがこれ以上ないほどぴったり合っていて、年甲斐もなく、聴くたびに僕は”キュンキュン”してしまいます(笑。

 

   この曲は1962年にボビー・ヴィーという歌手がまずレコーディングしますが、大ヒットしたのは翌1963年のスティーヴ・ローレンスのヴァージョンで、全米1位に輝きました。


Go Away Little Girl-Steve Lawrence

 1966年にはザ・ハプニングスのカバーもヒット(全米12位)。彼らはニュージャージー出身ということもあってか、フォーシーズンズ風なテイストが感じられます。


THE HAPPENINGS - "Go Away Little Girl"

 

 この曲を当時13歳の男の子に歌わせるという、選曲のアイディアが素晴らしいですね。

   "little girl"という言葉が、スティーヴ・ローレンスが歌うと”かわいい女性”という、大人な男が口にする雰囲気になりますが、13歳のダニーが歌うと、文字通り”同年代の女の子”になってしまうわけですから、面白いですよね。

 歌詞の中の、I Belong to Someone Else(ぼくには違う女性がいる)という大人な言い回しを

 I'm Dating Someone Else(僕は他に付き合っている子がいる)に変えるという調整もちゃんと行われています。

 

 さて、この年(1971年)は、キャロル・キングの「つづれおり」が大ヒットしました。リックは、それで彼女の昔のヒット曲を思い出したのかもしれませんね。

 日本では大瀧詠一が「つづれおり」の大ヒットをきっかけに、彼女の昔のヒット曲を再認識し、”はっぴいえんど”では封印していた”ポップス路線”を歩み始めたのはファンには有名な話です。

 インディペンデントなスタジオ・オーナーでエンジニア、プロデューサーであるという共通項を持つリック・ホールと大瀧詠一がシンクロするようで、僕には興味深く思えます。

 

 その後、ダニーは、ソロ・アーティスト、オズモンズ、妹のマリーとのデュオ、という3つの形態で1970年代前半に数々のヒット曲を生み出しています。

 1970年代半ば以降、勢いをなくしますが、1988年に「Soldier of Love」が全米2位の大ヒットを記録し、見事復活を果たします。

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   1990年代以降は再びスポットライトがあたることはありませんでしたが、2004年にディズニー映画「ムーラン」の主題歌「闘志を燃やせ(I'll Make a Man Out of You)」を歌い話題になりました。曲を書いたのは「想い出のステップ」のヒットを持つマシュー・ワイルダー

 

 ダニーは以前にディズニー映画「ヘラクレス」のヘラクレス役のオーディションを受け、年をとりすぎているということで落とされたそうですが、「ムーラン」の声優(B.D. Wong)と歌声が似ていることから、彼に声がかかったそうです。年齢に関係なくチャレンジしたことが、大きな仕事に繋がったわけですね。

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 最後にダニーの大ヒットの影響を受けた作られた日本人アーティストのカバー・ヴァージョンを。

 日本のジャクソン5こと、フィンガー5です。

  


ゴー・アウェイ・リトルガール.wmv

 

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