まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「素敵じゃないか(Wouldn't It Be Nice)」ザ・ビーチ・ボーイズ(1966)

 おはようございます。

 今日はビーチ・ボーイズ

 結成が1961年といいますから、60年(!)近くも活動しているバンドです。

 名前がしめす通り、サーフィン・ミュージック、サーフ・ロックのグループですが、今ではビートルズとともに”ポップス”を芸術の域にまで高めたクリエイティヴなバンドとして評価されています。

 それはひとえに、メンバーのブライアン・ウィルソンによるものです。

 ビートルズのプロデューサー、ジョージ・マーティン

「ポップ・ミュージックの世界で現存する天才を一人挙げなくてはならないとしたら、わたしはブライアン・ウィルソンを選ぶ」

 と言っていたそうです。あの、ポール・マッカートニーを差し置いて、です。

 

 さて、この「素敵じゃないか」は21世紀に入って映画「50回目のファースト・キス」や日本の映画「陽だまりの彼女」などで使われたことによって、どんどん人気曲になってきました。

 Spotifyを見ると、彼らの曲で最も再生されていました。これはちょっと驚きです。

 昔はそこまで有名じゃなかったからです。80年代くらいまでは、他のビーチ・ボーイズのヒット曲と比べても、ラジオで聴くこともほとんどありませんでした。この曲が収録されているアルバム「ペット・サウンズ」がロック史上最高の名盤のひとつとして評価されるされるにつれ、アルバムからのシングルでかつ最もポップなこの曲が注目されるようになっていきました。

 

 いったい何が、素敵じゃないか?というと、「大人になること」です。

 恋をして彼女とずっと一緒にいたいのに、まだ親の許しが必要な年代の男の子が

 そんなに待つことなく大人になれればいいなあ、そうしたらずっと君と一緒に入れるのに、と願っている歌なのです。

    歌詞を書いたのはブライアンじゃなく、トニー-アッシャー。ただし、歌詞のテーマは二人で考えています。

 

「女の子と一緒にいたいというお願いを両親にしなくてもいいって、どんな気持ちだろうね?すべての権威ぶった声を無視して自分の内なる声だけに耳を傾けていればいいって、どんな感じだろうね」(「ブライアン・ウィルソン自伝」)

 

 誰もが、子供のころ早く親や大人たちに指図や束縛されずに自分で何でもできるようになりたい、と思いますよね。

 でも、いざ大人になってみるとそんなにいいもんじゃない、面倒くさいことばかりだと、気づいちゃうわけです。そして、早く大人になりたいと願ったあのときこそが一番いい時代だったと知るのです。

 この歌にはそんな心情がこめられているわけです。

 僕も、あんな訳もなくやたらと情緒不安定だった十代になんて戻らなくてもいいや、とも思いながら、たしかに自分の人生の中では特別な時期ではあったなあとは思います。

 

 ブライアン・ウィルソンの書いたビーチ・ボーイズの曲を聴く、ということは、まだ無垢だったころの自分をよみがえらせることでもあります。

 バンド名をビーチ・ボーイズという名前にしたのは他意のないものだったと思いますが、その「ビーチ」「夏」「少年」というイメージが象徴するような”イノセント”、純粋無垢さそのものが、ブライアン・ウィルソンにまるで”呪い”のようにとりつきます。

 それが、他の誰も作れないような楽曲を生み出す要因となり、実生活では彼の心をむしばんでいきます。

 「ペット・サウンズ」というアルバムは、メロディ、サウンド、コーラスといった音楽的な意味でも歴史的な素晴らしい達成でもありますが、作品全体の真ん中にティーンエイジャーの少年のイノセンスがある、それがこのアルバムを永遠に魅力ある作品にしている理由がある、と僕はとらえています。

 そう考えると、ビーチ・ボーイズの名前にふさわしい夏っぽいサーフィンやビーチの曲じゃなく、「素敵じゃないか」のような無垢なティーン・エイジャーのラブ・ソングが50年以上たって人気NO.1になったということは、十分納得できることだな、と思いました。

 


The Beach Boys - Wouldn't It Be Nice (Original Video)

 

素敵じゃないか (The Stereo Mix; 2000 Digital Remaster)

素敵じゃないか (The Stereo Mix; 2000 Digital Remaster)