まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ア・ホール・ニュー・ワールド(A Whole New World)」ピーボ・ブライソン&レジーナ・ベル(1992)

 おはようございます。

今日はピーボ・ブライソンとレジーナ・ベルの「ア・ホール・ニュー・ワールド」です。

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I can show you the world
Shining, shimmering, splendid
Tell me, Princess, now when did you last
Let your heart decide?
I can open your eyes
Take you wonder by wonder
Over, sideways and under
On a magic carpet ride


A whole new world
A new fantastic point of view
No one to tell us no
Or where to go
Or say we're only dreaming


A whole new world
A dazzling place I never knew
But now from way up here
It's crystal clear
That now I'm in a whole new world with you


Unbelievable sights
Indescribable feeling
Soaring, tumbling, freewheeling
Through an endless diamond sky


A whole new world (Don't you dare close your eyes)
A hundred thousand things to see (Hold your breath, it gets better)
I'm like a shooting star
I've come so far
I can't go back
To where I used to be


A whole new world
With new horizons to pursue
I'll chase them anywhere
There's time to spare
Let me share this whole new world with you


A whole new world (A whole new world)
A new fantastic point of view
No one to tell us no
Or where to go
Or say we're only dreaming


A whole new world (Every turn a surprise)
With new horizons to pursue (Every moment, red letter)
I'll chase them anywhere
There's time to spare
Anywhere
There's time to spare
Let me share
This whole new world with you


A whole new world (A whole new world)
That's where we'll be (Where we will be)
A thrilling chase (A wondrous place)
For you and me

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君に世界を見せるあげられるよ
輝いて、きらめいて、素晴らしいんだ
教えてほしい、お姫様、最後に
自分の心に決めさせたのはいつ?
僕は君の目を開いてあげられるよ
素敵な場所に次々と連れていくよ
上に、横に、下に
魔法の絨毯に乗って


全く新しい世界
新しくてファンタスティックな視点
誰も言わないのさ ダメだとか
どこに行けとか
二人は夢を見ているだけだとか


全く新しい世界
全く知らなかったまぶしい場所
だけど、ここまで来ただけで
はっきりとわかるわ
私はまったく新しい世界にあなたといることを


信じられないような光景
言葉にできないような気持ち
急上昇して、宙返りして、自由自在
どこまでも続くダイヤモンドの空の中を


全く新しい世界 (目を閉じちゃダメさ)
10万もの見るべきものがある (息を止めて、そうすれば良くなるよ)
私はまるで流れ星
ここまで来たんだから
自分がいた場所にはもう戻れない


全く新しい世界
追い求めるべき新しい地平線
どこまでも追いかけていこう
時間は十分にある
このまったく新しい世界を君と分かち合おう


全く新しい世界
新しくファンタスティックな視点
誰も言わないのさ ダメだとか
どこに行けとか
二人は夢を見ているだけだとか

 

全く新しい世界 (すべてが驚き)
追い求めるべき新しい地平線 (一瞬、一瞬が記念日)
どこまでも追いかけていこう
時間は十分にある
このまったく新しい世界を君と分かち合おう

 

全く新しい世界 (全く新しい世界)
それが二人がいるべき場所 (二人がいるべき場所)
胸ときめかせて追いかける (驚くような場所を)
あなたと私のために

          (拙訳)   

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 映画「美女と野獣」の音楽を作り終えると、すぐにアラン・メンケンとハワード・アシュマンは「アラジン」の音楽制作に入ったようですが、アシュマンはHIV/AIDSのために作業の半ばで亡くなってしまいます。

 そして彼の代わりに歌詞を手がけることになったのはイギリス人作詞家のティム・ライスでした。

 ライスは1970年代にアンドリュー・ロイド・ウェバーと組んで「ジーザス・クライスト・スーパースター」や「エビータ」といったミュージカルの傑作を作っていましたので、実績は十分でした。

 1980年代にはウェーバーと袂を分かち、ジョン・バリーと「007オクトパシー」(1983)の主題歌「オール・タイム・ハイ」(作曲ジョン・バリー 歌リタ・クーリッジ)や、エルトン・ジョン、アバのベニーとビヨルンなどの曲の歌詞を書いていました。

 

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 アラン・メンケンがこの曲を書いた時に、絨毯で空を飛ぶイメージがあって「The World At My Feet(足下の世界)」というタイトルをつけていたそうです。

 

「僕はティム・ライスに曲と、その曲の僕の考える構成を伝えるためにダミーの歌詞をつけて送ったんだ。僕が彼に送った曲の構成には"The World At My Feet"となっていたよ。賢明なティムは”feet"という言葉は、ディズニーのラヴソングにはあまりふさわしくないと感じたんだ」

 

