まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「アメリカン・パイ (American Pie) 」ドン・マクリーン(1971)

 おはようございます。

 今日は大曲です。ドン・マクリーンの「アメリカン・パイ」を。

www.youtube.com

**************************************************************

A long, long time ago
I can still remember
How that music used to make me smile
And I knew if I had my chance
That I could make those people dance
And maybe they'd be happy for a while
But February made me shiver
With every paper I'd deliver
Bad news on the doorstep
I couldn't take one more step
I can't remember if I cried
When I read about his widowed bride
But something touched me deep inside
The day the music died


So bye-bye, Miss American Pie
Drove my Chevy to the levee, but the levee was dry
And them good old boys were drinkin' whiskey 'n rye
Singin', "This'll be the day that I die"
"This'll be the day that I die"


Did you write the book of love
And do you have faith in God above
If the Bible tells you so?
Now do you believe in rock 'n roll
Can music save your mortal soul?
And can you teach me how to dance real slow?
Well, I know that you're in love with him
'Cause I saw you dancin' in the gym
You both kicked off your shoes
Man, I dig those rhythm and blues
I was a lonely teenage broncin' buck
With a pink carnation and a pickup truck
But I knew I was out of luck
The day the music died


I started singin', "Bye-bye, Miss American Pie"
Drove my Chevy to the levee, but the levee was dry
Them good old boys were drinkin' whiskey 'n rye
And singin', "This'll be the day that I die"
"This'll be the day that I die"


Now, for ten years we've been on our own
And moss grows fat on a rollin' stone
But that's not how it used to be
When the jester sang for the king and queen
In a coat he borrowed from James Dean
And a voice that came from you and me
Oh, and while the king was looking down
The jester stole his thorny crown
The courtroom was adjourned
No verdict was returned
And while Lenin read a book on Marx
The quartet practiced in the park
And we sang dirges in the dark
The day the music died


We were singin', "Bye-bye, Miss American Pie"
Drove my Chevy to the levee, but the levee was dry
Them good old boys were drinkin' whiskey 'n rye
And singin', "This'll be the day that I die"
"This'll be the day that I die"


Helter skelter in a summer swelter
The birds flew off with a fallout shelter
Eight miles high and fallin' fast
It landed foul on the grass
The players tried for a forward pass
With the jester on the sidelines in a cast
Now, the half-time air was sweet perfume
While the sergeants played a marching tune
We all got up to dance
Oh, but we never got the chance
'Cause the players tried to take the field
The marching band refused to yield
Do you recall what was revealed
The day the music died?


We started singin', "Bye-bye, Miss American Pie"
Drove my Chevy to the levee, but the levee was dry
Them good old boys were drinkin' whiskey 'n rye
And singin', "This'll be the day that I die"
"This'll be the day that I die"


Oh, and there we were, all in one place
A generation lost in space
With no time left to start again
So come on, Jack be nimble, Jack be quick
Jack Flash sat on a candlestick
'Cause fire is the devil's only friend
Oh, and as I watched him on the stage
My hands were clenched in fists of rage
No angel born in hell
Could break that Satan's spell
And as the flames climbed high into the night
To light the sacrificial rite
I saw Satan laughing with delight
The day the music died


We were singin', "Bye-bye Miss American Pie"
Drove my Chevy to the levee, but the levee was dry
Them good old boys were drinkin' whiskey 'n rye
And singin', "This'll be the day that I die"
"This'll be the day that I die..."


I met a girl who sang the blues
And I asked her for some happy news
But she just smiled and turned away
I went down to the sacred store
Where I'd heard the music years before
But the man there said the music wouldn't play
And in the streets, the children screamed
The lovers cried and the poets dreamed
But not a word was spoken
The church bells all were broken
And the three men I admire most
The father, son, and the holy ghost
They caught the last train for the coast
The day the music died




And they were singin', "Bye-bye Miss American Pie"
Drove my Chevy to the levee but the levee was dry
And them good old boys were drinkin' whiskey 'n rye
Singin', "This'll be the day that I die"
"This'll be the day that I die"


They were singin', "Bye-bye Miss American Pie"
Drove my Chevy to the levee but the levee was dry
Them good old boys were drinkin' whiskey 'n rye
Singin', "This'll be the day that I die..."

