まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「アイ・ウォント・ハー(I Want Her)」キース・スウェット(1987)

 おはようございます。

今日はキース・スウェット。ベテランR&Bファンには懐かしい、”ニュー・ジャック・スウィング”最初の大ヒット曲「アイ・ウォント・ハー(I Want Her)」です。

www.youtube.com

Seen you last night, saw you standing there
And couldn't picture the color of your hair
And all I wanted to know, were you really there?

I wanna know, was it my imagination?
Ooh, you know it was a sweet sensation
Looking at you from a distance
Ooh, it seems so real


You and I together
Dream that seemed for real
If it's a dream, please don't wake me up
It feels so real, all I know is


I want her
(I want that baby)
I want her
(Get it, get it, get it, get it)
I want her
(I wanna do it like this, do it like that)
I want her
(Once I get it, ain't no turning back)


You turn me on and on
This feeling, girl, is so strong
My heart, girl, is on fire
Ooh, you're my desire


I've got a thing for you
Dreams of you and me, baby
She's bad, she's bad, she's bad
All I know is


I want her
(I want, I want, I want, I want, I want her)
I want her
(Don't misunderstand me)
I want her
(I wish this dream was for real)
I want her
(You, you know the deal)

I want her
(Yeah, yeah)
I want her
(I want that girl so bad)
I want her
(I had a dream of her last night)
I want her
(Yeah, yeah, yeah)


And I, I
Give it to me, give it to me
Give it to me, ooh, baby
All night long, girl

I want her
(Ooh, baby)
I want her
(I want that girl so bad)
I want her
(All night long)
I want her
(Let me tell you something, I wanna do it like this, baby)
I want her
(I wanna do it like that, sugar)
I want her
(You know what I need, girl
You know what I like, girl)
I want her
(Like this, baby)
I want her
(I wanna do it like that, sugar)
I want her
(You turn me on and on and on and on, baby)
I want her
(I wanna do it like this, baby
I wanna do it like that, sugar)
I want her
(You know what I mean, girl
You know what I like, girl)
I want her
(I wanna do it like this, baby
I wanna do it like that, sugar)
I want her
(Ooh, I want you so bad, girl)

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昨夜君を見たのさ、君がそこに立っていたのを
君の髪の色もわからなかったけど
知りたいのは、君は本当にそこにいたのか?

知りたいんだ、気のせいだったのか?
甘い感覚だったんだ
遠くから君を見つめているのは
ああ、すごくリアルに思えた


君と僕は一緒
現実に思えた夢
もしそれが夢なら、どうか僕を目覚めさせないで
とてもリアルなんだ 僕がわかるのはただ


彼女が欲しい
(あの娘が欲しい)
彼女が欲しい
(手に入れるのさ)
彼女が欲しい
(こんなふうしたい あんなふうにしたい)
彼女が欲しい
(一度手に入れたら もう戻れない)


君は僕をずっと夢中にさせる
この気持ちはとても強いんだ、ガール
僕の心は燃えている
ああ、君は僕の欲望だ

 

君のために
君と僕の夢さ、ベイビー
彼女はすごい、、、
僕が知っているのはただ


彼女が欲しい
(僕は、僕は彼女が欲しい)
彼女が欲しい
(誤解しないで)
彼女が欲しい
(この夢が現実だったらいいのに)
彼女が欲しい
(あなたは、あなたは取引を知っています。)

 

彼女が欲しい
彼女が欲しい
(あの子が欲しくてたまらない)
彼女が欲しい
(昨夜彼女の夢を見た)
彼女が欲しい


そして僕は
欲しいんだ、欲しいんだ、ああ、ベイビー
一晩中、ガール、、、

 

(後略)             (拙訳)

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 この曲を作ったのはテディ・ライリー。彼の作ったサウンドが”ニュー・ジャック・スウィング”と呼ばれました。

 それまで、彼はヒップホップのトラック・メイカーで”ラップもの”しか作ったことはありませんでした。ニューヨークのクラブシーンでキース・スウェットと出会い、一緒に彼の作品を作ろうという話になります。キースは昼は証券マンをやり、夜はクラブで歌うという活動をしていました。

