まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「パワー・オブ・ラヴ (The Power of Love)」ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース(1985)

 おはようございます。

 今日はヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「パワー・オブ・ラヴ (The Power of Love)」を。


The Power Of Love

 

  ”愛の力っていうのは 興味をそそるものだね

    大の男を泣かせたり 歌わせたりもする

       鷹をかわいい白い鳩にも変えてしまう

  感情を超えたもの それが愛の力さ

 

  ダイアモンドより硬く クリームのようにふわっとしてる

  悪女の夢より 強くてハードさ

  悪党を改心させ 間違いも正すのさ

  愛の力で 君は夜も家にいたくなるのさ

 

  金なんていらない 名声もほしがるな

  この列車に乗るのにクレジットカードはいらないよ

  強くて、ふいにあらわれて、時には残酷にもなる

  でも君の命を救うかもしれない

  それが愛の力 それが愛の力さ

 

  最初は 悲しくなるかもって君は思う

  次には 頭にくるかもって思う

  だけど君はうれしくなるはずさ 

     その力が世界を動かしているってわかったときには

 

        金なんていらない 名声もほしがるな

  この列車に乗るのにクレジットカードはいらないよ

  強くて、ふいにあらわれて、時には残酷にもなる

  でも君の命を救うかもしれない

 

        恋するものはみな公平だっていう

  でも君はそんあこと気にもしない

  でも君はその力につかまったら

  どうすべきかわかってるね

  天の助けを少し借りて

  愛の力を感じるんだ 愛の力を感じるんだ

  感じてるかい?

 

  金なんていらない 名声もほしがるな

  この列車に乗るのにクレジットカードはいらないよ

  ダイアモンドより硬く 鋼よりも強い

  それを感じるまでは何も感じない

  君は感じる 愛の力を それこそが愛の力

  愛の力を感じるんだ 愛の力を感じるんだ”  (拙訳)

***********************************************************************************

The power of love is a curious thing
Make a one man weep, make another man sing
Change a hawk to a little white dove
More than a feeling, that's the power of love

Tougher than diamonds, whips like cream
Stronger and harder than a bad girl’s dream
Make a bad one good, mmm make a wrong right
Power of love will keep you home at night

Don't need money, don't take fame
Don't need no credit card to ride this train
It's strong and it's sudden and it's cruel sometimes
But it might just save your life
That's the power of love
That's the power of love

First time you feel it might make you sad
Next time you feel it might make you mad
But you'll be glad baby when you've found
That's the power that makes the world go round

Don't need money, don't take fame
Don't need no credit card to ride this train
It's strong and it's sudden and it's cruel sometimes
But it might just save your life

They say that all in love is fair
Yeah but you don't care
But you know what to do
When it gets hold of you
And with a little help from above
You feel the power of love
You feel the power of love
Can you feel it?

Don't take money, don't take fame
Don't need no credit card to ride this train
Tougher than diamonds and stronger than steel
You won't feel it until you feel
You feel the power, feel the power of love
That's the power, that's the power of love
You feel the power of love
You feel the power of love
You feel the power of love

 

Writer/s: Huey Lewis, Christopher John Hayes, John Victor Colla

****************************************************************************

  1970年代の終わり、広告代理店の社員だった佐野元春アメリカ西海岸のラジオ局なクラブをまわったときに、ロックンロールの盛り上がりを肌で感じ、帰国するや否や仕事を辞めロックンローラーとしての道を歩み始めたといいますが、このエピソードに象徴されるように70年代から80年代へと変わる時代の転換期に、ロックンロール・リバイバルとも呼ぶべき大きなうねりがありました。

 

 

 その発端はイギリスのパンク、そこから派生したニューウェイヴのブームなのですが、その”親戚のお兄ちゃん”みたいな存在として”パブ・ロック”というのがありました。

 アメリカの本物のロックンロールをやろうという人たちのジャンルで、そんな連中は飲み屋(パブ)でしか 演奏する場所がなかったため、そんな名前がついたわけですが、その代表アーティストであるニック・ロウはパンクのアーティストもプロデュースしましたし、エルヴィス・コステロもパンクとパブ・ロックをクロスオーヴァーするような人でした。

 

 パンクの”過剰に研ぎ澄まされたシンプルなロックンロール・サウンド”とともに、パブ・ロックの”古き良きアメリカン・ロックンロールを見直す視点”が、ロックンロールの本国であるアメリカのアーティストにも大きな刺激を与えたのです。

 

 そして、そういったロックンロールが商業的に成功を収め、同時期に始まって大流行したMTV、それに反応した音楽映画ブームにも乗っかることで、古き良きシンプルなロックンロールのテイストを、その時代のモダンなサウンドで再生するスタイルが1980年代の大きなトレンドになっていったわけです。