**************************************************************

遠い遠い昔のこと
僕はまだ覚えている
あの頃の音楽は僕を笑顔にしてくれた
もしチャンスがあれば
あの人たちを踊らせることができたかもしれない
多分少しの間はハッピーになれるかもしれない
だけど、2月は僕を震え上がらせた
僕が配達する新聞はどれも玄関先に悪いニュースを届けることになった
もう一歩も動けそうもないよ
僕が泣いたかどうかは覚えていない
未亡人になった彼の花嫁の話を読んだとき
でも、心の奥深い場所に何かが触れた
音楽が死んだその日

 

だから、バイバイ、ミス・アメリカン・パイ
堤防までシボレーを走らせたけど、 堤防は干上がっていた
古き良き時代の少年たちはウイスキーライ麦酒を飲んでいた
こう歌いながら ”今日が俺が死ぬ日になるだろう”
"今日が俺の死ぬ日になるだろう"

 

君は愛の本を書いたのかい?
そして、あなたは天の神様を信じるかい?
もし、聖書にそう書かれているなら
今、君はロックンロールを信じるかい?
音楽は君の死すべき魂を救えるのかい?
そして、スローなダンスを教えてくれるかい?
君が彼に恋をしていることはわかっている
だって、君たちが体育館で踊っているのを見たから
二人とも靴を脱いでいた
なあ、僕はそのリズム&ブルースが大好きなんだ
僕は孤独な10代の荒くれだった
ピンクのカーネーションとピックアップ・トラックを持った
でも、僕の運は尽きたとわかったんだ
音楽が死んだその日

 

僕は歌い始めたのさ  バイバイ、ミス・アメリカン・パイ
堤防までシボレーを走らせたけど、 堤防は干上がっていた
古き良き時代の少年たちはウイスキーライ麦酒を飲んでいた
こう歌いながら ”今日が俺が死ぬ日になるだろう”
"今日が俺の死ぬ日になるだろう"

 

もう10年も自分たちで生きてきたから
転がる石の上には苔がたっぷりはえてしまった
だけど、以前はそうじゃなかったさ
道化師が王と女王のために歌っていたとき
ジェームス・ディーンから借りたコートを着て
その声は君と僕の声なんだ
王がうつむいている間に
道化師は王冠を盗んだ
法廷は延期されて判決は出なかった
レーニン(レノン)がマルクスの本を読んでいる間に
四人組(カルテット)は公園で練習した
僕たちは暗闇の中で哀歌を歌った
音楽が死んだ日

 

僕は歌い始めたのさ  バイバイ、ミス・アメリカン・パイ
堤防までシボレーを走らせたけど、 堤防は干上がっていた
古き良き時代の少年たちはウイスキーライ麦酒を飲んでいた
こう歌いながら ”今日が俺が死ぬ日になるだろう”
"今日が俺の死ぬ日になるだろう"

 

うだるような夏の暑さの中で ヘルター・スケルター
鳥たちは核シェルターを飛び立った
8マイルの高さから急速に落下し
芝生の上に不正に着地した
選手たちはフォワード・パスを狙った
道化師がギプス姿で控えにまわっている
さあ、ハーフタイムの空気は甘い香水のみたいで
サージェントたちは行進曲を演奏した
僕たはみんな立ち上がって踊った
でも、そのチャンスはなかった
それは、選手たちがフィールドに出ようとしても
マーチング・バンドが譲らなかった
何が明らかになったか覚えているかい?
音楽が死んだ日に

 

僕は歌い始めたのさ  バイバイ、ミス・アメリカン・パイ
堤防までシボレーを走らせたけど、 堤防は干上がっていた
古き良き時代の少年たちはウイスキーライ麦酒を飲んでいた
こう歌いながら ”今日が俺が死ぬ日になるだろう”
"今日が俺の死ぬ日になるだろう"