 確かに"The World At My Feet"は、映画の場面にはぴったりだったでしょうが、ロマンチックさには少し欠ける気がしますよね。"A Whole New World”なら映画と切り離しても、普遍性があるもののような気がします。

 

 さて、この「ア・ホール・ニュー・ワールド」を歌っていたのがピーボ・ブライソンとレジーナ・ベル。日本人で例えるなら五木ひろし坂本冬美(?)のように、徹底的に鍛えられた歌のスキルを持つ、非の打ち所がない組み合わせですね。

 

 大成功した前年の「美女と野獣」のデュエットとパートナーが変わったことについて、ピーボ・ブライソンはこう語っています。

 

「奇妙なことに、ディズニーは決してリピートしないんだ。彼らはいつも新鮮な気持ちで始めたいんだ。だけど、これはアラン・メンケンティム・ライスの曲だから、歌うのはチャレンジングなものになる。セリーヌは別の仕事をしていたし、レネ(彼女の夫でありマネージャー)ももう一度仕事をすることにそれほど興奮していなかったと思う。この曲には、本当にヴォーカルを扱える人が必要だったんだ。それは、レジーナ・ベルが得意とするものだし、ラトガーズ大学でのトレーニングの成果でもあるんだけど、難しいことをとてもシンプルにできるんだ。彼女は難しい曲をとても簡単に聴かせるのさ」

 あなたはリピートされたじゃないかという質問にはこう答えています。

「繰り返しになるけど、それにはある種の化学反応と、あるレベルのボーカルの才能が必要なんだ。 誰かの名前、それだけでは仕事にならないんだ。今の音楽界で起こっていることと同じことさ。 名前があっても、声を持っているとは限らないんだ」

 (SAC CULTURAL HUB    February 14, 2014)

 

 ボーカリストとしての自負がよく伝わってきますね。

 なにせ、日本のレコード会社に「ピーボよりうまいのは、ピーボだけ」(元ネタの”ビーボより美味いのはビーボだけ”を覚えている人はどれだけいるでしょうか、、、)というキャッチコピーをつけられただけのことはあります。

 

 僕は、ピーボ・ブライソンとレジーナ・ベルレコード会社の担当者、スタッフとして、両方ともライヴを見て取材も立ち会わせてもらっています。

 ピーボはこの曲の前年、レジーナは翌々年だったと思います。

 ご両人とも歌はもう”べらぼうに”うまかったですね。ピーボ本人も語っていましたが、実にリラックスして簡単そうに歌っているのですが、曲の細部にいたるまで実に繊細に声をコントロールできるんですね。

 

 そういうピーボも若い頃は熱唱していました。「Feel The Fire」(1977)

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 僕が立ち会っていた彼のインタビューで今も覚えているのは、ダニー・ハサウェイの話になったっ時のことです。彼はダニー・ハサウェイの後釜としてロバータ・フラックのデュエット・パートナーとして有名になって、もともとハサウェイとも交流がありました。ハサウェイはホテルの部屋から転落死(自殺とも言われています)してしまうのですが、ちょうどその日のそれくらいの時間に、彼は自宅の部屋いて、窓の外に何かが落ちた大きな音が聞こえたんだと語ったんですね。そして、それからしばらくして電話でハサウェイの死の知らせを受けた、と。

 彼は実に真面目な表情で、冗談でそんなことがさすがに言うわけはないですから、今も記憶に残っています。

 

 レジーナは、母性というか包容力がすごくあって、姉御肌な印象があります。僕のたった一歳上でしかないのですが、自分がひよっこに思えました。こんな姉貴がいたらいいなあと思った生涯唯一の人です(苦笑)。

 彼女のことでよく覚えているのは、インタビューアーの方が、たぶん彼女の歌に対する賛辞だったんでしょうね

 "ホイットニー・ヒューストンR&Bじゃないけど、あなたは本物のR&Bだ”というようなことを言ったんです。

 

 僕はホイットニー大好きでしたし、これはロックじゃねえ、ソウルじゃねえ、みたいな論議も大嫌いでしたから、内心ちょっとカチンときていました。

 

 そしたら、それまでおだやかにゆったりと対応していた彼女の眼光が、突然きびしくなって、少し身を乗り出して、きりっと相手を見据えると落ち着いた声で

「何の根拠があって、あなたがこれはR&BでこれはR&Bじゃない、って判断できるのかわからないわ。ホイットニーは素晴らしいR&Bシンガーよ」って言ったんですね。

 僕は”姉さん!”と言いながら、彼女にすがりつきたい気持ちになりました(笑)。

 

 最後は、そんなレジーナ・ベルの名唱「Make It Like It Was」(1989年R&B1位)を。

 普通に上手いシンガーはサビにきていきなりドーンと盛り上がっちゃうんですが、彼女の場合は、抑えるところから盛り上がるところまでつながるように、気持ちが行き届いている感じがするんですよね。

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