まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲を選曲しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ヴァーチャル・インサニティ(Virtual Insanity)」ジャミロクワイ(1996)

 おはようございます。

 今日は昨日に続いてジャミロクワイ。「ヴァーチャル・インサニティ」です。


Jamiroquai - Virtual Insanity (Official Video)

 

”   オレたちが住んでいるのはどんなとこか 言わせてくれ

 

  ほんとはちっぽけなことなのに大げさになると

       なんで、人間はそれを全部信じてしまうのか不思議だ

  いったいオレたちはどんな魔法を自分たちにかけているのか

  

  オレはありったけの愛を世界に捧げるよ

  そう言われた時だけね

        何も見えない 息もできない これ以上何にもなれない

  オレたちの生き方を何も変えることはできない

  だってオレたちはいつも奪うだけで与えることがないから

  だから今や状況はどんどん悪い方に変わっている

  見るんだ オレたちが生きているのは狂気の世界さ

       オレには理解できないんだ 世の半数のヤツらが罪を犯していることを

    オレたちが与えられるものはこの、、

 

  狂気に見えない狂気でできた未来 しかないのか

        役に立たない、ねじれた、最新テクノロジーへの偏愛で

  いつも支配されているように思えるんだ

  何も聞こえない 地下で暮らすオレたちには

 

   オレたちはなんていう混乱の中にいるんだろう

      どこから手をつけたらいいかもわからない

        この地上の人間が作った弱々しい絆をほどいてしまえば

      全ての母親が子供の肌の色を選べるんだ

   それは自然なことじゃない  それはヤツらが昨日言ったことさ

   もうできるのは祈ることくらいだ

         オレは新しい宗教を見つけたほうがいいかもな

      違う種族を統合するなんて かなりイカれてるよ

   こんな未来についてオレたちに伝えられるべきことが何かあるはずさ

 

   もしオレたちが地下で生きているなら 何も音はしない

   それが事実上の狂気なのさ 仮想現実なんて忘れるんだ

      これほどひどいことはない  わかってるさ

 

   狂気に見えない狂気でできた未来

   役に立たない、ねじれた、最新テクノロジーへの偏愛で

   いつも支配されているように思えるんだ

   何も聞こえない 地下で暮らすオレたちには

 

        オレたちが生きているのは一見狂気に見えない狂気の世界さ  ” (拙訳)

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 what we're living in (let me tell ya)
It's a wonder man can eat at all
When things are big
That should be small
Who can tell what magic spells we'll be doing for us.


And I'm giving all my love to this world
Only to be told
I can't see, I can't breathe
No more will we be
And nothings gonna change the way we live
Cause we can always take and never give
And now that things are changing for the worse,
See, it's a crazy world we're living in
And I just can't see that half of us immersed in sin
Is all we have to give these

Futures made of virtual insanity
Now always seem, to be governed by this love we have
For useless, twisting of our new technology
Oh now there's no sound for we all live underground

And I'm thinking in what a mess we're in
Hard to know when to begin
If I could slip the sickly ties that earthly man has made
And now every mother can choose the color of her child
That's not nature's way
Well that´s what they said yesterday
There's nothing left to do but pray
I think it's time I found a new religion
Whoa it's so insane to synthesize another strain
There's something in these futures that we have to be told.

 

Futures made of virtual insanity
Now always seem, to be governed by this love we have
For useless, twisting of our new technology
Oh now there's no sound for we all live underground


Now there's no sound if we all live underground
And now it's virtual insanity
Forget your virtual reality
Oh, there's nothing so bad, I know yeah

 

Futures made of virtual insanity
Now always seem to be governed by this love we have
For useless, twisting of our new technology
Oh now there's no sound for we all live underground


Virtual insanity is what we're living in

 

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 数多あるミュージック・ビデオの中でも、最も有名なものの一つですね。1997年のMTVビデオ・ミュージック・アワードで最優秀ビデオ賞を獲得しています。まさに曲と映像の相乗効果で、ジャミロクワイ最大のヒット曲になりました。

 昨日このブログで取り上げた彼のデビュー曲「When You Gonna Learn?」はクラブ・ミュージックの生々しさがありましたが、それに比べるとこの「ヴァーチャル・インサニティ」は大変に洗練されている印象があります。

 

 しかし、歌詞のスタンスは「When You Gonna Learn?」といっさい変わってないですね。この曲でも自然の摂理に逆らった人間の愚かな行動に警鐘を鳴らしています。

 

 さて、”ヴァーチャル(virtual)”とか”ヴァーチャル・リアリティ”というのはここ何年もの間に耳慣れた言葉なので、僕もすっかりわかったような気になっていたのですが、この曲を訳して始めると、何かしっくりしない感じがしました。

 

 Virtual Reality=仮想現実だから、Virtual Insanity=仮想狂気、って理解してしまうと、本当の狂気じゃないことになるので、現実じゃない狂気についてジェイ・ケイは警鐘を鳴らしていることになってしまいます。

 

 それで、あらためて"Virtual”を調べて見ると、この言葉は一義的には

<(表面または名目上はそうでないが)事実上の、実質上の>

 ということのようです。

 ですから、この曲の歌詞を「表面はそう見えないが事実上狂気で作られてゆく未来」ととらえると、すごくしっくりする気がします。

 

  Virtual Realityという言葉の反動として、彼はVirtual Insanityという造語を作ったのでしょうから、”仮想空間”というイメージは歌詞全体に強くあると思いますが、日本語で”仮想”と訳してしまうとこぼれ落ちてしまう、”事実上の”という意味をしっかりとらえ直す必要があるように思えます。

 ヴァーチャルは、現実の真逆の意味の”仮想”を指すのではなく、現実と虚構がクロスするようなニュアンスがあるのかもしれません。

 

 そう考えると、ヴァーチャル・リアリティも「事実上、実質上の現実」と解釈すると、映画「マトリックス」のように、人間が肉体を離れて仮想の世界で生きるようになる、なんていうイメージが浮かんできます。

 

 

 さて、この曲の最初のアイディアは、彼が日本にツアーでやってきたときに浮かんだものだそうです。

 場所は仙台。彼はバンド・メンバーのウォリス・ブキャナン(「When You Gonna Learn」でディジリドゥを演奏していた人です)と散歩に出たそうですが、季節は真冬で街は一面雪に覆われていたといいます。人気はまったくなく、30分歩いてやっと出会った女性にみんなどこに行ってしまったのかとたずねると、彼女は地下を指差したそうで、彼らが地下街に行くと、そこにはまるで外の世界と同じ光景が広がっていた、ということで、外の世界は無音で地下がにぎわっていたことから<there's no sound for we all live underground(地下に住む僕らには、なんの音もしない)>というフレーズを思いつき、そこでラフなデモだけ作り、アルバム制作時になってあらためて着手したのがこの曲だったというわけです。

 

 そのSF的なイメージから始まりましたが、彼が歌詞のテーマにしたのが動物の遺伝子操作だったといいます。

 ちょうど発売された頃、クローン羊”ドリー”が生まれて世界的なニュースになっていたのですが、この曲が引き合いに出されることはなかったとジェイ・ケイはのちに語っています。

 

 

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