 

ああ、僕たちはそこに一堂に会した
宇宙をさまよう世代(『宇宙家族ロビンソン』の世代)
もう一度始める時間は残されていない
さあ、ジャックよ軽快に ジャックよ早く
ジャック・フラッシュはろうそくの上に座った
火は悪魔にとって唯一の友達だから
ステージの彼を見ていると
僕は怒りで拳を握りしめた
地獄で生まれたエンジェルには
サタンの呪文は解けないんだ
炎が夜に向かって高く立ち昇ると
生贄の儀式を照らし出し
サタンが楽しそうに笑っているのが見えた
音楽が死んだ日に

 

僕らは歌ったのさ  バイバイ、ミス・アメリカン・パイ
堤防までシボレーを走らせたけど、 堤防は干上がっていた
古き良き時代の少年たちはウイスキーライ麦酒を飲んでいた
こう歌いながら ”今日が俺が死ぬ日になるだろう”
"今日が俺の死ぬ日になるだろう"

 

ブルースを歌う少女に出会った。
何かハッピーなニュースはないか聞いてみたけど
彼女はただ微笑んで背を向けた
僕は神聖な店に行った
そこで何年も前に音楽を聴いたよ
だけど、そこの男は音楽はかけないと言った
通りでは子供たちが悲鳴をあげていた
恋人たちは泣き、詩人たちは夢を見た
だけど、一言も口にされず
教会の鐘はすべて壊れていた
そして、僕が最も敬愛した3人の男たち
父、息子、そして聖霊
彼らは海岸に向かう最終列車に乗った
音楽が死んだその日

 

みんな歌ったのさ  バイバイ、ミス・アメリカン・パイ
堤防までシボレーを走らせたけど、 堤防は干上がっていた
古き良き時代の少年たちはウイスキーライ麦酒を飲んでいた
こう歌いながら ”今日が俺が死ぬ日になるだろう”
"今日が俺の死ぬ日になるだろう"

 

みんな歌ったのさ  バイバイ、ミス・アメリカン・パイ
堤防までシボレーを走らせたけど、 堤防は干上がっていた
古き良き時代の少年たちはウイスキーライ麦酒を飲んでいた
こう歌いながら ”今日が俺が死ぬ日になるだろう”

                            (拙訳)

**************************************************************

 

 この曲は演奏時間が8分36秒と、全米1位になった曲の中で史上最長で、当時シングルのA面とB面に分けて収録され、多くのラジオ局は両面をオンエアーしたそうです。

 

 ドン・マクリーンはニューヨーク州生まれ、最初に好きになったのがフランク・シナトラバディ・ホリーなどでしたが、10代の頃ピート・シーガー率いるウィーバーズの影響もあってフォークに夢中になりました。大学卒業後はニューヨークのライヴハウスをメインに活動し、1969年にデビュー・アルバム「Tapestry」を自費で録音し、70以上のレーベルの断られたあと、新たにできたメディアーツというレーベルからリリースしています。このアルバムには「And I Love You So」(1973年にペリー・コモがカバーしてヒット)のオリジナル・ヴァージョンが入っています。日本では加山雄三がよく歌っていましたが、ドン・マクリーンが書いた曲だったんですね。

www.youtube.com

 そして、その次に作られたのがこの「アメリカン・パイ」です。

 彼はアメリカや政治のことを歌った大きな歌を作りたいと思い、あれこれ試すうちにふと浮かんできたことがありました。

 それは1959年2年にバディ・ホリーリッチー・ヴァレンス、ビッグ・ボッパーが飛行機の墜落事故で亡くなったことでした。ドンはバディ・ホリーを”子供の頃から崇拝する最初で最後の人物”と語るほどの大ファンで、当時13歳だった彼は大きな衝撃を受けました。彼はそのとき新聞配達のバイトをしていて、その新聞でニュースを知ります。

 

