まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「クローサー(Closer)」ザ・チェインスモーカーズ(2016)

 おはようございます。

 今日はチェインスモーカーズの「クローサー」です。


The Chainsmokers - Closer (Lyric) ft. Halsey

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Hey, I was doing just fine before I met you
I drink too much and that's an issue, but I'm okay
Hey, you tell your friends it was nice to meet them
But I hope I never see them again

I know it breaks your heart
Moved to the city in a broke down car
And four years, no calls
Now you're looking pretty in a hotel bar
And I can't stop
No, I can't stop

So baby pull me closer in the backseat of your Rover
That I know you can't afford
Bite that tattoo on your shoulder
Pull the sheets right off the corner
Of the mattress that you stole
From your roommate back in Boulder
We ain't ever getting older

You look as good as the day I met you
I forget just why I left you, I was insane
Stay and play that Blink-182 song
That we beat to death in Tucson, okay

I know it breaks your heart
Moved to the city in a broke down car
And four years, no call
Now I'm looking pretty in a hotel bar
And I can't stop
No, I can't stop

So baby pull me closer in the backseat of your Rover
That I know you can't afford
Bite that tattoo on your shoulder
Pull the sheets right off the corner
Of the mattress that you stole
From your roommate back in Boulder
We ain't ever getting older

Baby, pull me closer in the backseat of your Rover
That I know you can't afford
Bite that tattoo on your shoulder
Pull the sheets right off the corner
Of the mattress that you stole
From your roommate back in Boulder
We ain't ever getting older
We ain't ever getting older
No, we ain't ever getting older,,,,

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ヘイ、君に会うまでは 調子よくやっていたんだ

酒は飲み過ぎで、それは問題ではあるけど、別に大丈夫さ

ヘイ、君は友達に久しぶりって声をかけるけど

僕はできれば二度と会いたくないね

 

君を傷つけたのはわかってる

ポンコツ車で街に引っ越して

それから4年 連絡がなかった

いま、ホテルのバーにいる君はきれいだ

だから自分を止められないんだ ああ止められないんだ

だからベイビー、君のローバーのバックシートで

もっと近くに引き寄せて

君には買えない車だって気づいてる

君の肩のタトゥーに噛みついて

ボールダーにいた頃 ルームメイトから

君が盗んだマットレスの角から

シーツを引き剥がして

僕らはあの頃と変わっちゃいない

 

出会った日と変わらず素敵ね

なんであなたと別れたのか忘れちゃった

頭がどうかしていたのよ

ここにいてブリンク182の曲をかけて

ツーソンで二人で死ぬほど聴いたわよね

 

あなたを傷つけたのはわかってる

ポンコツ車で街に引っ越して

それから4年 連絡がなかった

いま、ホテルのバーにいるわたしはきれいよ

だから自分を止められないの ああ止められないの

 

だからベイビー、君のローバーのバックシートで

もっと近くに引き寄せて

君には手が届かない車だと気づいてる

君の肩のタトゥーに噛みついて

ボールダーにいた頃 ルームメイトから

君が盗んだマットレスの角から

シーツを引き剥がして

僕らはあの頃と変わっちゃいない       (拙訳)

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 この曲は2016年の7月に発売され、全米1位を12週間、トップ10には32週連続でチャートインするという超特大のヒットになっています。

 

 ザ・チェインスモーカーズ は、アンドリュー・タガートとアレックス・ポールの2人からなるニューヨークを拠点とするDJかつクリエイター・デュオです。

 アレックスはこう語っています。

「お互いにアヴィーチー、デッドマウス、デヴィッド・ゲッタカルヴィン・ハリスが好きで意気投合したんだ」

「僕らも彼らと同じフィールドに立ちたくてたまらなかった」

                             (NME)

 当時大流行していたEDMのDJたちに憧れていたわけです。 

 最初は、他のインディーズ・アーティストのリミックスから制作を始めます。彼らのはじめてのブレイクは当時の”トレンド”を巧みに取り入れたものでした。そのころ、”SELFIE=自撮り”が流行し始めていたので、彼らはそれをテーマにちょっとしたジョークで曲にしてみようと思い立ちます。"クラバー"の女性のセリフを入れて編集したこの曲は、あるレーベルが気に入って買取りリリースしたところ全米16位、ダンスチャート1位の大人気曲になります。


#SELFIE (Official Music Video) - The Chainsmokers

 そしてまだ、成功の準備ができていないうちに曲が売れてしまった彼らはその後、EDM系のシングルを何枚かリリースしますが、それらは良くも悪くも”EDM”の枠におさまったものでした。彼らのスタイルに変化が見られたのは、2015年の「Roses」というシングルでした。


