まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。(現在は不定期で更新中)古今東西のポップ・ソングを、エピソード、和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などを交えて紹介しています。親しみやすいポップスは今の時代では”ニッチ(NIche)”な存在になってしまったのかもしれませんが、このブログがみなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。追加情報や曲にまつわる思い出などありましたらどんどんコメントしてください!text by 堀克巳(VOZ Record

「孤独なハイウェイ(Love on a Two Way Street)」ザ・モーメンツ(1970)

 おはようございます。突然ですが、お盆休みということで、「まいにちポップス」期間限定でちょっとだけ復活します。今日はスウィート・ソウルで。ザ・モーメンツの名曲「孤独なハイウェイ(Love on a Two Way Street)」です。

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I found love on a two way street and lost it on a lonely highway
Love on a two way street and lost it on a lonely highway

True love will never die, so I've been told, but now I must cry
It's finally goodbye, I know

With music softly playing, her lips were gently saying: "I love you"

She held me in desperation, I thought it was a revelation
And then she walked out

How could I be so blind, to give up love for the very first time
To be fooled is a hurting pain, to be loved and fooled
Is a crying shame, while I bear the blame as she laughs my name

With music softly playing, her lips were gently saying: "Honey, I love you."
She held me in desperation, I thought it was a revelation
And then she walked out

I found love on a two way street and lost it on a lonely highway
Love on a two way street and lost it on a lonely highway

I found love on a two way street and lost it on a lonely highway
Love on a two way street and lost it on a lonely highway

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二車線の道で愛を見つけて、孤独なハイウェイでそれを失った
両思いの愛を、孤独なハイウェイで失くしたのさ

真実の愛は決して死なない、そう聞かされてきた
だけど今僕は絶対泣いてしまうんだ 結局さよならさ

音楽がそっと流れ、彼女の唇が優しくこう言った「愛してるわ」
彼女はやけになって僕を抱きしめた それで僕はわかったんだ
そして彼女は出て行ったんだ

初めての愛をあきらめるなんて、どうして僕はこんなに盲目だったのだろう
騙されるのは傷のような痛みだ、愛されて騙されるなんてあんまりだ
彼女が僕の名前を笑うとき、僕はその責めを負うんだ

音楽がそっと流れ、彼女の唇が優しくこう言った「愛してるわ」
彼女はやけになって僕を抱きしめた それで僕はわかったんだ
そして彼女は出て行ったんだ

二車線の道で愛を見つけて、孤独なハイウェイでそれを失った
両思いの愛を、孤独なハイウェイで失くしたのさ

二車線の道で愛を見つけて、孤独なハイウェイでそれを失った
両思いの愛を、孤独なハイウェイで失くしたのさ    (拙訳)

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  モーメンツは1960年代半ばにワシントンD.C.で結成されたコーラス・グループです。

 1965年にワシントンD.C.のハワード大学で一緒だったミゼル(マイゼル)・ブラザーズとフレディ・ペレン、との学友のトビー・ジャクソンが設立した”Hog Records”と契約しシングルを一枚リリースしています。

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 ミゼル(マイゼル)・ブラザーズは70年代にスカイハイ・プロダクションを設立し、ジャズの名門ブルーノート・レーベルでドナルド・バードやボビー・ハンフリーなどのフュージョンの傑作を数多くプロデュースした兄弟です。ドラムスはハーヴィー・メイソン、ベースはチャック・レイニー、ギターはギターはワー・ワー・ワトソンやデヴィッド・T・ウォーカーなど凄腕のメンバーを固定して使うことで、彼らのサウンド・スタイルを作ったようです。

  1979年リリースのディスコ史上屈指の傑作テイスト・オブ・ハニーの「今夜はブギ・ウギ・ウギ」も彼らが手がけた曲でした。

 また、兄のアルフォンソはフレディ・ペレンとともにモータウンのソングライターチーム”ザ・コーポレーション"のメンバーとしてジャクソン5の「帰ってほしいの」「ABC」「小さな経験」などの大ヒットを書いています。