”だけど、2月は僕を震え上がらせた
僕が配達する新聞はどれも玄関先に悪いニュースを届けることになった
もう一歩も動けそうもないよ
僕が泣いたかどうかは覚えていない
未亡人になった彼の花嫁の話を読んだとき
でも、心の奥深い場所に何かが触れた
音楽が死んだその日”

 

というのは、まさに彼が経験したことだったんですね。

 

 そしてこの曲の中で、good old boys がウィスキーとライ麦酒を飲みながら歌うという”this'll be the day that I die”というフレーズは、バディ・ホリーの代表曲「ザットル・ビー・ザ・デイ」の”that'll be the day when I die"というフレーズを替え歌にする、ということです。バディ・ホリーは”僕が死んじまうような、そんな日は来ない”と歌っていたわけですが、ドン・マクリーンは”僕が死んでしまう、そんな日になってしまう”と替えているんですね。

 

 

 彼はアメリカのポピュラー・ミュージックの流れを追うように、歌詞を書いていきました。

 ジェームス・ディーンから借りたコートを着た道化師→ボブ・ディラン

 キング→エルヴィス・プレスリー 

 四人組→ビートルズ

 ジャック・フラッシュ、地獄の天使、、→ストーンズのオルタモントの悲劇

 ブルースを歌う少女→ジャニス・ジョプリン

 など、この曲の歌詞にはいたるところに”ほのめかす”フレーズが散りばめられていて、その”謎解き”の専用サイトもあるほどで、それがまたこの曲の神格化に一役買っているようにも思えますが、ドン本人は一貫して、歌詞の内容についての説明を拒否してきました。

 

 しかし、2015年にこの曲の原稿(The day the music died、と書き始められていたそうです)がオークションで120万ドルで落札されたときに、彼はこの曲についてこう語ったそうです。

「基本的に、アメリカン・パイでは、物事が間違った方へ向かっているということを歌った。理想やのどかさというものがなくなっていった。人がこれを良いと見るか悪いと見るかはわからないが、この曲はある意味、戒めの歌なんだ」

                  (AFP BB NEWS 2015年4月8日)

 

 

 2001年にRIAAアメリカレコード協会)、全米芸術基金 、スコラスティック・コーポラーション  が学校教育プロジェクトの一環で「アメリカ合衆国の音楽や文化の伝統に対するより良い理解を推広める」ことを目的として選定された、"Songs of the Century"(世紀の歌)の5位に「アメリカン・パイ」は選ばれています。

1位「虹の彼方に」2位「ホワイト・クリスマス」3位「我が祖国」(ウディ・ガスリー)4位「リスペクト」(アレサ・フランクリン)、その次ですから、この曲がいかにアメリカという国にとって特別なものであるかがわかります。

 

 マドンナのカバーではバディ・ホリー、ディラン、ストーンズなどを匂わせる、歌詞の”強い”ブロックをカットしていて、そのことで、かえってこの曲が持つ”ポップ・ソングとしての構造”が、明確になった感じがします。

www.youtube.com

 

 最後に、「アメリカン・パイ」以外の彼のヒット曲を2つ。

ゴッホをテーマにした「ヴィンセント(星降る夜)」(全米12位)

www.youtube.com

 

ロイ・オービソンのカバー「クライング」 (全米5位)

www.youtube.com

 

アメリカン・パイ」を含む名盤

アメリカン・パイ +2

アメリカン・パイ +2

Amazon

 

配信はこちらから

アメリカン・パイ

アメリカン・パイ

  • EMI Catalog (USA)
Amazon

ベスト・アルバム(配信)

The Best Of Don McLean

The Best Of Don McLean

  • EMI Catalog (USA)
Amazon

マドンナのカバー

 

アメリカ20世紀の歌("Songs of the Century")第1位

popups.hatenablog.com

 

アメリカ20世紀の歌 第2位

popups.hatenablog.com

 

アメリカ20世紀の歌 第4位

popups.hatenablog.com

 

f:id:KatsumiHori:20211012142128j:plain