まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「素敵じゃないか(Wouldn't It Be Nice)」ザ・ビーチ・ボーイズ(1966)

 おはようございます。

 今日はビーチ・ボーイズの「素敵じゃないか」です。


The Beach Boys - Wouldn't It Be Nice (Original Video)

 

Wouldn't it be nice if we were older?
Then we wouldn't have to wait so long
And wouldn't it be nice to live together
In the kind of world where we belong?


You know it's gonna make it that much better
When we can say goodnight and stay together


Wouldn't it be nice if we could wake up
In the morning when the day is new?
After having spent the day together
Hold each other close the whole night through

 

But happy times together we've been spending
I wish that every kiss was never-ending
Oh, wouldn't it be nice?


Maybe if we think and wish and hope and pray, it might come true
Oh, baby, then there wouldn't be a single thing we couldn't do
Oh, we could be married (Oh, we could be married)
And then we'd be happy (And then we'd be happy)
Oh, wouldn't it be nice?


You know it seems the more we talk about it
It only makes it worse to live without it
But let's talk about it
But wouldn't it be nice?


Goodnight, my baby
Sleep tight, my baby,,,

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素敵じゃないか?僕たちもっと年をとったら
そうすれば、そんなに長く待つこともないよ
そして、一緒に暮らせたらよくないかい?
僕たちにふさわしい世界で


ずっとうまくやれるだろう
おやすみなさいと言って、一緒にいられるなら


素敵じゃないか?目覚めることができたら
新しい1日がはじまる朝に
一日を一緒に過ごした後は
一晩中ぎゅっと抱きしめあうのさ

 

だけど、一緒に過ごしてきた幸せな時間に
僕は願うよ、すべてのキスが永遠に続くように
ああ、素敵じゃないかい?

 

たぶんもし、二人で考えて、願って、望んで、祈れば、
叶うかもしれない
そうすれば、できないことなんてひとつもない
ああ、僕たちは結婚して
そして、幸せになれる
ああ、素敵じゃないかい?

 

そんな話をすればするほど、

それなしではいられなくなっちゃう
だけど、話そうよ
でもさ、素敵じゃないかい?


おやすみなさい、僕のベイビー
ぐっすりおやすみ、僕のベイビー、、、   (和訳)

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 ビーチ・ボーイズは結成が1961年といいますから、60年(!)以上も活動しているバンドです。

 名前が示す通り、サーフィン・ミュージック、サーフ・ロックのグループですが、今ではビートルズとともに”ポップス”を芸術の域にまで高めたクリエイティヴなバンドとして評価されています。

 それはひとえに、メンバーのブライアン・ウィルソンによるものだと言っても過言ではないでしょう。

 ビートルズのプロデューサー、ジョージ・マーティン

「ポップ・ミュージックの世界で現存する天才を一人挙げなくてはならないとしたら、わたしはブライアン・ウィルソンを選ぶ」

 と言っていたそうです。彼の身近にいる、あの、ポール・マッカートニーを差し置いて、です。

 

 そのブライアンが、絶対に台無しにしたくないと何度も何度も録音し直して完成させらのがこの「素敵なじゃないか」です。

 

 この曲で彼が追い求め表現したかったのは「A GREAT FEELING OF GREAT JOY」

(素晴らしい喜びの素晴らしいフィーリング)だったと語っていて、僕もこの曲はイノセントな年頃のこわれそうな最上級の喜びを表現することを達成した稀有な大傑作だと思っています。

 

 さて、この「素敵じゃないか」は21世紀に入って映画「50回目のファースト・キス」や日本の映画「陽だまりの彼女」などで使われたことによって、若い世代にも、日本でもどんどん人気の曲になってきています。

 

 Spotifyを見ると、彼らの曲で最も再生されていました。これはちょっと驚きです。

 昔はそこまで有名じゃなかったからです。80年代くらいまでは、他のビーチ・ボーイズのヒット曲と比べても、ラジオで聴くこともほとんどありませんでした。この曲が収録されているアルバム「ペット・サウンズ」がロック史上最高の名盤のひとつとして評価されるされるにつれ、アルバムからのシングルでかつ最もポップなこの曲が注目されるようになっていきました。

 

 いったい何が、素敵じゃないか?というと、「大人になること」です。

 恋をして彼女とずっと一緒にいたいのに、まだ親の許しが必要な年代の男の子が”そんなに待つことなく大人になれればいいなあ、そうしたらずっと君と一緒に入れるのに”、と願っている歌なのです。

    歌詞を書いたのはブライアンじゃなく、トニー-アッシャー。ただし、歌詞のテーマは二人で考えています。

 

「女の子と一緒にいたいというお願いを両親にしなくてもいいって、どんな気持ちだろうね?すべての権威ぶった声を無視して自分の内なる声だけに耳を傾けていればいいって、どんな感じだろうね」(「ブライアン・ウィルソン自伝」)

 

 誰もが、子供のころ早く親や大人たちに指図や束縛されずに自分で何でもできるようになりたい、と思いますよね。

 でも、いざ大人になってみるとそんなにいいもんじゃない、面倒くさいことばかりだと、気づいちゃうわけです。そして、早く大人になりたいと願ったあのときこそが一番いい時代だったと知るのです。

 この歌にはそんな心情がこめられているわけです。

 僕も、あんな訳もなくやたらと情緒不安定だった十代になんて戻らなくてもいいや、とも思いながら、たしかに自分の人生の中では特別な時期ではあったなあとは思います。

 

 ブライアン・ウィルソンの書いたビーチ・ボーイズの曲を聴く、ということは、”若い時代の無垢さ”を真正面からつきつけられることでもあります。

 そして、バンド名をビーチ・ボーイズという名前にしたのは他意のないものだったと思いますが、その「ビーチ」「夏」「少年」というイメージが象徴するような”イノセント”、純粋無垢さそのものが、ブライアン・ウィルソン自身にまるで”呪い”のようにとりつきます。

 それが、他の誰も作れないような楽曲を生み出す要因となり、実生活では彼の心をむしばんでいきます。

 サーフィンや車の歌を作っていた頃は、まだ歌詞にも仲間とワイワイやる社交的な面もありましたが、ブライアンが家に引きこもるようになると、その”純度”はあがってゆくことになります。

 「ペット・サウンズ」というアルバムは、メロディ、サウンド、コーラスといった音楽的な意味でも歴史的な素晴らしい達成でもありますが、作品全体の真ん中にティーンエイジャーのイノセンスがある、それがこのアルバムを永遠に魅力ある作品にしている理由がある、と僕はとらえています。

 そう考えると、ビーチ・ボーイズの名前にふさわしい夏っぽいサーフィンやビーチの曲じゃなく、「素敵じゃないか」のような無垢な、ある意味普遍的なティーン・エイジャーのラブ・ソングが50年以上たって人気NO.1になったということは、十分納得できることだな、と僕は思います。

 

 追記:2022年9月にこの曲の新しいミュージック・ビデオが制作されました

www.youtube.com

 

 ロック史上最高のアルバムの一つに必ず挙げられる「ペットサウンズ」。いま売られているのは、オリジナルのモノラルのヴァージョンと1997年に作られたステレオミックスをCD一枚にまとめてあって、まさに「素敵じゃないか」(すみません、、

 

 ピュアで嘘のない語り口が、すごく切なく感じさせることがあって、個人的に大好きな自伝です

 

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