 シングルこそ売れませんでしたが、後のスーパー・プロデューサー/ソングライターになる面々いきなり出会ったモーメンツのメンバーは”出会い運”を持っていたのかもしれませんね、その後彼らは女性シンガー・ソングライターでプロデューサーのシルヴィア・ロビンソンと出会い、彼女が夫と設立したオール・プラチナム・レコード(レーベルはスタング・レコード)と契約すると、最初のシングル"Not on the Outside"がR&Bチャートで13位、ビルボード・ホット100で57位まで上がるヒットになりました。

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  この時代のアメリカのR&Bのコーラス・グループは、ヒット曲が出るとかない息長く活動を続けるのですが、その間メンバーの入れ替わりがけっこう激しく、オリジナル・メンバーがいなくなるなんてことも珍しいことではないのですが、モーメンツも例外ではなく、その後加入したアル・グッドマン、ウィリアム"ビリー"ブラウンが主力になっていきます。

 そして、1970年に彼らの最大のヒット曲であるこの「孤独なハイウェイ」がリリースされました(全米3位)。

 実はこの曲は1968年に彼らと同じレーベルにいたレジー・ヴァレンタインという女性シンガーが1968年に最初に歌っていたんです。

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 レジーはオール・プラチナムの最初のヒット曲を歌った人で、Wikipediaによると(出典不明なので真偽はわかりませんが)作詞にも大きく貢献したようですが、作者のクレジットからは外されてしまったようです。

 レーベルのオーナーでこの曲のメインの作者(発案者)であるシルヴィア・ロビンソンは絶対に売れるという確信があったんでしょう、モーメンツにも歌わせたわけです。

 この曲のヒットの後、ハリー・レイというメンバーが加わり、1979年にはメジャーのポリドールに移籍しますが、「ザ・モーメンツ 」という名前を使用することが法的にできなくなったため、彼らはグループ名を自分たちの姓をつなげた” レイ、グッドマン&ブラウン”に変更します。

 そして生まれたヒット曲が「スペシャル・レディ」です(1979年全米5位、R&B1位)


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 その後1982年にレイが脱退したため、ケヴィン・オーエンスという人が加入しますが1987年レイが復帰、しかし1992年10月レイが急死し、ケヴィン・オーエンスが再びメンバーとなるなど紆余曲折があったようです。

  21世紀に入って彼らが注目を集めたのは、アリシア・キーズによってでした。2003年の大ヒット曲「You Don't Know My Name」のバックコーラスに、グッドマン、ブラウン、オーエンスに一時メンバーだったラリー”アイス”ウィンフリーの4人を使い、プロモーションツアーを行ったのです。

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 グループの低迷期だったので、ブラウンはアリシアに深く感謝したようで、彼女のことを”天使”だとインタビューで答えていました。

 その後グッドマンも亡くなってしまったため、現在はビリー・ブラウンが中心になって活動を続けているようです。

 最後に「孤独のハイウェイ」は数多くカバーされていますので、代表的なものをご紹介して終わりたいと思います。

 1981年リリースのステイシー・ラティソウのカバー。当時彼女はまだ14歳ということで、失恋の切なさが初々しく伝わってきます(全米26位 R&B2位)。プロデュースはナラダ・マイケル・ウォルデン。彼は彼女の成功をきっかけにして、数年後ホイットニー・ヒューストンマライア・キャリーを手がける大ヒットプロデューサーになります。

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グロリア・エスティファンは1994年リリースのアルバム「Hold Me, Thrill Me, Kiss Me」で取り上げています。

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 また2009年にはこの曲をサンプリングした大ヒットが生まれます。Jay-Zアリシア・キーズの「Empire State of Mind 」。


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 そして、ボズ・スキャッグス。いいカバーだと思います。2013年のアルバム「メンフィス」に収録されています。

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 カバー曲はどれもオリジナルのアレンジを生かしたスタイルになっていますね。それだけこのアレンジは素晴らしく、この曲と切り離せないものなんでしょうね。

 

Hold Me, Thrill Me, Kiss Me [Analog]

 

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