まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「スノウ・クイーン(Snow Queen)」シティ(1968)

 おはようございます。

    今日はキャロル・キングが在籍したグループ”シティ(The City)”の「スノウ・クイーン」です。

 


Snow Queen

 

 ” 雪に覆われた山の高みで

    彼女はその玉座から

    若さが泉の中で見つかると思っている

    道化師たちを見下ろしている

 

    ダンスのリズムが高まってゆく中で

    彼女は視界に入ってくる男たちに微笑みかける 

    だけど彼女は決して彼らとは踊ることはないだろう

 

  エレクトリック・サウンドが鳴り響く

  煙が立ち込めた部屋で

  スノウ・クイーンにまつわる伝説が作られてゆく

 

  あなたは自分が勝者だと思っているかもしれないけど

        彼女にかかれば すぐにうちのめされて

  自分がただのひよっこだってわかるわ

 

        あなたは自分が敗者だとは思ってないかもしれないけど

         空中に吊るされて  うまくしゃべれなくなるの

   それがただ彼女を楽しませるだけ

 

         朝靄の中で そこに凍りついたまま

    氷のまなざしにとらえられるの スノウ・クイーンの

 

   だめよ、 

         あなたが売りつけようとするものなんて彼女は欲しがらないわ

         行きなさい どこかに隠れる場所があるはず

 

   あなたは夜の中に消えてゆく

   自分がゲームに負けたことと

   彼女がなぜスノウ・クイーンと呼ばれるのかだけは

   思い知らされて”

                              
                                                                                                   (拙訳)

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High on a snow covered mountain
From her throne she looks down at the clowns
Who think youth can be found in a fountain


High on the wings of a rhythm
She will smile at the guys who come on with her eyes
But she'll never dance with them

And in smoke filled rooms of electric sound
A legend is built around... The Snow Queen

You may believe you're a winner
But with her you'll soon bite the dust
And discover you're just a beginner


You may not think you're a loser
But in mid-air you'll be hung out
You trip on your tongue
And it'll only amuse her

In the morning haze you are frozen there
Caught in the icy stare of The Snow Queen

No my friend she doesn't want what you're selling
Go, my friend there must be a place you can hide

And into the night you'll fade knowing you lost the game
And that's just how she got her name of The Snow Queen

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   先日「アナと雪の女王2」のビデオを家族で見ていたときに、なんとなくこの曲を思い出したのですが、歌詞をあらためて読むと、雪の女王の話ではなかったですね、、。

 

 

  さて、この曲が冒頭に収録されたシティのアルバム「夢語り(Now That Everything's Been Said」は、キャロル・キングが「ロコモーション」(リトル・エヴァ)をはじめとする大ヒットを量産していたヒット作家から、名盤「つづれおり」に象徴されるようなシンガー・ソングライターへと変貌する、大きな”変換点”となった作品です。

 

 1960年代前半は、彼女のような職業作家の作った曲をシンガーが歌いヒットさせるというシステムがポップ・ミュージックの中心でしたが、ビートルズの登場から一変、自ら曲を書くアーティストが増え、職業作家の仕事が減ってしまいます。

 

 また彼女の夫であり、彼女の曲の大事な作詞家である、ジェリー・ゴフィンはボブ・ディランに衝撃を受けたせいで、ポップスの歌詞を書く自分を卑下するようになったそうで、それに加えドラッグにおぼれるようになり、そのせいで、夫婦間の亀裂が深くなっていったといわれています。

 

 そして、ジェリーは住んでいたマンハッタンを離れひとりでカリフォルニアに行ってしまったそうですが、子供たちを父親から引き離すわけにはいけないと感じた彼女もカリフォルニアに移住することを決意します。

 

  ジェリーとの関係は元には戻りませんでしたが、彼女を支えてくれる人物が現れます。

 ベーシストのチャールズ・ラーキーです。彼は、キャロルとジェリーが面倒を見ていたミドル・クラス(The Myddle Class)というバンドのメンバーでした。

 

 キャロルとジェリーが曲を書き、ジェリーがプロデュースしたミドル・クラスのシングル


MYDDLE CLASS-I HAPPEN TO LOVE YOU

 

 ミドル・クラスが空中分解した後、彼はファグスというバンドに入りLAでのライヴにキャロルを招待したことがきっかけに仲が深まるようになり、彼もニューヨークからLAに移住することに決めます。

 

 また、元ファグスのメンバーで、別のバンドから引き抜かれてカリフォルニアにやってきていたのが、ギタリストのダニー・コーチマーでした。そのバンドもうまくいかず、仕事があまりない状態でした。

 

 チャーリーとダニーは腕を磨くために、キャロルの家にやってきて日々ジャム・セッションを行うようになります。

 当初、キャロルは彼らに食事を出してあげるだけだったそうですが、自分が作った曲を試しに演奏してほしくて、一緒にセッションに加わるとどんどん盛り上がっていき、

チャーリーとダニーは、キャロルのバック・バンドをやるから、レコーディングやライヴをやろうと彼女を説得し始めたそうです。

 

