まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。(現在は不定期で更新中)古今東西のポップ・ソングを、エピソード、和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などを交えて紹介しています。親しみやすいポップスは今の時代では”ニッチ(NIche)”な存在になってしまったのかもしれませんが、このブログがみなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。追加情報や曲にまつわる思い出などありましたらどんどんコメントしてください!text by 堀克巳(VOZ Record

「ロンリー・ハート(Owner of a Lonely Heart)」イエス(YES)(1983)

 おはようございます。今日はイエスの「ロンリー・ハート(Owner of a Lonely Heart)」です。

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Move yourself
You always live your life
Never thinking of the future
Prove yourself
You are the move you make
Take your chances, win or lose her
See yourself
You are the steps you take
You and you, and that's the only way
Shake, shake yourself
You're every move you make
So the story goes

Owner of a lonely heart
Owner of a lonely heart
(Much better than a) Owner of a broken heart
Owner of a lonely heart

Say you don't want to chance it
You've been hurt so before
Watch it now
The eagle in the sky
How he dancin' one and only
You, lose yourself
No, not for pity's sake
There's no real reason to be lonely
Be yourself
Give your free will a chance
You've got to want to succeed

Owner of a lonely heart
Owner of a lonely heart
(Much better than a) Owner of a broken heart
Owner of a lonely heart

Owner of a lonely heart

After my own indecision
They confused me so
(Owner of a lonely heart)
My love said never question your will at all
In the end you've got to go
Look before you leap
(Owner of a lonely heart)
And don't you hesitate at all – no, no Yow!

Owner of a lonely heart
Owner of a lonely heart
(Much better than a) Owner of a broken heart
Owner of a lonely heart

Owner of a lonely heart
Owner of a lonely heart
(Much better than a) Owner of a broken heart
Owner of a lonely heart

Owner of a lonely heart

Sooner or later, each conclusion
Will decide the lonely heart
(Owner of a lonely heart)
It will excite, it will delight
It will give a better start
(Owner of a lonely heart)

Don't deceive your free will at all
Don't deceive your free will at all
(Owner of a lonely heart)
Don't deceive your free will at all
Just receive it
Just receive it
(Owner of a lonely heart)

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自分を動かせ
おまえはいつも自分の人生を生きているんだ
未来のことなど考えずに
おまえ自身を証明しろ
おまえはおまえの行動のことだ
チャンスをつかめ彼女をモノにしようが失敗しようが
自分自身を見ろ
おまえはおまえが踏み出す一歩そのもの
おまえとおまえ、それがたった一つの道だ
震えろ、自分を震わせろ
おまえとはおまえの一挙手一投足のことだ
そうやってストーリーは進む

孤独なハートの持ち主
孤独なハートの持ち主
(ずっといい)傷ついたハートの持ち主より
孤独なハートの持ち主

リスクを冒したくないと言え
かつて傷ついたことがあったね
今そのことをよく見ろ
空に舞う鷲
ヤツのワンアンドオンリーな舞う姿を
おまえは自分を見失って
同情はいらない
孤独になる本当の理由なんてない
自分自身であれ
自由な意志にチャンスをあげろ
成功したいと思わなければならない

孤独なハートの持ち主
孤独なハートの持ち主
(ずっといい)傷ついたハートの持ち主より
孤独なハートの持ち主

私の優柔不断の後、
彼らが私を混乱させた
(♪寂しい心の持ち主)
私の愛は言った、あなたの意志を疑ってはいけないと
結局、おまえは行くしかないんだ
 飛ぶ前に見ろ
(孤独なハートの持ち主)
躊躇してはいけない だめだ、だめだ

孤独なハートの持ち主
孤独なハートの持ち主
(ずっといい)傷ついたハートの持ち主より
孤独なハートの持ち主

遅かれ早かれ、
どんな結論も孤独なハートを決める
(孤独なハートの持ち主)
それは興奮させ、喜びを与え、
より良いスタートを提供する
(孤独なハートの持ち主)

