まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「スウィート・サンデイ・カインダ・ラヴ ( バラ色の日曜日:Sweet Sunday Kinda Love)」ザ・ビーチ・ボーイズ(1978)

 おはようございます。

 今日は日曜日ということで、ザ・ビーチ・ボーイズの「スウィート・サンデイ・カインダ・ラヴ」 を。

www.youtube.com

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There's something special about it
Just what, I can't quite say
But there's no doubt that it's different
From any other day
There are no words to exactly describe
What I'm speakin' of
It's just a sweet Sunday kinda love

We'll read the funnies together
And watch some T.V. too
You can do something for me
And I'll do the same for you
We'll fill the hours with things
That we both most like to do
Spending a sweet Sunday lovin' you

Why don't we unplug the phone?
Let's pretend nobody's home, quietly
Just you and me, oh how nice that will be

All through the week I'll look back upon that
Sweet Sunday time
While looking forward to that special happiness
We'll find
When we awaken to hear from a songbird up above
Sounds of a sweet Sunday kinda love

 

 

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何か特別なものがあるんだ

それが何か、うまく言えないけど

でも間違いなく、他のどんな日とも違ってる

僕が言っていることを正確に表現する言葉はないけど

それは、ただ素敵で、日曜日みたいな恋なんだ

 

二人で新聞のマンガを読もう 

なにかTVも見よう

何か僕にしてくれたら

僕も同じことをしてあげるよ

二人が一番やりたいことで時間を埋めるのさ

君を愛しながら素敵な日曜日を過ごしながら


電話のプラグを抜いてしまおうよ

静かにして、誰も家にはいないと見せかけよう

君と僕だけ なんて素敵なんだろう

次の1週間はずっと、

この素敵な日曜日のことを思い出しているだろう

一方では、二人が見つけるはずの

特別な幸せを楽しみにしながら

僕たちはソングバード(鳴き鳥)が奏でる

素敵な日曜日らしい恋の響きで目を覚ますのさ
                                                      (拙訳)

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 このタイトルの元になっている、ジャズ・スタンダードがあります。

「SUNDAY KIND OF LOVE」。1946年に書かれたもので、エラ・フィッツジェラルド、ダイナ・ワシントン、エタ・ジェイムズから、フォーシーズンズ、ジャン&ディーンといったポップスのアーティストも取り上げています。

 

 僕が好きなのはケニー・ランキンが1975年にリリースしたヴァージョンです。

www.youtube.com

I want a Sunday kind of love
A love to last, past Saturday night
I'd like to know, it's more than love at first sight
I want a Sunday kind of love

(日曜日らしい愛がほしい 長く続く愛 土曜の夜だけで終わるのではなく

知りたい それが一目ぼれより素晴らしいことを 日曜日みたいな愛がほしい)

 

"Sunday kind of love”とは、ひとときの恋じゃなく、”日曜日を一緒に過ごすような永続的な恋愛関係”を意味しているんでしょうね。

 

「スウィート・サンデイ・カインダ・ラヴ」のほうは、日曜日を彼女と一緒に過ごすことを心待ちにしている歌になっていて、1978年にリリースされたアルバム「M.I.U.アルバム」に収録されています。

 

 M.I.Uは”マハリシ国際大学(Maharishi International University)”のことで、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーアイオワ州フェアフィールドに設立した大学です。彼はビートルズのメンバーに瞑想を教えたことで知られていますが、ジョンとジョージはビーチ・ボーイズにも彼を紹介し、メンバーのマイク・ラヴ、アル・ジャーディン、ブルース・ジョンストンは瞑想にハマり、それがドラッグを遠ざけることにも役立ったそうです。

 

 1970年代のビーチ・ボーイズは、バンドの柱であるブライアン・ウィルソンが心身ともに深く病んでしまったことと、彼らのスタイル自体が時代遅れになってしまったことも重なって、作品の評価もセールスも落ち込んでいました。

  しかも、1977年頃にはバンドはメンバー間の意見の相違もあり解散の危機にあったと言われています。

 

 そんな中でメンバーのアル・ジャーディンは自らがイニシアチヴをとってアルバムを作ることを決意します。

「『M.I.U.アルバム』というのは、ブライアンをスタジオに戻すことが目的で作られたので、機材をすべて空輸してMIUにスタジオを建てたんだ。ブライアンにもう一度音楽的に建設的になってもらうことが目的でした、そして、それに成功したと思う」

       (IOWA HISTORY JOURNAL)

 アルとともにアルバムのプロデュースをしたロン・アルトバッハはこう語っています。

「マイク(ラブ)とサックス奏者のチャールズ・ロイドと私は、1977年7月に6ヵ月間のヨーロッパ滞在から戻ってきて、その間、マハリシとアルプスで深い瞑想のコースを過ごしていたんだ。マイクは、グループ全体を浄化するべきだと考えていて、そのためにはアイオワ州のMIUで行うのが一番だと思ったんだ」

       (IOWA HISTORY JOURNAL)

 

 ブライアンに創作に集中してもらうこと、分裂してしまったメンバーの気持ちを浄化すること、バンド最大の危機にあったメンバーが復活をかけて赴いた場所がM.I.Uだったわけです。アルバムのタイトルにするくらいですから、それだけ重だったわけです。

 

 しかし、残念なことに、このアルバムは全米チャート151位、1960年代は半ば以降はアメリカ以上に人気のあったイギリスではチャートインさえしなかったという、彼らのオリジナル・アルバムの中でも”最低”の結果に終わってしまいます。

 All MusicやRolling Stoneなどアメリカでの評価もひどいものでした。

 ただ、日本のビーチ・ボーイズの出版物をいろいろ見ると、このアルバムの評価はそれほど低くはありません。

 僕自身も結構好きなアルバムでもあります。前の2作のアルバムが散漫な印象だったのに対して、全体的によくまとまっています。

 特にこの「スウィート・サンデイ・カインダ・ラヴ」は、彼らの傑作「ドント・ウォーリー・ベイビー」を彷彿させるような雰囲気があります。

 歌詞の内容も、恋するティーンエイジャーのを無垢に夢想という、いかにもビーチ・ボーイズらしい世界観で(この曲を書いたブライアン・ウィルソンマイク・ラヴもこの頃30代後半でしたが)、1960年代に発表されていてもおかしくないと思いました。

 

 ポップスは”大人にならない音楽”、そんな風に僕は思っているのですが、ビーチ・ボーイズはまさにそれを体現してくれるようなグループなんです。

 

 実は、この曲のカバーがあります。

 歌っているのはブライアン・ウィルソンの最初の奥さん、マリリンを中心とした女性グループ、ザ・ハニーズ。彼女たちは1960年代にブライアンのプロデュースで作品をリリースしているので、ビーチ・ボーイズのファンにはよく知られています。

 

 彼女たちは1980年代に復活し、1986年にスウェーデンだけで「It's Like Heaven」というアルバムをリリースしていて、そこに収録されていました。これは過去の作品や未発表音源などを集めたもののようです。

 

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