The Chainsmokers - Roses (Lyric Video) ft. ROZES

 全体的にビートのテンポを落とし、ミュージック・ビデオは歌詞を大きく表示する「リリック・ビデオ」にしています。ビートも「リリック・ビデオ」のどちらも当時の最新の流行をきっちりおさえたもので、曲は全米6位の大ヒットを記録します。

 この曲を作りあげ、また大ヒットしたことが、自分たちの大きなターニングポイントになったとのちに彼らは語っています。この曲で、自分たちのオリジナリティが生まれたのかもしれません。 

 

 そして、2015年に「Don't Let Me Down(feat.Daya)」が全米3位の大ヒット、そしてリリースされたのが「クローサー」でした。

 

 アンドリューは「クローサー」を書いたときのことをこう回想しています。

「ツアー中のある日、みんなで遅くまで起きていた日があったんだ。振り返りみたいな感じで懐メロをガンガンにかけて、みんなで聞いていたんだよ。確か、Blink 182とかTaking Back Sundayを聞いていた。そんな昔の懐かしのパンク・エモ系バンドの楽曲を聞いていくうちに、実体験に基づいたことを真摯に綴った楽曲を書いてみようよってなったんだ。だから、元カノとの失恋についての曲を書いたんだ。<中略>彼女との付き合いを後悔しながらも、思い返してしまう。そんな気持ちを綴ってみたよ。」

 Blink-182は歌詞にも登場します。そのとき彼らが特に聴いていたのはこの曲だったそうです。

 


blink-182 - Feeling This (Official Video)

「 チェインスモーカーズ のルーツがダンス・ミュージックにあることは間違いないよ。ただ、2人とも出会うまではインディーズ系のロックバンド、グランジ、メタル、ヒップホップを聴いて育ってきた」 (アレックス・ポール)

                     (YAHOO!JAPAN NEWS)

 

 そして、この曲でフィーチャーされているの女性ボーカルがホールジー。2015年のデビューアルバム「バッドランズ」でブレイクしたばかりのタイミングでした。

 アンドリューはこの曲ではじめてヴォーカルをとり彼女とデュエットしています。彼は、リアルな男と女の会話をデュエットにした初めてのデュエット・ソングになったんじゃないかと、語っています。

 

 「クローサー」はEDMのアーティストの作品でありながら、グランジ系ロックの率直さにインスパイアされた、リアルな恋愛を歌ったデュエット・ソングというわけなんですね。

 そして、歌詞に重きを置いているからこそ、MVでは再び「リリック・ビデオ」のスタイルにしているわけです。

 しかも、彼らの場合はリリックの表示がなくても成り立つようなしっかりした映像を撮っていながら、そこに歌詞を効果的にのせるという手法をとっているわけです。”歌”の世界をしっかり伝えようとしているんですね。もはやエレクトロ・ポップの曲の範疇を超えていたからこそ、これだけのロングラン・ヒットになったのでしょう。

 

 ちなみに、この曲の作者にはアンドリューやホールジーなどの他に、アメリカのロック・バンド”ザ・フレイ”のメンバー2人が入っています。これはこの曲のフレーズが、彼らのデビューヒット「Over My Head」のメロディに似ていることに気づいて事前に許可を取ったからだそうです。


The Fray - Over My Head (Cable Car) (Video)

 

 

 昔に比べて今の時代のアーティストたちのほうが、ずっとさまざまな音楽を感覚的に聴いてきて取り入れているように思います。

 あるジャンル(彼らの場合はEDM)に主軸を置いても、そのジャンルじゃない音楽の影響をいかにうまく作品に反映させられるかが、そのアーティストのオリジナリティに結びついていくような傾向がるように思えます。

 

 そういうことって、音楽に限らず他のジャンルでも言えるかもしれないことのようにも思います。

 自分が軸足を突っ込んでいる仕事の上でも、そのジャンル以外の好きなもの、ひょっとしたら無意識で感じ取っていたものがいろいろミックスされることで、個性やオリジナリティのようなものが生まれてくるのではないかと。

 

クローサー」は、何かのジャンルに分類するのがとても難しい曲だと感じます。そして、そういうものこそが今のポップ・ミュージックなのかもしれないとも思えます。

 

  最近の彼らのライヴ映像を見ると、ライヴではドラマーをメンバーに加えて、DJと”バンド感”が融合したスタイルになっています。


Drum Solo - Matt McGuire - The Chainsmokers Live at Barclays New York!

 

 最後は新田真剣佑をフィーチャーした「クローサー」を。アメリカで育った彼はずっと前から彼らの曲は普通に聴いていたそうです。


The Chainsmokers feat.新田真剣佑 「Closer (Tokyo Remix)」 (Short Video)

 

 

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