まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。(現在は不定期で更新中)古今東西のポップ・ソングのエピソード、和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ(NIche)”なものになってしまったのかもしれませんが、みなさんの毎日の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出なども絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ミッドナイト・ブルー(Midnight Blue)」メリサ・マンチェスター(Melisa Manchester)(1975)

 おはようございます。

 今日はメリサ・マンチェスターの「ミッドナイト・ブルー」です。

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Whatever it is, it'll keep till the morning
Haven't we both got better things to do?
Midnight blue
Even the simple things become rough
Haven't we had enough?

And I think we can make it
One more time
If we try
One more time for all the old times

For all of the times you told me you need me
Needing me now is something I could use
Midnight blue
Wouldn't you give your hand to a friend?
Maybe it's not the end

And I think we can make it
One more time
If we try
One more time for all the old times
Midnight blue

I think we can make it
I think we can make it
Oh, wouldn't you give your heart to a friend?
Think of me as your friend

And I think we can make it
One more time
If we try
One more time for all of the old, old times

One more time
I think we can make it
If we try
I think we can make it
If we try
Looks like we're gonna make it
Looks like we're gonna make it
If we try
I think we can make it

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それが何であっても、朝まで続くのね
二人とももっとマシなことができたんじゃない?
ミッドナイト・ブルー
簡単なことでさえつらくなってしまう
もう十分じゃない?

それで、私たちならやれると思う
もう一度
もし、やってみたなら
もう一度、昔のように

あの頃はずっと、あなたは私を必要としていると言ってくれた
今私を必要としているものは、私が使うことができるもの
ミッドナイト・ブルー
友達に手を差し伸べてくれない?
たぶん、それは終わりじゃない

そして、私たちならできると思う
もう一度
もし、やってみたなら
もう一度、昔のように

私たちならできると思う
私たちならできると思う
友達に心を預けてみませんか?
私をあなたの友達だと思って

そして、私たちならできると思う
もう一度
もし、やってみたなら
もう一度、昔のように

もう一回だけ
私たちならできると思う
やってみたなら
私たちならできると思う
やってみたなら
私たちならできるように思うの
私たちならできるように思うの
もしやってみたなら
私たちならできると思う

                       (拙訳)

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「ミッドナイト・ブルー(Midnight Blue)」の楽譜はこちら

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 ミッドナイト・ブルーはとても濃く深い青色のことですが、真夜中に物思いに耽る気持ちと重ね合わせることができるので、歌のタイトルに使われた例はいくつか思い浮かびます。ただ、この曲は深いブルーな気持ちでいながら、そこにとどまらずに、でも、なんとかやれるはず、と自らを何度も励ますところに説得力を感じます。

 

 メリサ・マンチェスターブロンクス生まれのシンガーソングライター。お父さんがニューヨーク・メトロポリタン・オペラのファゴット奏者で、彼女も音楽教育をしっかり学んだようで、15歳でコマーシャルのジングルを歌い始め、高校時代には音楽出版社のスタッフ・ライターをやっていました。それから、16歳のときにシングルを一枚だしています。珍しいのでそちらを聴いてみましょう。

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 彼女はニューヨーク大学ではポール・サイモンが教えるソングライティングのクラスを受講していたそうで、1971年にジングルの仕事を通してバリー・マニロウと知り合い(バリーは売れる前はCMやジングル制作の仕事をしていました)、彼からベッド・ミドラーを紹介されて、彼女のバック・シンガーの一員として採用されました。 

 そして、1972年ベッド・ミドラーのコンサートの楽屋で、彼女はキャロル・ベイヤー・セイガーと出会い、彼女から一緒に曲を作ろうと提案されます。そして、それが彼女たち両方にとって大きなターニング・ポイントになりました。

 