 テディは自己流でラップのトラックを作っていただけで、R&Bの知識は皆無だったので、先達の作品から学ぶことにしたそうです。

 

 クインシー・ジョーンズ、プリンス、フィラデルフィア・ソウルのギャンブル&ハフ、1980年代の売れっ子プロデューサーであるカシーフやエムトゥーメなどを聴きこんで自分の中に取り込んでいきました。

 

ジェイムズ・ブラウン、プリンス、そしてクインシー・ジョーンズをジックリ聴いて、吸収して、自分の中にミックスしていった。ニュー・ジャック・スウィングはあらゆるサウンドブレンドだからね。僕がブレンダーになっただけなんだよ」

 (「bmrレガシー スーパー・プロデューサーズ」)

 

 新しいサウンドの発明というのはそういうことなのかもしれないですね。

誰々のここと誰々のこういうところを混ぜるという”小手先”の技術じゃなく、

自分の中に一回取り込む、自分自身がブレンダーになる、というのが肝心で、これはあらゆる創作表現の基本であるように思えます。

 

 ニュー・ジャック・スウィングは当時一世を風靡した、新しいR&Bサウンドでしたが、今振り返ってみるともっと大きな意味合いといいますか、音楽史の流れの必然性があったんじゃないかと僕には思えます。

 

 この当時(1980年代半ば~後半)、R&Bとヒップホップは対照的なものでした。ヒップホップは、ストリートの貧しい若者たちのリアルを反映させていたのに対して、R&Bは都会のセレブのラブ・ストーリーを描くファンタジーが主流でした。

 

  例えば、当時最も人気があった男性R&Bシンガー、フレディ・ジャクソンはこんな感じです。 


Freddie Jackson - You Are My Lady (Official Video)

 ヒップホップとR&Bがそれぞれの流行を追い過ぎたせいであまりに両極端に行き過ぎて、”真ん中”がすっぽり抜けた状況が出来上がっていたわけです。

 ただ、ダンスミュージックで盛り上がりたいという一般層が置き去りになっていたわけです。

 

 まあ、両極端に行き切った状態でしたから、今度はヒップホップとR&Bが歩み寄り融合するほうに力学が働いても全く不思議はありません。

 ヒップホップのトラックメイカーがR&Bを吸収して作った、ラップも乗せやすいトラックによる新しいダンス・ミュージックであった”ニュー・ジャック・スウィング”は、時代のニーズにスカッと答えるものでした。そしてこの曲はビルボードR&B年間チャートで1位になるほどの大ヒットになりました。

 その後、90年代はHIPHOP SOULと呼ばれる、歌ものとラップが融合したR&Bが主流になります。(融合というよりは、ヒップホップがR&Bを飲み込んだ、吸収合併したようなものでしたが)そして、そのムーヴメントの先駆けになったのが”ニュー・ジャック・スウィング”だった、というのが今の僕の見解です。

 キースとテディの貴重なライヴ映像。R&Bとヒップホップのミックス具合がよくわかります。


keith sweat feat. teddy riley - i want her ( live )

 

 そして、近年ニュー・ジャック・スウィングを蘇らせたくれたのがブルーノ・マーズでした。


Bruno Mars - Finesse (Remix) (feat. Cardi B] [Official Video]

 

 日本ではEXILE TRIBEの総帥HIROがニュー・ジャックに大きな影響を受けていて、その名も”NEW JACK SWING"というレパートリーがあります。この曲はグループ間で伝承され、昨年RAMPAGEもカバーしていました。この曲を作っているT.KURAは、日本のニュー・ジャックの第一人者、最高峰のクリエイターです。

 

 それから、今年に入って、岡村靖幸が”岡村流ニュー・ジャック”の曲をアップしていますが、さすがのオリジナリティ、すごいです。


岡村靖幸「彼氏になって優しくなって(パーフェクト ver.)」

 

 

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