おはようございます。今日はダニー・ハサウェイの「いつか自由に(Someday We'll All Be Free )」です。
Hang on to the world as it spins around
Just don't let the spin get you down
Things are moving fast
Hold on tight and you will last
Keep your self-respect, your manly pride
Get yourself in gear, keep your stride
Never mind your fears
Brighter days will soon be here
Take it from me, someday we'll all be free
Keep on walking tall
Hold your head up high
Lay your dreams right up to the sky
Sing your greatest song
And you'll keep going, going on
Take it from me, someday we'll all be free
Hey, just wait and see, some day we'll all be free
Take it from me, someday we'll all be free
It won't be long, take it from me, someday we'll all be free
Take it from me, take it from me,
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回り続ける世界にしっかりつかまって
ただ振り落とされないように
物事はどんどん進んでいく
しっかりつかんでいれば
持ちこたえられるさ
持ち続けるんだ、自尊心を、男らしい誇りを
ギアを入れて、自分の歩幅で進むんだ
恐怖に気をとられずに
すぐに輝く日がやってくるさ
僕の言葉を信じてほしい
いつか、僕たちはみんな自由になれるんだ
胸を張って歩き続けるんだ
頭を高く上げて
君の夢を掲げるんだあの空へ
君の最高の歌を歌えば
きっと前に進み続けることはできる
僕の言葉を信じてほしい
いつか、僕たちはみんな自由になれるんだ
ほら、待っていればわかるさ
いつか、僕たちはみんな自由になれる
そう遠くはないさ
僕の言葉を信じてくれ
いつか、僕たちはみんな自由になれるんだ
僕のいうことを信じて、信じてほしい、、 (拙訳)
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この曲は人種差別から解放される日が来ることを願う、黒人たちのアンセムとして定着していて、僕もそういう目的で書かれたものだと長い間信じていたのですが、こんな記事を見つけました。
「「Someday We’ll All Be Free」の作詞を手がけたエドワード・ハワードは、この曲の歌詞を、うつ病を患い、おそらく診断はされていなかった統合失調症に苦しんでいたドニー・ハサウェイのために、そして彼について書いたと語っている。ハワードはこう述べている。「そのとき私の頭の中にあったのはドニーのことだった。彼はとても苦しんでいたからね。いつか彼が自分を苦しめているものから解放されることを願っていた。でも、私にできることは何もなかった。ただ、彼を励ますようなものを書くことくらいしかね。」 (THE GENTLEBEAR August 23, 2008)
本来はダニー・ハサウェイ本人を励ますために書かれたものだったんですね。
引用したこの記事では統合失調症はおそらく診断されていなかった、とありますが、25歳の時に診断されていたという記事もあり、正確なところは分かりません。ただ、ダニー・ハサウェイは1970年、彼が25歳の時にソロ・アーティストとしてデビューしていますから、その頃すでにメンタルの病気に苦しんでいたというのは間違いなさそうです。
そして、この「いつか自由に」が収録されたアルバム『愛と自由を求めて(Extension of a Man)』を制作していた頃には、多くの薬を服用していたようです。
今回初めて自分でこの歌詞を訳してみて、ちょっと気になる言い回しがあったのですが、その後この記事でダニーを励ますために書いた歌だということを知って、腑に落ちたところがありました。
気になった言い回しとは”your manly pride”です。”おまえの男らしい誇り”。黒人全体の問題を歌っているのに、どうしてこういう男女を隔てるような言い回しをするのかな?と思ったのです。他の和訳サイトでは”人間らしい誇り”と訳している方もいました。ただ、その後、アレサ・フランクリンやアリシア・キーズのカバーを聴いてみたら、歌詞を"your womanly pride"に変えて歌っていました。やっぱりmanlyは男の、というニュアンスはしっかり感じる言い方のようです。
でも、これが、男性が男の友達に投げかけたパーソナルな言葉だとするとしっくりします。そしてその後にでてくる、Sing your greatest song、おまえの最高の歌を歌うんだ、という言い回しも、ダニーに向けたことであれば、よりリアルなものになります。
そして、信じて、と言うことをbelieve meでもtrust meでもなくtake it from meという、自分の経験をベースに他の人のためを思って言う時に使うフレーズを選んでいることからも、切実さを感じられるようにも思います。
ただ、この曲はパーソナルな気持ちを歌にしたものだから、黒人の差別からの解放を願う歌じゃない、ということにはならないと僕は思います。個人的なものを具体的に突きつめていくと、いつか普遍的な意味を持ち始める、というのは音楽や表現の世界ではよくあることだからです。作者の意図を超えて、聴き手が新たな価値を見出したもの、そういう歌こそが今も名曲と呼ばれている。僕がこのブログで1000曲以上のプロフィールを調べてわかったことです。
そして、この「いつか自由に(Someday We'll All Be Free )」の場合、作詞をしたエドワード・ハワードの意図をくむならば、黒人に限らず、さまざまな困難に苦しんでいる世界のすべての人が、いつかその苦しみから解放される日が来るという励ましの歌、として、広く解釈してもいいのかもしれないと僕は思いました。
エドワード・ハワードについて詳しいプロフィールを知ることはできませんでしたが、彼は「いつか自由に(Someday We'll All Be Free )」以前にダニーの重要なレパートリーをもう1曲作詞していました。それが「リトル・ゲットー・ボーイ(Little Ghetto Boy)」です。
Little ghetto boy
Playing in the ghetto street
What'cha gonna do when you grow up
And have to face responsibility?
