まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ジャスト・ワンス(JUST ONCE)」クインシー・ジョーンズfeat.ジェイムス・イングラム(1981)

 おはようございます。

 今日は名バラード「ジャスト・ワンス」を。


Just Once

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I did my best
But I guess my best wasn't good enough
Cause here we are
Back where we were before
Seems nothin' ever changes
We're back to being strangers
Wondering if we ought to stay
Or head on out the door

Just once
Can't we figure out what we keep doin' wrong
Why we never last for very long
What are we doin' wrong

Just once
Can't we find a way to finally make it right
To make the magic last for more than just one night
If we could just get to it
I know we could break through it

I gave my all
But I think my all may have been too much
Cause Lord knows we're not gettin' anywhere
Seems we're always blowin'
Whatever we've got goin'
And it seems at times with all we've got
We haven't got a prayer

Just once
Can't we figure out what we keep doin' wrong
Why the good times never last for long
Where are we goin' wrong

Just once
Can't we find a way to finally make it right
To make the magic last for more than just one night
I know we could break through it
If we could just get to it
Just once


I want to understand
Why it always comes back to goodbye
Why Can't we get ourselves in hand
And admit to one another
We're no good without each other
Take the best and make it better
Find a way to stay together

Just once
Can't we find a way to finally make it right
Make the magic last for more than just one night
I know we could break through it
If we could just get to it

Just once
we can get to it
Just once

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”  僕はベストを尽くした 

   だけど僕のベストは十分じゃなかったんだ

   だってこうして僕らはまたもといた場所に戻ってしまったから

   何も変わってないみたいだ

   また他人同士に戻って

   ここにとどまるのか ドアの向こうに出ていくのか

   迷いながら

 

   たった一度だけ

   僕らが何を間違っていたのか考えてみないか?

   どうして二人は長続きしないのか

   どんな間違いを犯してきたのか

 

   たった一度だけ

   この魔法をたった一晩じゃなく、もっと長く続かせる方法

   を見つけられないのか?

   ただ、それがわかれば 僕らは乗り越えられるのに

 

 僕はすべてを捧げたけど

 僕のすべては多すぎたのかもしれないね

    だって、神様は僕らがもうどこにもたどり着けないと知っているから

 僕らは何かをやろうとしても いつも台無しにしてきたみたいだ

 たまにすべてを手にしたように見えても

 祈ることを忘れていた

 

 たった一度だけ

 僕らは何を間違ってきたのか考えてみないか

 どうして幸せな時は長く続かないのか

 どこを間違っているのか

 

 たった一度だけ

    この魔法をたった一晩じゃなく、もっと長く続かせる方法

    を見つけられないのか?

    ただ、それがわかれば 僕らは乗り越えられるのに

    たった一度だけ

 

    僕は理解したいんだ

 どうしていつも最後は”さよなら”になってしまうのか

  僕たち手を取り合って 認めあえないだろうか

 おたがいがいなくちゃダメだって 

 

 たった一度だけ

    この魔法をたった一晩じゃなく、もっと長く続かせる方法

    を見つけられないのか?

    ただ、それがわかれば 僕らは乗り越えられるのに

    たった一度だけ

 ベストを尽くして より良くしていこう

 一緒に生きる方法を見つけて

 

 たった一度だけ、、僕たちならできるよ

 たった一度だけ、、                 ”(拙訳)

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 "I did my best  But I guess my best wasn't good enough"

 という導入部の歌詞にいきなり”つかまれる”感じがします。

 

 僕のBESTは十分にGOODじゃなかった。

 

 中学英語で ”GOODーBETTERーBEST”とだんだん程度が強くなるという風におぼえてきた人間にとっては、えっ、BESTがGOODに負けるのか、、とはっとしてしまいます。

 曲後半では

 "Take the best and make it better"

   BESTによってBETTERにしよう、と追い討ちをかけてきます。

 

 こういう風に抜き出してしまうと、すごく技巧的に思えるかもしれませんが、歌の中ではさりげなく切実な心情として響かせているところが見事です。

 

 ちなみに、2番では

 ”I gave my all But I think my all may have been too much”

 今度はALLがTOO MUCHだ、ときます。

 

 こと恋愛においては、僕のBESTを尽くした、僕のすべてを捧げた、というのは当人の完全な独りよがりで、僕のBESTは相手にとってGOODにもならずに、僕のALLは相手にとってTOO MUCHになりうるという、普遍的なことをスパッと言っているわけですね。

 

 この曲を書いたのは、バリー・マン&シンシア・ワイル。アメリカ屈指のソングライター・コンビにして、長年付き添ってきたおしどり夫婦として知られています。

 歌詞を書いたのは奥さんのシンシア・ワイルです。

 この歌詞のような男性の独りよがりが空ぶってしまう状況は、やはり女性の目線でなければ客観的に描けないかもしれませんね。

 

 またこのコンビの代名詞でもある、オンエア数と演奏回数の総計が全楽曲の中で史上2位という名曲「ふられた気持ち」の導入部の歌詞もまた、修復の難しい男女の関係を見事に表したものとして大変有名です。

 

You never close your eyes any more When I kiss your lips

(僕が君の唇にキスしても、君はもう決して目を閉じない)

 

 こちらは、バリー・マンのほうが思いついたフレーズだそうで、確かにこちらは男性目線でしか気がつかないことですね。

 

 

 さて、この曲はクインシー・ジョーンズのアルバム「愛のコリーダ(The Dude)」からのシングルとして全米17位まで上がるヒットになりました。

 

 バリーとシンシアは、クインシーがジョージ・ベンソンをプロデュースすると聞いて、そのために作ったものでした(そのアルバムは「ギヴ・ミー・ザ・ナイト」ですね)。

 

 バリーはもともとシンガーですので、自分のデモはほとんど自分で歌うのですが、ここの曲は本物のR&Bシンガーに歌ってほしくて、人づてに紹介してもらったのがジェイムス・イングラムスでした。

 ジェイムスはアーティストになるためにオハイオからLAに出てきて、レイ・チャールズなど様々なアーティストのバックをつとめたり、デモ・シンガーとして1曲あたり50ドルのギャラをもらいながら、チャンスを伺っていました。

 

 この曲のデモをジェイムスが歌ったときのことをバリーはこう回想しています。

「彼が歌い出した時、シンシアと私は、私たちの耳に入ってきたものが信じられなかったよ!彼は素晴らしかった。シンシアと顔を見合わせたんだけど、私はもう少しで心臓発作を起こしてしまいそうだったよ。とにかく彼はパーフェクトだった!ソウルフルでサテンのように滑らかだと感じたよ」

(「BARRY MANN &CINTHIA WEIL Original Demo,Private Recordings and Rarities」ライナーノーツより)

 

 そして、このデモを聴いたクインシー・ジョーンズはジェームスをいたく気に入って、自分のアルバムのシンガーに採用し、この曲を歌わせることにしました。

 

 そして、ジェームスは一躍スターの座に駆け上がることになったわけです。

 

 

   この曲のカバーとしては、桑田佳祐が”嘉門雄三”名義でリリースした『嘉門雄三 & VICTOR WHEELS LIVE!』でのカバーが、個人的にとても好きでした。

 

 韓国で行われたクインシーの80歳を祝うコンサートでの「JUST ONCE」


James Ingram - Just Once (Live in Korea)

 

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