おはようございます。
今日はドゥービー・ブラザーズの「ホワット・ア・フール・ビリーヴス」。当時は「ある愚か者の場合」なんて邦題がついていました。
” ヤツは彼女の遥か過去からやってきた
センチメンタルで愚かなそいつは
彼女の人生で”一度もなかった”ことを
”もう一度やろう”と自分が必死になっていることを
わかってないのさ
ヤツの昔話に彼女は精一杯笑顔を作って
彼の本心には絶対近寄らないようにした
寄りを戻すなんてありえないとはっきり気づいただけで
ヤツの人生にはかつて彼女の場所があった
けっして彼女をもう一度考えさせなかった
彼女がごめんなさいと言って席を立って、彼も立ち上がるとき
その場にいた他の人だけはちゃんとわかっている
立ち去る彼女を彼が見送るはめになることを
でも、ヤツが見ているのは 愚か者が信じてしまうもの
どんな賢者もそれを説得して消し去る力はないんだ
いつだって そう思えるものは 何もないよりはマシなんだと
何も根拠がないのに彼は妄想し続けている
彼女の遠い過去のどこかに どこか自分の場所があるって
ヤツは信じている
いつか、どこかで 彼女は帰ってくると
ヤツの人生にはかつて彼女の場所があった
けっして彼女をもう一度考えさせなかった
彼女がごめんなさいと言って席を立って、彼も立ち上がるとき
その場にいた他の人だけはちゃんとわかっている
立ち去る彼女を彼が見送るはめになることを
でも、ヤツが見ているのは 愚か者が信じてしまうもの
どんな賢者もそれを説得して消し去る力はないんだ
いつだって そう思えるものは
(もし愛が行き来するものなら、この愛ももう一度帰ってきてもいいじゃないか)
何もないよりはマシなんだと(愚か者にも力はある)
何も根拠がないのに彼は妄想し続けている
(彼女は行ってしまわないと信じている)
どんな賢者もそれを説得して消し去る力はないんだ
いつだって そう思えるものは
何もないよりはマシなんだと
何も根拠がないのに彼は妄想し続けている (拙訳)
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He came from somewhere back in her long ago
The sentimental fool don't see trying hard to recreate
What had yet to be created once in her life
She musters a smile for his nostalgic tale
Never coming near what he wanted to say
Only to realize
It never really was
She had a place in his life
He never made her think twice
As he rises to her apology
Anybody else would surely know
He's watching her go
But what a fool believes he sees
No wise man has the power to reason away
What seems to be
Is always better than nothing
And nothing at all keeps sending him
Somewhere back in her long ago
Where he can still believe there's a place in her life
Someday, somewhere, she will return
She had a place in his life
He never made her think twice
As he rises to her apology
Anybody else would surely know
He's watching her go
But what a fool believes he sees
No wise man has the power to reason away
What seems to be (if love can come and love can go, then why can't love return once more?)
Is always better than nothing (fool's got the power)
There's nothing at all (oh, now)
But what a fool believes he sees (i believe she's never gone away)
No wise man has the power
To reason away (to reason away)
What seems to be (oh, if love can come and love can go, oh, mama)
Is always better than nothing (better than nothing)
And nothing at all
Writers: Kenny Loggins, Michael McDonald
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いろんな曲の元ネタになったこの曲にも元ネタがあり、その元ネタにもまた元ネタがあった。これぞポップ・ミュージックの素晴らしき”サイクル”
これは1979年の代表する大ヒット曲(全米1位)、そしてAORを代表する曲です。グラミー賞のレコード・オブ・ザ・イヤーとソング・オブ・ザ・イヤーの二冠も獲得しています。
この後、この曲のフレーズを真似たフレーズやリフを入れた曲が本当に数え切れないくらい作られました。ロビー・デュプリーの「ふたりだけの夜(STEAL AWAY)」はその代表でしょう。海外だけじゃなく、日本でもそうで、昨今シティポップで再評価されている1980年前後の作品をチェックすると結構な数見つかるでしょう。
よく盗作で訴えられないなあ、と当時僕は思ったのですが、こんなエピソードがあったそうです。
この曲を作ったマイケル・マクドナルド(共作は「フットルース」「デンジャーゾーン」を歌ったケニー・ロギンス、ケニーはBメロを書いたようです)は、キャプテン&テニールのキャプテン(ダリル・ドラゴン)に会ったときに
「きみはぼくが<ホワット・ア・フール・ビリーヴス>を書くきっかけになった男なんだ。ほら、<愛ある限り>と感じが似てるだろ?」(「ヨット・ロック」)
と言ったそうです。
マイケル本人も他の曲にインスパイアされたから、誰かに真似られても強く言えなかったのでしょうか。
元ネタであるキャプテン(ダリル・ドラゴン)のほうも、実は自分はファッツ・ドミノのニューオーリンズ風味から影響を受けていた、と言っています。
しかし、キャプテンさん、そんなこと言ってますが、「愛ある限り」はカバーで、オリジナルはニール・セダカです。彼のヴァージョンにはこのリフの原型が既にありましたよ。
Neil Sedaka - "Love Will Keep Us Together" (1973)
ところが、ニール・セダカは「愛ある限り」はビーチ・ボーイズの「ドゥ・イット・アゲイン」にインスパイアされたと言っています。
「ドゥ・イット・アゲイン」→「愛ある限り」→「ホワット・ア・フール・ビリーヴス」→「二人だけの夜」他多数
ポップスというのはこんな風に「インスパイア」を順々に繋いでいくことで、作られていくものなんですね。
さて、歌詞に目を移しますと、曲に出てくる”愚か者(A Fool)”は、レストランでむかし恋人関係だった女性と会っていて、相手はもう全然気持ちはなくなっているのに、自分だけ都合のいいようなことを考えている男です。そして、案の定、男は女性に立ち去られてしまいます。
破局の後、女性のほうが切り替えが早い、というのは、もうこの世の常識(?)。
そういう意味じゃ、ものすごく普遍的な歌詞、ということでしょう。凄いキャッチーなリフに、誰もが感情移入できる歌詞。大ヒットしないはずはないですね。
最後はオフィシャルのライヴ映像を。
The Doobie Brothers - What A Fool Believes (Official Music Video)