おまえの自由意志をいっさい欺くな
おまえの自由意志をいっさい欺くな
(孤独なハートの持ち主)
おまえの自由意志をいっさい欺くな
ただ受け取れ
ただ受け取れ
(孤独なハートの持ち主)  (拙訳)

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イエス「ロンリー・ハート(Owner of a Lonely Heart)」ヤマハぷりんと楽譜

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 イエスは1968年にロンドンでクリス・スクワイ (B)とジョン・アンダーソン(Vo)を中心に結成されました。1970年代に大変人気のあったプログレッシブ・ロック、いわゆる”プログレ”を代表するバンドで、ピンク・フロイドキング・クリムゾン、エマーソン、レイク&パーマー、ジェネシスと共に”五大プログレ・バンド”と呼ばれています(昔はジェネシスを含まずに”四大”と読んでいたような記憶もありますが)。

 ”プログレ”は1960年代後半にロックが成熟していく過程で、より前衛的な方向性で形成されていったジャンルで、クラシックやジャズや現代音楽などの要素を取り入れた長めで複雑な構成の楽曲をテクニック重視で演奏し、かつ作品の”コンセプト”を重視していました。

 ほとんどがイギリスのバンドでしたから、イギリス人の気質がある意味よく現れたジャンルだったのかもしれないですね(アメリカのロックはいい意味でも悪い意味でもちょっとおおらかですから)。

 プログレ・バンドとしての彼らの頂点は『こわれもの』(1971年)と『危機』(1972年)という2枚のアルバムになります。この頃は、リック・ウェイクマン(キーボード)、スティーヴ・ハウ(ギター)という人気プレイヤーが加わっていました。

 プログレ・バンドはアルバム主義ですからシングル・ヒット狙いなどはしないので、イエスもいわゆるヒット曲はそんなにないのですが、例外がこの曲。『こわれもの』に収録されていたラウンドアバウト(Roundabout)」(全米13位)。日本でも2012年にテレビアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」でエンディングテーマで使われるというまさかの展開がありましたので、知名度が一番高い曲かもしれないですね

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 1979年にはバンドの顔であるジョン・アンダーソンが、リック・ウェイクマン(一度やめて出戻ってきた前歴あり)とともにバンドを去ってしまいます。そこで残ったメンバーに、なんと「ラジオ・スターの悲劇」のバグルズの二人(トレヴァー・ホーンジェフリー・ダウンズ)が加わります。イエスバグルスはマネージメントが同じだったのでそういう話になったわけですが、トレヴァー・ホーンはもともとイエスの大ファンだったそうです。

 そして、バグルスが自身のアルバムで作っていた曲を、イエス流に料理してシングルにしたのが「Into The Lens」でした。

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 *この作品を最後にバグルスの二人はイエスを辞め、再びバグルスとしてこの曲をリアレンジし、「I Am Camera」としてリリースしています。

 ここで、イエスは活動を停止となり、スティーヴ・ハウジェフリー・ダウンズジョン・ウェットンカール・パーマーエイジアを結成。残されたクリス・スクワイアとアラン・ホワイトは、トレヴァー・ラビン(エイジアへの参加も打診され辞退したという説もあります)を引き入れ、そこに初代イエスのキーボーディストのトニー・ケイが加え、シネマというグループを作り、バグルストレバー・ホーンを今度はプロデューサーという形で呼び入れ、レコーディングをスタートさせました。

 そして、トレヴァー・ラビンがもともと作っていたのがこの「ロンリー・ハート」でした。自分のソロアルバム用のデモの一つだったそうで、当時アリスタ・レコードのオーナーだったクライヴ・デイヴィスにも送りましたが、「奇妙すぎるから、ヒットしないよ」と却下され「フォリナーのような曲を書いてまた戻ってきこい」と逆に言われたといいます。

 ラビンはのちにこの曲のデモの入ったアルバム「90124」(「ロンリーハート」が収録されたアルバムが「90125」だったからですね)をリリースしています。

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 あの印象的なギターのリフから曲を作り始めたらしく、原型はすでに出来上がっていたんですね。ただ、ポップなハードロックという感じで、ラビンもシネマには向いていないのでやろうとは思っていなかったようです。