 そして、彼女が所属していた音楽出版社でかつて西海岸担当をしていて、現在はレコードレーベルを主宰しているルー・アドラーに連絡し、彼女たちの演奏を見てもらうことにします。

 ライヴを見たアドラーは契約を即決しますが、最初はキャロルのソロ、という条件だったそうです。

 しかし、3人でやりたいと彼女が主張したため、アドラーも折れます。そして、3人ともニューヨーク出身なので”The City”というバンド名にしようと提案したのはダニー・コーチマーだったそうです。

 

 曲はジェリーとすでに作ってあった曲をメインに、彼女がLAにきてから知り合った女性作詞家トニ・スターンやミドル・クラスのボーカリストで作曲家だったデイヴ・パーマーとの共作、そして、マーガレット・アリソンの曲を加えました。

 

 メンバー全員が満足する仕上がりになりました。

 

 「私たちはみな、とてつもなく幸運だと思っていた。何知りアルバムが完成したとき、最高の出来だと確信できたのだ」

 「チャーリーもダニーも私も、遅くとも数週間でチャートのトップにおどり出ると予測していた」

         (「キャロル・キング自伝 ナチュラル・ウーマン」)

 しかし、アルバムは全米チャートに一度も顔を出すことなく終わってしまいました。

 子供を育てていたキャロルは、契約条件にプロモーションのツアーやライヴをやらないとしていたので、そのことの影響もあったのかもしれません。

 

 キャリアの初期にシングル盤はリリースしていたものの、自分が主役になることを頑なに避け続けてきたキャロルを、ソロ・アーティストになる最初のきっかけになったのが、このシティでした。

 ダニー・コーチマーものちに

「バンド名は一応あったものの、これは全編キャロルのレコードだ」

 と語っています。

 

 そして、ルー・アドラーは彼女にあらためてソロ・アーティストとして契約したいと提案し、チャールズやダニーもそれを後押ししました。

 そして、ダニー経由で知り合っていたジェイムス・テイラーのバックを彼女がはじめたときに、彼が自分のステージで彼女にリード・ボーカルを半ば強引にとらせたことが彼女の”スウィッチ”を入れることになります。

 

 彼女の自伝を読むと、初恋の人でもあったパートナーのジェリー・ゴフィンや子供達を自分のことよりも常に優先していて、自分からスポットライトを浴びることを避けていたことが伝わってきますが、やはりこれほどの才能になると、まわりが放っておかないし、音楽の神様が導いていったのかな、というようなことを考えてしまいます。

 

 ただ、一つ大きいのはブルックリンで生まれた生粋のニューヨークっ子の彼女が、一大決心して西海岸に移住したことが、彼女の運命を大きく動かしたことは確かです。

運命を変えるのは、いつも自分自身の決断とアクション、そして人の繋がりだというのがわかります。

 

 ともかく、そういった流れに乗るように彼女はソロ・アーティストとして歩み出し、1970年にアルバム「ライター」、そして1971年には不世出の名盤「つづれおり」を発表します。

 もちろん、その演奏陣にはシティのチャールズ・ラーキーとダニー・コーチマーも含まれていました。

 ダニーは、後年シティのアルバムが再評価され復刻された時にライナーノーツにこう書いている。

「ザ・シティのアルバムは今もなお、キャロルの作曲テクニック、ルー・アドラーの伝説に残るプロダクションの感性、ジム・ゴードンの驚異的な音楽性を映し出した、最高の作品だ。

 不朽の名盤「つづれおり」の種が、ここに蒔かれている。」

 

 

  さてこの曲、かつてのソフト・ロック渋谷系ファンにはその聖典的アルバム「ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ」に収録されていることで知られています。

   調べてみると、「ロジャー・ニコルス・トリオ」名義でこの曲を先にシングルとしてリリースしていて、これがどうやら本家のシティより先だったようです。

 なので、「スノウ・クイーン」のオリジナルは”ロジャー・ニコルス・トリオ”ということになりそうです。


Snow Queen

 このジャンルは超マニアックな人が多いので、遠慮なくマニアックな方向に行きますが(笑、ロジャー・ニコルスとシティとほぼ同じ時期に、シカゴの”ビザンティン・エンパイア”なるすごい名前のグループがこの曲をカバーしていて、ニューヨークのエイミー(AMY)レコードからシングルを出していました。


THE BYZANTINE EMPIRE - SNOWQUEEN

  当時彼らのレコード会社やプロデューサーは、西海岸で売れていた”アソシエーション”へのウィンディ・シティ(シカゴのこと)からの回答だとたとえられたかった、などという記述もありました。

 

 その、アソシエーションものちに(1972年)にこの曲をカバーしていました。


The Association - Snow Queen

 

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