まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「Dynamite」BTS(2020)

 おはようございます。

 先日、家族から”どうしてBTSアメリカで売れたの?”とたずねられました。もちろん、答えらませんでした。だいたい、彼らの曲をまともに聴いたことさえなかったですから。しかし、最近歌番組などでよく耳にするこの曲には、かなり気持ちが惹かれるのを感じていました。

 というわけで、今日はBTSの「Dynamaite」を。


BTS (방탄소년단) 'Dynamite' Official MV

 

 ”今夜、僕は星たちの仲間に加わるから

   僕が夜に火を灯すのを見ていて

 

      朝起きて 靴を履いて 一杯のミルクで

   さあ、始めるぞ

      キングコングは転がる石のようにドラムを鳴らす

       歌を歌って家に帰ろう  レブロン・ジェームズくらい高くジャンプして

      ディンドンって僕の電話がなっている

       アイスティとピンポン・ゲーム

 

       ズシンときてるぜ ブーンって唸るベース音が聞こえるかい?

       こっちは準備完了

       人生は蜂蜜のように甘く  このビートはレジみたいにお金の響きがする

 

  ディスコは過熱状態、気分も乗って、いつでもOK

  僕はダイアモンド 輝いているよね

  さあ、行こうぜ

 

        今夜、僕は星たちの仲間に加わるから

     僕が夜に火を灯すのを見ていて

        ちょっとしたファンクとソウルで、街を輝かせよう

  だから火をつけるのさ ダイナマイトみたいに

 

        友達も連れてきて仲間に加わろう 一緒に来たいヤツなら誰でも

        その通り有言実行 狂ったように体を動かすだけ

  昼でも夜でも空は明るい だから夜明けまで踊るよ

 

        レディースアンドジェントルメン 私には魔法が使えます

  とくとご覧あれ !

  

  ズシンときてるぜ ブーンって唸るベース音が聞こえるかい?

       こっちは準備完了

       人生は蜂蜜のように甘く  このビートはレジみたいにお金の響きがする

 

   ディスコは過熱状態、気分も乗って、いつでもOK

   僕はダイアモンド 輝いているよね

   行こうぜ

 

        今夜、僕は星たちの仲間に加わるから

     僕が夜に火を灯すのを見ていて

        ちょっとしたファンクとソウルで、街を輝かせよう

  だから火をつけるのさ ダイナマイトみたいに

 

        ダイナナナナナ、、、人生はダイナマイト

  ダイナナナナナ、、、人生はダイナマイト

  ちょっとしたファンクとソウルで、街を輝かせよう

  だから火をつけるのさ ダイナマイトみたいに  ” (拙訳)

  

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  ' Cause ah, ah, I'm in the stars tonight
   So watch me bring the fire and set the night alight
 
   Shoes on get up in the morn
   Cup of milk let’s rock and roll
 
   King Kong kick the drum rolling on like a rolling stone
   Sing song when I’m walking home
   Jump up to the top LeBron
   Ding dong call me on my phone
   Ice tea and a game of ping pong
 
   This is getting heavy
   Can you hear the bass boom, I’m ready
   Life is sweet as honey
   Yeah this beat cha-ching like money
 
 Disco overload I’m into that I’m good to go
 I'm diamond you know I glow up
    Hey, so let's go
 
   'Cause ah, ah, I'm in the stars tonight
    So watch me bring the fire and set the night alight
    Shining through the city with a little funk and soul
    So I'ma light it up like dynamite, woah
 
    Bring a friend join the crowd
    Whoever wanna come along
    Word up talk the talk just move like we off the wall
    Day or night the sky’s alight
    So we dance to the break of dawn
 
    Ladies and gentlemen, I got the medicine so
    you should keep ya eyes on the ball, huh
 
    This is getting heavy
    Can you hear the bass boom, I’m ready
  Life is sweet as honey
     Yeah this beat cha ching like money
 
    Disco overload I’m into that I’m good to go
    I'm diamond you know I glow up
    Let’s go
 
   'Cause ah, ah, I'm in the stars tonight
    So watch me bring the fire and set the night alight
    Shining through the city with a little funk and soul
    So I'ma light it up like dynamite, woah
 
     Dynnnnnanana, life is dynamite
     Dynnnnnanana 
     Dynnnnnanana, life is dynamite
     Shining through the city with a little funk and soul
     So I'ma light it up like dynamite, woah
 
     Dynnnnnanana eh   Dynnnnnanana eh
     Light it up like dynamite
     
    'Cause ah, ah, I'm in the stars tonight
     So watch me bring the fire and set the night alight
     Shining through the city with a little funk and soul
     So I'ma light it up like dynamite
 