 ただ、シネマがレコーディングしていただにシングル向きの曲がないと思っていたトレヴァー・ホーンが、スタジオでたまたまこのデモを聴いて、ぜひやろうと提案したようです。彼はこう回想しています。

「メンバーは『ロンリー・ハート』をずっとやろうとしなかったんだ。ある日、スタジオに行ったら、みんなが集まって僕を待っていて、『もうこの曲はやらないことにした』って言うんだ。僕は床にひざまずいて、みんなのズボンの裾を引っ張りながら、『お願いだから、もう一度だけやらせてくれ!』と騒いで、叫んだんだ。『ドラムをプログラムさせてくれ。シンプルにするんだ。「Boom, chick, boom boom, boom boom”」って感じで、僕らがやろうとしていた「doo de doop dook doop, doo dook, chick chick doop boof...…」みたいには絶対にしちゃいけない』ってね」

                        (LOUDER  9 April 2024) 

 そして、当時最新だったサンプリングもできるシンセサイザー(Fairlight CMI)を使うことも含めて彼のアイディアをアレンジに加え、メンバーもそれに協力して進めていったようです。この曲によって、Fairlight CMIの”オーケストラ・ヒット”(曲の20秒あたりに出てくる音)が世界的に有名になりましたよね。

 トレヴァー・ホーンが少し前までイエスのメンバーだったという信頼関係があったからこそ、他のメンバーも意見を聞き入れたのでしょう。

 そこから、イエスを脱退していたジョン・アンダーソンが加わるのですが、彼はこう語っています。

「僕は南フランスで音楽の仕事をしていた後、休憩のためにロンドンに戻って、クリス(スクワイア)と会ったんだ。彼は僕にトラックを聴かせてくれたんだけど、それは今までで一番素晴らしいトラックで、サンプルとかも使われていた。「クリス、このサビはまさにヒットレコードだ。でも、ヴァース(Aメロ)はもう少し手を加える必要があるな」と言ったんだ。彼は「じゃあ、歌ってくれよ?」と言いました。僕は「もし歌ったら、当選イエスみたいに聞こえちゃうぜ」と言うと、彼は「そう、それが欲しいんだよ」と答えた。だから「わかった」と言って、僕はよりスタッカート(音を短く切って歯切れ良くする)にした歌詞を歌ったんだ。コード進行がすごく強調されていたから、スタッカートにする必要があったのさ。それがうまくいって、みんなが気に入ってくれたよ」(SONGWRITER UNIVERSE  November 5, 2020)

 ジョン・アンダーソンが最後に合流することで”シネマ”が”イエス”になったんですね。

 「ロンリー・ハート」はイエスの新曲として作られたのではなく、

 トレヴァー・ラビンが自分用に作り→ラビンがシネマに参加したのでシネマの曲として録音を始め→ジョン・アンダーソンが歌うことになったので”イエス”の曲になった

 という経緯で生まれたんですね。

 トレヴァー・ラビンとトラヴァー・ホーンという二人のトレヴァーがいなかったら、大ヒットするどころか、イエスのレパートリーにもなっていなかったわけです(イエス自体存続していなかったでしょうし)。

 ラビンはこう語っています。

「あの曲はアルバムに収録されるまでにたくさんの変更を経たんだ。デモには数々のハッピーなアクシデントがあったんだけど、トレバー・ホーンがそれらを曲に残しておくべきだと言ってくれた。僕はこの曲の進化の仕方が大好きだったよ。ジョンの貢献は文字通り素晴らしかった」 (KFOX14  October 5th 2023 )

 原曲からヒット・ポテンシャルはありましたが、トレヴァー・ホーンのアレンジ(サウンド)と、ジョン・アンダーソンのヴォーカルが加わったからこそ、この80年代を代表するヒットが生まれたのだと思います。

 最後は2016年に行われたイギリス、マンチェスターのApoloでのライヴ映像を。ジョン・アンダーソンにトレヴァー・ラビン、そこにリック・ウェイクマンが加わっています。

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