まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「サムホエア・アウト・ゼア(Somewhere Out There)」リンダ・ロンシュタット&ジェイムス・イングラム(1986)

 おはようございます。

 今日はリンダ・ロンシュタットとジェイムス・イングラム「サムホエア・アウト・ゼア」です。

www.youtube.com

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Somewhere out there
Beneath the pale moonlight
Someone's thinking of me
And loving me tonight


Somewhere out there
Someone's saying a prayer
That we'll find one another
In that big somewhere out there


And even though I know how very far apart we are
It helps to think we might be wishing on the same bright star
And when the night wind starts to sing a lonesome lullaby
It helps to think we're sleeping underneath the same big sky


Somewhere out there
If love can see us through
Then we'll be together
Somewhere out there
Out where dreams come true

 

And even though I know how very far apart we are
It helps to think we might be wishing on the same bright star
And when the night wind starts to sing a lonesome lullaby
It helps to think we're sleeping underneath the same big sky


Somewhere out there
If love can see us through
Then we'll be together
Somewhere out there
Out where dreams come true

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どこか 向こうの
淡い月の光の下で
誰かが私のことを想っている
そして、私を愛してくれているわ 今夜


どこか 向こうで
誰かが祈りを捧げている
僕たちがお互いを見つけられるように
向こうにある、あの大きなどこかの場所で


たとえ、僕たちがどれだけ離れているかわかっていても
それが、同じ輝く星に願いをかけていると思わせてくれるよ
夜風がひとりぼっちの子守唄を歌い始めたら
それが、同じ大きな空の下で眠っていると思わせてくれるわ


どこか 向こうで
もし、愛が私たちを見守ってくれるなら
二人は一緒になれる
どこか 向こうで
夢が叶う場所で


たとえ、僕たちがどれだけ離れているかわかっていても
それが、同じ輝く星に願いをかけていると思わせてくれるよ
夜風がひとりぼっちの子守唄を歌い始めたら
それが、同じ大きな空の下で眠っていると思わせてくれるわ


どこか 向こうで
もし、愛が私たちを見守ってくれるなら
二人は一緒になれる
どこか 向こうで
夢が叶う場所で

             (拙訳)

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「サムホエア・アウト・ゼア」の楽譜はこちら

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 この曲のリズム隊は「セクション」のリーランド・スカラー(ベース)とラス・カンケル(ドラムス)だったんですね。そしてギターはスティーヴ・ルカサー、そう思ってギター・ソロを聴くと”なるほど”ってなりますね。

 

 そして、この曲のプロデューサーの一人が、昨日このブログに登場したピーター&ゴードンのピーター・アッシャーです。彼はずっと、リンダ・ロンシュタットのプロデューサーでしたから、その流れでの抜擢だったのでしょう。

 ピーターはこう回想しています。

「「サムホエア・アウト・ゼア」を録音したとき、彼女とジェームス・イングラムは、実際には同時にスタジオにはいなかったんだ。これは今ではよくあることででけど、当時はそうじゃなかったよ。全部をひとつに合わせるために、ビブラートや最後の音やそういったものをそろえたりと、いまはPro Toolsでやれば2秒にですむことなんだけど、かなりの時間がかかったよ。それぞれ別々に2つのテイクを録っていたからね」

  (Songfacts interview 2018)

 

 離れ離れの二人がお互いを思い合う歌で、ミュージック・ビデオでもリンダとジェームスは離れ離れでしたが、レコーディングでも離れ離れだったんですね、、。

 

 この曲はスティーブン・スピルバーグが製作総指揮をつとめたアニメ映画「アメリカ物語(An American Tale)」の主題歌として1986年に全米2位まであがり、グラミー賞の”ソング・オブ・ザ・イヤー”にも輝いています。

 

 映画の方も当時のアメリカの長編アニメ映画として最大のヒットを記録しています(ディズニーが大ヒット映画を連発し始めるのは、この何年か後です)。監督をしたドン・ブルースはもともとウォルト・ディズニー・プロダクションで働いていましたが、会社の方針と合わず一緒に辞めた仲間たちと会社を作ったという経歴の持ち主です。

 

 この曲を書いたのは、このブログでもおなじみバリー・マン&シンシア・ワイル。「ふられた気持ち」(ライチャス・ブラザーズ)など数々の大ヒット曲を持つアメリカ・ポップス史上屈指のソングライター・チームです。そこに、この映画の音楽を手がけたジェームズ・ホナーが加わっています。

 ジェームズ・ホナーは数々の映画音楽を手がけ、のちに「タイタニック」の主題歌「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」(セリーヌ・ディオン)を作曲する人ですね。

 

 シンシア・ワイルはこう語っています。

「私達のエージェントが『アメリカ物語』のシナリオを送ってきて、私達が興味があるかどうかをたずねてきたの。とっても可愛いシナリオで、とっても気に入ったわ。でも、その当時、アニメーションは全く人気が無くて、この作品も直ぐに消え去ってしまうと思ったの。”一体誰がユダヤのネズミについての映画を見るの?”ってね。」

 

「そう言えば、このシナリオの中に「The Mouse In The Moon」というタイトルがあって、それを私が使わなくてはいけないのかと尋ねたら、「いいえ、その必要はない」と言われたので、その代わりに、この「サムホエア・アウト・ゼア」を思いついたのよ」

 (「BARRY MANN&CYNTHIA WEIL Original Demos, Private Recordings and Rarities」ライナーノーツより) 

 

 この曲はあくまでも映画の中で使うもので、ポップ・ヒットを狙う意図はなかったようです。

 たまたま、バリーのオフィスに来た、もう一人のプロデューサー、スティーヴ・ティレルがこの曲を聴いてヒットすると思い、映画の最後に持っていって、別のアーティストにレコーディングさせるというアイディアを思いついたのだそうです。

 

 スティーヴ・ティレルタイレルと表記するところもあります)は、元々シンガーでしたが、1960年代後半にはセプターレコードのA&Rプロデューサーとしても大活躍した人です。シンガー時代に地元のライバルだったB.J.トーマスを連れて来て「雨にぬれても」などのヒット曲を手がけことで有名です。

 

 21世紀に入ると彼はシンガーとしてまた精力的に活動していて、マン&ワイルの曲もカバーしています。

 

 ヒットしそうもなかったアニメ映画と、ヒットさせる意図が全然なかったその劇中歌が、大ヒットしたことで、その後の流れは変わってゆくことになった。僕はそう解釈しています。

 

 最後は、やはり、ピーター・アッシャー、スティーヴ・ティレルのプロデュースでバリー・マン&シンシア・ワイル(共作トム・スノウ)作品を、リンダ・ロンシュタットがデュエットで歌い、やはり全米最高2位になった「ドント・ノウ・マッチ」を。リンダの相手はアーロン・ネヴィル。

 この曲はもともと、バリー・マンの1980年リリースのソロ・アルバム「Barry Mann」の収録されていました。その後、ビル・メドレーやベット・ミドラーもカバーしています。

 バリーとトム・スノウが曲を書いていて歌詞に煮詰まったため、シンシアに相談したところ、彼女はバリーをモデルにした、彼のための歌詞を書いたそうで、彼はこの歌を自分で歌うたびに泣きそうになると語っています。評判通りの”おしどり夫婦”なんですね。

 

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「サムホエア・アウト・ゼア」の楽譜はこちら