 

 キャリアの最初期からそういうシーンの流れをたどり、トレンドの象徴のような存在になったのがヒューイ・ルイス&ザ・ニュースでした。


Clover - Ain't Nobody Own Nobody's Soul - Huey Lewis

 

   ヒューイ・ルイスとTHE NEWSのキーボーディスト、ショーン・ホッパーはもともと1972年にサンフランシスコでクローバーというバンドに加わっています。

 

  そしてクローバーに目をつけたのが、ニック・ロウ。彼はクローバーをイギリスに呼び、自分がプロデュースするエルヴィス・コステロのデビュー・アルバム「マイ・エイム・イズ・トゥルー」のバッキング・バンドに抜擢したのです。ボーカルだったヒューイは参加していませんが、彼もイギリスに行き、シン・リジィのサポートを務めたりしていました。

 

 クローバーはイギリスでさまざまなアーティストのバックバンドを務めた後解散してしまいます。そして、ヒューイとショーンは、クローバーのライバル・バンドのメンバーなどを迎え入れ、ヒューイ・ルイス&ザ・アメリカン・エクスプレスというバンドを結成し、それがデビューのタイミングで改名しヒューイ・ルイス&ザ・ニュースになるわけです。

 

    ヒューイたちの音楽は当時のアメリカのメジャー・シーンでは興味を持たれず、かえって本物のアメリカン・ロックンロールを見直していたイギリス人が興味を持ったわけですね。

 そして、彼らが帰国した頃から、アメリカもシンプルなロックンロールに興味を持ち始めたわけです。

 ちなみに彼らは、最初は飲み屋(バー)で演奏していました。そういうバンドを”バー・バンド”と呼びますが、”アメリカ版パブ・ロック”だと僕は考えていて、1980年代前半のロックンロール・リバイバルはそういう”バー・バンド”にもチャンスを与えたのです。

   ファースト・アルバムこそコケてしまいましたが、セカンドから売れ始め、サードアルバム「 スポーツ」は1984年のビルボード年間アルバムチャートでマイケルの「スリラー」についで2位という特大のヒットになります。

 

 その勢いにのって、彼らに届いたオファーが映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主題歌の話でした。

 スティーブン・スピルバーグ、ボブ・ゼメキス、作家のボブ・ゲイルとニール・カントンが僕をミーティングに呼んだんだ。彼らはマーティ・マクフライという男が主演の映画を書いていて、彼の好きなバンドがヒューイ・ルイス・アンド・ザ・ニュースという設定なので”映画のために曲を書いてみないか”と言ってきたんだ。うれしかったけど、映画の曲の書き方なんて知らないし、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」なんていうタイトルの曲は全然思いつきそうもなかった。だけど、彼らはただ何か曲が欲しいだけだったから、僕は同意したんだ。そして作ったのが "The Power Of Love "だった」

                             (CLASSIC POP)

 (ちなみに、このあとヒューイに「ゴーストバスターズ」の映画の依頼があったと言われています。監督が彼らのファンで、すでに彼らの「I Want A New Drug」を当てて進行していたシーンもあったそうです。しかし、バッティングを避けるために彼は辞退し、レイ・パーカーJRにチャンスが周り、その後盗作問題が巻き起こります、、)

 

 

    映画は主人公が1985年から1955年にタイム・トリップする話でしたが、1955年というと、その前の年に「ロック・アラウンド・ザ・クロック」が大ヒットしているまさにロックンロール黎明期でした。主人公が当時まだ発売されていない1958年の大ヒット「ジョニーBグッド」(チャック・ベリー)を演奏するなんてシーンもあて、古き良きロックンロールを80年代サウンドで生まれ変わらせているヒューイ・ルイス&ザ・ニュースほどの適役はなかったなとあらためて思います。

 

 ”1980年代型ロックンロール”は、MTVや映画とリンクした”とことん明快でキャッチー”で、棘も毒もない100%健全なものでした。そういうところに面白みを感じないロック・ファンもいたとは思いますが、間違いなくその”時代”を象徴したものだったと思います。

 

 この「パワー・オブ・ラヴ」と昨日紹介した「フットルース」は、その”双璧”だったと僕はとらえています。かなり大規模な大衆を一気に楽しい気分にさせることのできるロックンロールというのは、今となれば大変レアで貴重なものじゃないでしょうか。

 

f:id:KatsumiHori:20201113111044j:plain

 

 

 

 

popups.hatenablog.com 

popups.hatenablog.com

 

popups.hatenablog.com