 1973年に彼女はベル・レコードからデビューし、1974年にファースト・アルバム「Home to Myself 」をリリースしますが、10曲中6曲が二人の共作になっています。翌年にはセカンドアルバムを発売しますが、セールス的にはうまくいかず、ベル・レコードはクライヴ・デイヴィスが新たに発足させたアリスタ・レコードに吸収され、多くのアーティストが契約解除されることになりました。

 

 メリサとキャロルがこの「ミッドナイト・ブルー」を書いたのは1973年のことだったそうです。メリサは自分で歌うつもりはなく、ディオンヌ・ワーウィックに歌ってほしいと思い、彼女とつながりのあるヴィニ・ポンシアに聴かせたそうです。ポンシアは、フィル・スペクター作品や「ニューヨークは淋しい町」のトレイド・ウィンズで知られる人です。

 ポンシアはメリサ本人が歌うべきだと考えたようで、彼女のベル・レコードのプロデューサーとの契約が切れるまで待とうと判断します。その間、彼女はダスティ・スプリングフィールドに直接持ち込んで断られていたそうです。

 そして、ベル・レコードとの契約が終わった段階で、ポンシアはこの曲をクライヴ・デイヴィスに聞かせると彼からゴーサインが出て、アリスタからリリース、見事に大ヒット(1975年全米6位)になりました。この曲はメリサを一躍有名にし、キャロルの作詞家としての大きな実績にもなったのです。

 

 メリサはこう回想しています。

「キャロルと一緒に作った曲は...すべて会話から生まれたものです。だから、曲のトーンはとても会話っぽくなっているの。リスナーはいつも、まるで最初の一行が発せられた瞬間に居合わせたような感じになるの」

                (Wikipedia

「キャロルと私はお互いの若い夫について、そして、若い女性としてあらゆる人間関係が持つ困難な時期をどうやって乗り越えるかについて話していたの。
この歌はその会話から生まれたから、会話するようなトーンがそのまま残っているの」

                (Chicken soup for the soul )

 

 若い夫婦が困難を乗り越えたいと願う歌なんですね。ミッドナイト・ブルーとは”困難な時期”のことを指すのでしょう。

 特にキャロルはレコード・プロデューサーだった夫アンドリュー・セイガーと離婚したばかりで

「アンドリューがこの曲を聴いて、彼がどんな方法であれ私たちを元に戻せるように努力してくれることを願っていました」とのちに自叙伝で語っていたそうです。

  共にニューヨークで生まれ育った才女二人が、プライベートな本音をいろいろ語り合いながら、そこからたくさん曲を書いていったんですね。

 

 キャロルとの繋がりが功を奏した他の例としては、キャロルがピーターと一緒に書いた「あなたしか見えない(Don't Cry Out Loud)」も、メリサはピーターが歌うのをいち早く聴くことができ、ピーターより先にレコーディングしてヒットさせています。

(1978年 全米10位)

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 また、この曲の入った同名のアルバム「あなたしか見えない(Don't Cry Out Loud)」は日本のAORファンから大変人気のあるアルバムでもあります。

 いかにもニューヨークのシンガー・ソングライターという雰囲気の濃かった彼女の最大のヒットは、意外にも80’sポップスに思いっきり乗っかった(?)この曲でした。

 

 1982年全米5位「気になるふたり(You Should Hear How She Talks About You)」

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  作曲したのはトム・スノウ。当時もっともヒットのツボを押さえた作家の一人で”トム・スノウみたいな作家求む”という広告が多く出ていたという話を聞いたことがあります。作詞は、のちに映画「フットルース」の原作を書き、サントラの曲の作詞を全部手がけて爆儲けしたディーン・ピッチフォードですから、完全に売れ線狙いだったんでしょう。

 その後、彼女は大ヒットこそはありませんが、現在までコンスタントに活動しています。

  最後はメロウなグルーヴで人気の曲を。「いつも一緒に(I Wanna Be Where You Are)」(1977年チャートインせず)。レオン・ウェア作、オリジナルは若いマイケル・ジャクソンです。

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「いつも一緒に」収録

 

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