まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ダンシング・イン・ザ・ストリート(Dancing In The Street)」マーサ&ザ・ヴァンデラス(1964)

 おはようございます。

 今日はモータウンのガール・グループ、マーサ&ザ・ヴァンデラスの「ダンシング・イン・ザ・ストリート」です。

 
Martha & The Vandellas "Dancing in the Streets"

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Calling out around the world
Are you ready for a brand new beat?
Summer's here and the time is right
For dancing in the street
They're dancing in Chicago
Down in New Orleans
In New York City

All we need is music, sweet music
There'll be music everywhere
There'll be swinging and swaying and records playing
Dancing in the street


Oh, it doesn't matter what you wear
Just as long as you are there
So come on, every guy, grab a girl
Everywhere around the world
They'll be dancing
They're dancing in the street

It's an invitation across the nation
A chance for folks to meet
There'll be laughing, singing, and music swinging,
Dancing in the street
Philadelphia, PA
Baltimore and DC now
Can't forget the Motor City

All we need is music, sweet music
There'll be music everywhere
There'll be swinging and swaying and records playing
Dancing in the street
Oh, it doesn't matter what you wear
Just as long as you are there
So come on, every guy, grab a girl
Everywhere around the world
They're dancing
They're dancing in the street

Way down in LA ev'ry day
They're dancing in the street
(Dancing in the street)
Let's form a big, strong line, get in time
We're dancing in the street
(Dancing in the street)
Across the ocean blue, me and you,
We're dancing in the street

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世界中に呼びかけよう

最新のビートを聴く準備はできている?

夏が来た 今がまさにその時

ストリートで踊るの

シカゴでも ニューオリンズでも

ニューヨーク・シティでも

 

必要なのは音楽だけ 気持ちのいい音楽

どこにでも音楽はあるの

スウィングしてスウェイして、レコードをかけて

ストリートで踊るのよ

 

どんな格好していてもかまわない

そこにいるだけでいいの

だからさあ、男はみんな女の子をつかまえて

世界中どこだって

みんな踊っているわ ストリートで踊っているの

全国中に送る招待状よ

いろんな人たちが会えるチャンス

笑いあり、歌あり、音楽でスィングして

ストリートで踊るのよ

フィラデルフィアでも

ボルティモアやワシントンDCでも

モーター・シティ(デトロイト)も忘れちゃいけない


必要なのは音楽だけ 気持ちのいい音楽

どこにでも音楽はあるの

スウィングしてスウェイして、レコードをかけて

ストリートで踊るのよ

 

どんな格好していてもかまわない

そこにいるだけでいいの

だからさあ、男はみんな女の子をつかまえて

世界中どこだって

みんな踊っているわ ストリートで踊っているの


LAでも毎日 みんなストリートで踊っている

さあ、大きく、強い列を作るのよ、時間通りに

青い海原も超えて、私とあなたで

みんなストリートで踊っているの いるの      (拙訳)

 

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 マーヴィン・ゲイがムーディーに歌っていた曲を、マーサがエネルギッシュな解釈にすることで生まれ変わったアンセム  

 

 1985年のライヴエイドで、ミック・ジャガーデヴィッド・ボウイがこの曲をカバーしたビデオが流れたことを記憶している人もいるでしょう。世界中のストリートで踊ろう、と呼びかける歌詞は、世界中のTVでオンエアされたライヴ・エイドにはこれ以上なくぴったりな選曲でした。

 他に、ザ・フーキンクスヴァン・ヘイレン、あのカーペンターズまでカバーしています。

 

 

 この曲を歌っているマーサ&ザ・ヴァンデラスのリード・ヴォーカル、マーサ・リーヴスは最初、モータウンで秘書として採用されたというプロフィールの持ち主です。

 シンガーを目指し、モータウンのオーディションに来たところプロデューサーのミッキー・スティーヴンソンから「また後で」追い払われて泣きそうな顔をしていた彼女を不憫に思った彼から電話番を任されたところ、その手際がとても良かったのだそうです。

 そして、コーラス・グループの練習用に新曲のデモを歌うことも始め、そこから自分のグループを組んでマーヴィン・ゲイのバックなどを務めながら、自分たちのレコードも出すようになっていきました。

 

 最初のヒットは1963年に全米4位になった「ヒート・ウェイヴ」でした。作者はモータウン最大のヒット・メイカー・トリオ”ホランド=ドジャー=ホランド”。この曲は彼らの最初の大ヒットでもありました。

www.youtube.com

 

 さて、この「ダンシング・イン・ザ・ストリート」は作者は彼女たちと縁の深い人たちでした。

 ひとりは彼女たちがバックをつとめていたマーヴィン・ゲイ。そして、もう一人はマーサが秘書を務めていたミッキー・スティーヴンソン。

 スティーヴンソン曰く、マーヴィンと真夏のデトロイト市内をドライヴしているときに、猛暑の中でも子供たちが遊べるように消火栓を開けて水を撒いている様子を見て、その中で踊っているイメージが浮かんだんだそうです。

 二人で曲を書き始め、そこに、多くのモータウンのセッションでキーボードを弾き、音楽的な素養の高いアイヴィー・ジョー・ハンターが加わり曲を仕上げました。

 

 ある日、スタジオでこの曲をマーヴィンが彼らしいなめらかなボーカルを生かしたジャジーな雰囲気で歌っているのを、マーサは見ていたそうです。

 

「私はワオって言いました。そして彼はこっちの方に目をやり、私が彼に畏敬の念を抱いている様子を見て、「おい、みんな」と言いました。これは彼が正確にそう言ったのですが、『おい、みんな、この曲をマーサでやってみようぜ』」

               (NPR  January 5, 2019)

「オフィスで曲を聴かせてもらったのですが、私にはそんな感じの曲には聴こえませんでした。私はリオデジャネイロにも行ったことがあるし、カーニバルの時期にニューオリンズにも行ったことがあるので、どこかの土地のストリートで踊っているような曲でなければいけないことだけはわかりました。『私が感じるように歌っていいですか?』と私が言うと、彼らは『どうぞ』と言ってくれたんです」

 (Songfacts)

  そして、スタジオに入り彼女は一発で見事に歌ったそうですが、練習だと思ったエンジニアがテープを回しておらず、もう一度トライしたといいます。そしてあらためて録音しましたが、歌を間違わないように一回目より冷静に歌ったので、それがかえってちょうどよかったんじゃないかと彼女は回想しています。

 

 マーヴィン・ゲイが洗練された雰囲気で歌っているヴァージョンも聴いてみたかったですが、きっと、これほどのヒットにならなかったんじゃないでしょうか。

 

   ちなみに、マーサ&ザ・ヴァンデラスのヴァージョンのドラムスはマーヴィンが叩いています。

 

 デヴィッド・ボウイミック・ジャガーによるカバー

www.youtube.com

 

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