まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ロックンロール・ララバイ(Rock and Roll Lullaby)」B.J.トーマス(1972)

 おはようございます。

 今日は「雨にぬれても」のB.J.トーマスの名曲「ロックンロール・ララバイ」です。

 


Rock and Roll Lullaby (Remastered)

 

She was just sixteen and all alone
When I came to be
So we grew up together
My mama child and me
Now things were bad and she was scared
But whenever I would cry
She'd calm my fears and dry my tears
With a rock and roll lullaby

And she'd sing sha na na na na na na na na
It'll be all right
Sha na na na na na na na na na
Just hold on tight
Sing it to me mama, mama mama mama
Sing it sweet and clear
Oh, mama let me hear that old rock and roll lullaby

Now, we made it through the lonely days
But Lord the nights were long
And we'd dream of better moments
When mama sang her song
Now I can't recall the words at all
It don't make sense to try
'Cause I just knew lots of love came through
In that rock and roll lullaby

 

And she'd sing sha na na na na na na na na
It'll be all right
Sha na na na na na na na na na
Just hold on tight
I can hear you mama, mama mama mama
Nothing moves my soul
Like the sound of a good old rock and roll lullaby

It'll be alright
Just hold on tight
Mama, mama, mama
Nothing moves my soul
Like the sound of a good old rock and roll lullaby
It'll be alright
Just hold on tight
Sing it sweet and clear

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 ”僕が生まれてきたとき 彼女はたった16歳でひとりぼっちだった 

 だから一緒に成長したんだ まだ子供みたいなママと僕とでね

 まわりは悪いことばかりで 彼女はおびえていたけど

 僕が泣いたときには ロックンロール・ララバイを歌ってくれて

 僕の怖がる気持ちを鎮めて 涙を乾かせてくれたんだ

 

 彼女はこう歌ったんだ

 シャ、ナ、ナ、ナ、ナ ナ、ナ、ナ、ナ 心配いらないわ

 シャ、ナ、ナ、ナ、ナ ナ、ナ、ナ、ナ しっかりくっついて

 歌ってよ、ママ、僕のママ 

 歌ってよ甘く澄んだ声で ママ聴かせてよ

 あの懐かしいロックンロール・ララバイを

 

 僕たちは辛い日々をなんとかくぐり抜けてきたけど

    神様、夜は長く思えたよ

 ママが歌ってくれるとき 僕らはもっとマシな朝が来ることを夢に見た

 今では、歌詞も全然思い出せないし、無理して思い出す必要もない

 だって あのロックンロール・ララバイの中からは

 愛がいっぱい伝わってきたことだけは僕は知ってるから

     

 彼女はこう歌ったんだ

 シャ、ナ、ナ、ナ、ナ ナ、ナ、ナ、ナ 心配いらないわ

 シャ、ナ、ナ、ナ、ナ ナ、ナ、ナ、ナ しっかりくっついて

 

 今も聴こえるよ ママ 僕のママ

 あれほど僕の魂を動かすもの何もないよ

 あの懐かしいロックンロール・ララバイの歌声のように”  (拙訳)

 

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 B.J トーマスの代表曲といえばなんといっても「雨にぬれても」ですね。

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 しかし、彼のファンからとても人気が高く、彼自身も大変気に入っているのがこの「ロックンロール・ララバイ」です。

 

  曲を書いたのはバリー・マン&シンシア・ワイル夫妻。彼らの代表作といえば、ライチャス・ブラザーズの「ふられた気持ち」ですね。

 

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 「ロックンロール・ララバイ」はもともとは彼らがブロード・ウェイのショーのために書いた曲でしたがボツになったためB.Jトーマスに話がまわってきたのだそうです。

 

 やさしく実にさりげない曲調ですが、16歳でシングルマザーだった母が辛い日々の中で歌ってくれた子守唄が忘れられない、という少し驚くような設定でありながら、じわじわと深い感慨を呼び起こしてくれる作品だと思います。

 

 この時代を代表する作曲家たち、バリー・マンバート・バカラックキャロル・キングロジャー・ニコルズなど、みな天才的なメロディ・メイカーですが、彼らの相棒の作詞家たち、シンシア・ワイル、ハル・デヴィッド、ジェリー・ゴフィン、ポール・ウィリアムス、彼らの歌詞も本当にすごいんですよね。

 曲、歌詞の両方が素晴らしく、かつ見事に溶け合っているものでなければ、時代を超えたスタンダードになることは難しいのでしょう。

 

 僕は、昔は英語がよくわからないのでメロディーばかりに耳を奪われていましたが、こうやって下手なりに歌詞を自分で訳してみると、ネイティヴでもなんでもない僕にですら、彼らの歌詞は格が違うというか、明快でいながら深みもある、という歌詞の”凄み”がはっきり理解できます。

 

 また、この曲のバックには、アメリカのポップス、ロック史に残る人たちが集まっています。

 

 まずは、ギターのデュアン・エディ。ロック史上最初のギター・ヒーローの一人ですね。トゥワング(twang)と呼ばれる低音弦の太い鳴りが彼の代名詞でした。


Duane Eddy - Rebel-rouser

 

 コーラスはダーレン・ラヴを中心とした女性グループ、ブロッサムズ。フィル・スペクター・プロデュースしたクリスタルズの全米NO.1ヒット「ヒーズ・ア・レベル」は実はブロッサムズが歌っていたことはのちに有名になりましたし、ダーレン・ラヴをソロでもスペクター作品を数多くヒットさせています。


The Crystals - He's a Rebel (1962)

 

  男性コーラスのメインは元ザ・ダイアモンズのデイヴ・サマーヴィル。彼らの代表曲「リトル・ダーリン」は映画「アメリカン・グラフィティ」にも使われていました。


Little Darlin'-The Diamonds-1957

 

 「ロックンロール・ララバイ」の最後のビーチ・ボーイズ風のコーラス(実際にビーチ・ボーイズに声をかけて断られたそうです)を仕切っているのがロン・ヒックリン・シンガーズ。いわゆる”レッキング・クルー”のバック・コーラス・チームですね。モンキーズの「アイム・ア・ビリーバー」などのポップスのほか、パーシー・フェイスヘンリー・マンシーニなどのイージー・リスニングもの、映画、TVなどたくさんやっています。

 B.J.トーマスの「雨にぬれても」が使われた映画「明日に向かって撃て」の中でバカラックが一番誇らしく思っているという曲「自由への道(South American Gateway)」も彼らがコーラスをやっています。


South American Getaway (Butch Cassidy/Soundtrack Version)

 

 というわけで「ロックンロール・ララバイ」。さりげなく、心に沁みる曲ですが、同時にアメリカン・ポップスの黄金期の”サウンド”を集約しフラッシュバックさせるような作品でもあったわけです。

 

 

 

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