まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「呪われた夜(One of These Nights)」イーグルス(1975)

 おはようございます。

    今日はイーグルスの「呪われた夜」です。(昨日取り上げたバカラックの新曲「Midnight Watch」のサビの歌詞が〜One Of These Nights〜♪だったので、連鎖的に取り上げてしまいました、、、)


One of These Nights (2018 Remaster)

One of these nights
One of these crazy old nights
We're gonna find out, pretty mama
What turns on your lights


The full moon is calling, the fever is high
And the wicked wind whispers and moans
You got your demons and you got desires
Well, I got a few of my own


Ooh, someone to be kind to
In between the dark and the light
Ooh, coming right behind you
Swear I'm gonna find you one of these nights


One of these dreams
One of these lost and lonely dreams, now
We're gonna find one
Mmm, one that really screams


I've been searching for the daughter of the devil himself
I've been searching for an angel in white
I've been waiting for a woman who's a little of both
And I can feel her, but she's nowhere in sight


Ooh, loneliness will blind you
In between the wrong and the right
Ooh, coming right behind you
Swear I'm gonna find you one of these nights

 

(One of these nights)In between the dark and the light
Comin' right behind you
Swear I'm gonna find you
Get you, baby, one of these nights
(One of these nights)
Hoo, hoo-hoo.  Hoo, hoo-hoo
(One of these nights)
I can feel you.   I can feel
(One of these nights)
Comin' right behind you
Swear I'm gonna find you, now
(One of these nights)
And it gets so dark
So dark and cold and lonely

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  "いつかこんな夜に クレイジーないつもの夜さ

  オレたち 見つけ出すんだ プリティ・ママ、

  アンタの胸に灯をともしてくれるものを

 

   満月が呼び 熱気は高まり

   邪悪な風がささやき、うめき声をあげる

   おまえにはおまえの悪魔がいて  欲望がある

   ああ、オレにもそれは少しあるんだ

 

 闇と光の間で おまえが優しくするべき人が

 すぐ後ろまでやってくる

 誓って オレもおまえを探し出すよ

 こんな夜に

 

 夢のひとつを 今では失くしてしまった孤独な夢の

    俺たちは見つけるさ 本当に叫んでいる夢を

 

 オレは悪魔本人の娘を捜してきた

 白をまとった天使も捜してきた

 そのどっちも少し持ってる女を待っていた

 彼女の存在は感じることはできても 目には見えないんだ

 

 善と悪の間で 孤独がおまえを何も見えなくする 

 おまえのすぐ後ろまで来ているんだ

 誓って オレはおまえを探し出すよ

 こんな夜にいつか

 

 闇と光の間にある こんな夜に

 誓って オレはおまえを探し出す

 見つけるよ、ベイビー、いつかこんな夜に”   (拙訳)

 

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「呪われた夜」の楽譜はこちら

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 One of These Nights、直訳すればいくつかあるうちの一つの夜、です。しかし、昨日ブログに登場した「Midnight Watch」もそうですが「呪われた夜」も、全然ハッピーじゃない(不吉ですらある)夜に眠れずにいて、それでもいつかきっと、と確証のないことを願う、という内容が共通していて、そういう状況で使われることが最もしっくりする言い回しなのかなと思います。

 

 それにしても「呪われた夜」、考えてみると結構すごいタイトルですが、当時は全然違和感なく受け止めました。

 

 イントロをはじめとするサウンドの雰囲気もそういうイメージと結びつくものでしたが、なんといってもアルバム・ジャケットのイメージというのが大きかったように思います。

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 このジャケットをデザインしたゲイリー・バーデンは、ウェストコースト・ロックを象徴する作品を数多く手がけた人です。「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」をはじめとする現在に至るまでのニール・ヤングの多くのアルバム、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングの「デジャヴ」、ドアーズ「モリソン・ホテル」、ジョニ・ミッチェルの「ブルー」、ジャクソン・ブラウンの「プリテンダー」など、ロック史に残るものがたくさんあります。

 

 この時期イーグルスはそれまでのフォーク・ロック、カントリー・ロック・スタイルから、より洗練されたスタイルへと大きく変化をしようとしていました。

 そこでデザインを依頼されたゲイリーはこう語っています。

イーグルスとその音楽が持つパワフルでダークなマジックを象徴し表現するような、

魔術的なお守り(タリスマン)を作って、アルバムジャケットのフロントカバーに使おうと決めました」

 

 そして、彼の古くからの知り合いである芸術家のボイド・エルダーの元に行き、この牛の頭蓋骨を使った作品を選びます。

 牛の骨とその装飾はカウボーイとインディアンをイメージさせるもので、それはすなわち今までのイーグルスであり、その骨の表面をキラキラと光る磨かれたガラス玉で覆覆っているところは、未来のイーグルスを象徴すると彼は考えたのです。

 

 この曲を書いたドン・ヘンリーグレン・フライは、「ベスト・オブ・マイ・ラブ」が大ヒットしたことによるバンドのバラードのイメージを脱却したいと考えていたようです。

 R&Bのメッカ、デトロイト出身のグレン・フライはこの曲を書き始めるときに、スピナーズやアル・グリーンを聴いていたそうです。

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 そして歌詞はドン・ヘンリーが書き始めました。そして、ある程度進むと、グレンが作詞にも意見を出し、ドンが作曲にもアイディアを出しながら最終的に仕上げていったそうで、そういうやり方は彼らにとってはよくあるパターンだったようです。

 

 1975年というのは、ディスコが盛り上がって来た時期で彼らもその辺りは意識していたようです。

 ドン・ヘンリービー・ジーズの”ジャイヴ・トーキン”はいいダンス・レコードだ。「呪われた夜」もニューヨークのディスコでかかっていた」と語っています。

 

 今の感覚では、「呪われた夜」はダンス・ミュージックとまでは言えないと思いますが、当時のR&Bを意識的に取り入れることで、それまでのカントリー・ロックのイメージからの脱却に見事に成功した作品だったのです。

 

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