まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー(Will You Love Me Tomorrow)」シュレルズ(1960)

 おはようございます。

 今日はシュレルズの「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー」です。

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Tonight you're mine, completely
You give your love so sweetly
Tonight the light of love is in your eyes
But will you love me tomorrow

Is this a lasting treasure
Or just a moment's pleasure
Can I believe the magic in your sighs
Will you still love me tomorrow

Tonight with words unspoken
You say that I'm the only one
But will my heart be broken
When the night meets the morning sun

I'd like to know that your love
Is a love I can be sure of
So tell me now and I won't ask again
Will you still love me tomorrow

So tell me now and I won't ask again
Will you still love me tomorrow
Will you still love me tomorrow
Will you still love me tomorrow

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今夜あなたは私のもの、間違いなく

私に愛をくれるの、とてもやさしく

今夜あなたの瞳に愛の灯りがともる

だけど、明日も私を愛してくれるの?

 

この恋は永遠の宝物なの?

それともひとときの楽しみ?

あなたの吐息の魔法を信じていいの?

明日も私を愛してくれる?

 

今夜言葉にすることなく

あなたは私がただ一人の人だと伝えてくれた
だけど私のハートはこわれてしまいそう

この夜が朝日に出会う頃には

 

私は知りたいの

あなたの愛が私にとって確かなものなのか

だから今教えて、もう二度と訊かないから

明日も私を愛してくれる?

 

だから今教えて、もう二度と訊かないから

明日も私を愛してくれる?

明日も私を愛してくれる?

明日も私を愛してくれる?             (拙訳)

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 けっこう年をとっている僕でさえ(?)まだ生まれていなかった時代のヒット曲なので、若い頃はいわゆる”オールディーズ”のひとつとして聴いていたのですが、年とともにこの曲のすごさをひしひしと感じるようになりました。

 例えて言うなら、世界に数多あるティーン・エイジャーを描いたラブ・ソングをすべてかき集めて、“ろ過”を延々と繰り返してゆくと最終的にこの曲が残る、とでもいいますか。

 余計なものは何一つなく、ラブソングの大事なエッセンスだけが凝縮されているように思えるのです。

 本心では不安がいっぱいで永遠を約束して欲しいという気持ちを歌にしながら、最後の一行は”ずっと愛してくれる?”じゃなくて”明日も愛してくれる?”とする、ところは本当に見事です。

 

 この歌詞を書いたのはジェリー・ゴフィン。男性なんです。そして作曲は彼のパートナー、キャロル・キングです。

 若い女の子の気持ちがあまりに自然に描かれているので、多くの人が歌詞もキャロルが書いたと思いこんでいたといいます。

 キャロルはジェリーのことを

「彼は人間の本性を男女を超えて理解できる人」(「キャロル・キング自伝」)

 と評しています。

 かつて松田聖子松本隆のことを、女の子以上に女の子の気持ちをわかる歌詞を書く、といったことを話していたのをおぼえていますが、そういう作詞家の元祖はジェリー・ゴフィンになるのかもしれませんね。

 

 さてシュレルズ(The Shirelles)はアメリカ、ニュージャージー出身の黒人女性4人グループ。メインボーカルのシャーリー・オーウェンズ(Shirley Owens)のShirleyの前半の音節と、当時人気のあった黒人ガール・グループ”シャンテルズ”(The Chantels)の語尾-elsを合わせて、シュレルズになったのだそうです。

 当初は”シャネルズ”(Chanels)が候補だったそうですが、シャンテルズと似過ぎているので、シャーリーが自らが自分の名前をもじったシュレルズを提案し、他のメンバーはしぶしぶ同意したようです。

 

 1958年にレコードデビュー、最初のヒットは「Tonight's the Nightという曲でした。(全米39位R&B14位)


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  この当時、アメリカのポップス・ヒットの多くは音楽出版社と契約する作家たちが書いたものですが、その中でもニューヨークのブロードウェイを中心とするエリアがその”メッカ”となっていました。

 そして、シュレルズの次の曲を獲得しようと、各音楽出版社は躍起になったわけですが、その中でもキャロル・キングとジェリー・ゴフィンが所属する”アルドン・ミュージック”は気合が入っていて、契約作家全員にせっせとハッパをかけて曲を書かせました。

その中で選ばれたのがこの曲で、シュレルズのレコード会社の社長とプロデューサーにプレゼンした結果、すぐに気に入られ、そのままキャロルはレーベルのスタジオでデモを録ったそうです。

  当初キャロルが弾き語りで歌ったデモをシャーリーは、カントリー&ウェスタンっぽくて嫌だと難色を示したそうですが、もっとポップにアレンジすると説得したと言われています。

 アレンジの一番の特徴はストリングスでそれを提案したのはジェリーだったそうです。ストリングス・アレンジはキャロルがやることになりました(彼女にとっての初の弦アレンジでした)。

 そのアレンジの参考にしたのが、ジェリー・リーバー&マイク・ストーラーがプロデュースしたドリフターズの「ゼア・ゴーズ・マイ・ベイビー」だったそうです。R&Bコーラスに弦やティンパニーなどクラシック楽器を合わせることは当時大変に画期的なことでした。

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 そしてこの曲は全米1位に輝きます。これは黒人女性グループで史上初の快挙でした。

まだ駆け出しだったキャロル・キングとジェリー・ゴフィンにとっても初めてのNO.1になります。この曲が100万枚を超えると、アルドン・ミュージックのトップ、ドン・カーシュナーはリムジンをチャーターしキャロルをピックアップさせてから、ジェリーの職場まで行かせ直接その報告をさせました。それまで日中は化学者(!)として仕事をしていたジェリーはその報告を聴くと、間もなく仕事を辞め、二人とも音楽の仕事に専念できるようになったそうです。

 

 この曲が大ヒットした1961年にシュレルズはもう1曲、日本のポップス・ファンにもお馴染みの、ビートルズがカバーしたことでも知られるヒット曲を出しています。「ベイビー・イッツ・ユー」。作曲したのはバート・バカラックです。

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最後に「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ」のカバーを。

 

 やはり一番有名なのは作者キャロル・キング本人によるカバー。名盤「つづれおり」の収録されています。

 コーラスはジェイムス・テイラージョニ・ミッチェル。当時恋人同士だった二人は仲良さそうに並んで歌っていたそうです。キャロルのボーカルにジョニのコーラスが重なるところは何度聴いてもぐっときてしまいますね。

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 1970年代にはこのカバーも隠れた人気がありました。デイヴ・メイソンフィル・スペクター風のドラムはジェフ・ポーカロです。

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   1983年のディオンヌ・ワーウィックのカバーでは、シュレルズがゲスト参加、冒頭はシャーリーがメインを歌っています。プロデュースはルーサー・ヴァンドロス、弦アレンジはジミー・ウェッブ。

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   この曲のカバーは本当にたくさんありますが、1960年代はシュレルズのポップス風、キャロル・キング以降はバラードでのカバーが多いですね。

 ローラ・ニーロスモーキー・ロビンソンロバータ・フラック、フランスワーズ・アルディ、ブライアン・フェリー、エイミー・ワインハウスビー・ジーズ、、、本当に興味深いカバーばかりですので、ぜひ一度チェックしてみてください。

 

キャロル・キング「つづれおり」の代表曲 

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