Will you spend your days and nights in a pool room?
Will you sell caps of madness to the neighborhood?
Little ghetto boy
You already know how rough life can be
'Cause you've seen so much pain and misery
Little ghetto boy
Your daddy was blown away
He robbed that grocery store
Don't you know that was a sad, sad old day?
All of your young life
You've seen such misery and pain
The world is a cruel place
And it ain't gonna change
You're so young
And you've got so far to go
But I don't think you'll reach your goal, young man
Hanging by the pool room door
Look out, son
Little ghetto boy
When, when, when you become a man
You can make things change, hey, hey
If you just take a stand
You gotta believe in yourself and all you do
You've gotta fight to make it better
You'll see how other people will start believing, too
My son, things will start to get better
リトル・ゲットー・ボーイ
スラム街で遊んでいる
大きくなったらどうするんだ?
責任を背負わなきゃならなくなるぞ
ビリヤード場で毎日過ごすのか?
それとも街の仲間に狂気の薬を売るのか?
小さなゲットーの少年よ
おまえはもう人生の厳しさを知っている
痛みや悲惨なものを たくさん見てきたから
リトル・ゲットー・ボーイ
お前の父親は撃たれてしまった
食料品店を襲ったんだ
悲しい 悲しい日々だった
幼い頃からずっと
悲惨で苦痛なものを見てきた
世界は残酷な場所だ
そして それは変わりそうにない
お前はまだ若く
これから長い道のりがある
でも おまえはそのゴールにたどり着けないぞ
ビリヤード場のドアにもたれかかっているだけではな
気をつけろよ 息子よ
リトル・ゲットー・ボーイ
やがてお前が大人になった時
世界を変えることができるんだ
もしも しっかりと立ち向かえばな
自分自身と自分のすることを信じろ
より良い未来のために戦わなきゃいけない
そうすれば 他の人たちも信じ始めるだろう
息子よ 物事は良くなっていくんだ (拙訳)
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こちらは悲惨な環境にいる黒人の少年に対して困難に立ち向かって生きるんだというメッセージを投げかけている歌ですね。黒人の社会問題を真正面からとらえています。しかし、そのメッセージは「いつか自由に」と通底しているものがあるように思えます。「いつか自由に」も、もともとダニーへの励ましの歌として書かれたとしても、黒人の社会的な問題は全く彼の念頭になかったかというとそうじゃないように思えます。あらためて考えずとも日常的に常に嫌でも意識せざるを得ないことだったでしょうし。
そんなことを考えてゆくと、この「いつか自由に」という歌は個人的な励ましとして語りかけながらも、最後は”Someday You'll be Free”ではなく、"We'll All Be Free"というふうに、自分たち全員という広い視野に着地している、そうすることで苦しんでいる人間も一体感を感じることができるわけで、そこがすごく大事だったんだなあ、だからこそ、黒人全体に通じるメッセージソングとして支持されるようになったのかもしれないと、僕は思いました。
最後はダニー・ハサウェイのライヴ・ヴァージョンを聴いてみましょう。
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