    'Cause ah, ah, I'm in the stars tonight
     So watch me bring the fire and set the night alight
     Shining through the city with a little funk and soul
     So I'ma light it up like dynamite, woah
 
     Dynnnnnanana, life is dynamite
     Dynnnnnanana
     Shining through the city with a little funk and soul
     So I'ma light it up like dynamite, woah
 
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 BTSRM(アールエム)、SUGA(シュガ)、JIN(ジン)、J-HOPE(ジェイ・ホープ)、JIMIN(ジミン)、V(ヴィ)、JUNGKOOK(ジョングク)の韓国の男性7人組のグループ。

 2013年にデビューしたときには「防弾少年団」というグループ名でしたが、2017年に世界進出も視野に入れて防弾少年団のローマ字表記「Bangtan Sonyeondan」の略称

であるBTSを正式なグループ名にしました。

 

 ちなみに、彼らの事務所のBig Hitエンタテインメントは、「NijiU」で日本でも有名になったJ.Y.パーク率いる大手事務所「JYPエンターテインメント」(Twice,2PMなどが所属)の所属作家だったパク・シヒョクという人物が独立して作ったところです。

 

  韓国のエンタテインメント業界は、先のJYPの他、SMエンタテインメント(東方神起、少女時代)YGエンタテインメント(BigBang)の3大プロダクションが牛耳っていて、小さな事務所のBTSがブレイクするには、それらの事務所のアイドルとは違う道を歩む必要がありました。

 

 彼らはもともと”ヒップホップ・グループ”としてオーディションで結成されました。

   アイドルでラップを取り入れるグループはすでにいましたが、彼らのアプローチはもっと本格的なものでした。


BTS (방탄소년단) 'No More Dream' Official MV

 当初、グループの核となったのが、リーダーのRM(ラップ・モンスターの略)、そして彼の他にSUGAもラップのスキルの評価は高かったようですが、アイドルがヒップ・ホップをやることへの風当たりの方がはるかに大きく、当初は苦難が多かったようです。

 

 ちなみに、2014年にロサンゼルスで行われたKCON(韓国文化の見本市)にBTSが登場したときに、お客さんの熱狂的な反応があって関係者を驚かせたそうです。アメリカの中で自発的に彼らを”見つけた“層がすでにあったんですね。

 

 韓国ではじめてヒットしたのは8枚目のシングルと少し時間がかかりました。2015年の「I NEED U」。この曲の入った「花様年華 pt.1」というミニアルバムはアメリカのインディーズチャートの上位に入っています。


[MV] BTS(방탄소년단) _ I NEED U

 

 彼らの歩みを追ってゆくと、RMとSUGAのラップに頼っていたところから、ダンス・パフォーマンスや他のメンバーの歌のスキルがあがってゆくとともに、ヒップホップからポップへと少しずつ変化していったことがわかります。

 

 大手事務所じゃなかったこと、ヒップホップをベースにしていたことが、他のアイドルグループとの大きな違いになったようです。

 大きな事務所には”スターを作るシステム”があって、みなそこで磨かれていくわけです。そうではなかった彼らは自分たちで試行錯誤しながら歩んでいったわけです。

 また、ヒップ・ホップは、アーティスト本人の”生身の声”をのせる音楽です。彼らは当初から曲作りに加わり、自分たちの言葉をラップにしてきました。

 

「普通、アイドルは『芸能事務所によってつくられた存在』というイメージが強く、そのせいで芸術的なアイデンティティを認めてもらえない。たいしてBTSは、『みずから考える独立した存在』であり、『自分のことを自分らしく語るミュージシャン』という点をうまく打ちだした気がします。つまり、アイドルに欠けていると思われている『偽りのない音楽』をしめすことに成功したのです」

(キム・チャンナム 「BTSを読む なぜ世界を夢中にさせるのか」キム・ヨンデ著)

 

 他のK-POPのグループのように、芸能界のプロに磨かれて完成された姿を見せるのではなく、生身の声を音楽に乗せ、試行錯誤する姿をネットに載せてゆくことで、結果として自発的なファンが生まれ彼らを応援するために結束してゆくことに結びついたようです。そういうファンの人たちを”ARMY”と呼ぶそうです。

 

「実際、世界的なBTS現象は『草の根運動』のようなARMYたちの熱いサポートなしには不可能でした」

キム・ヨンデBTSを読む なぜ世界を夢中にさせるのか」)

 

 普通、アーティストのアメリカ進出というと、向こうのプロデューサーやスタッフを立てて、向こうのシステムにのっかるというイメージがあります。今までアジアからも何人ものアーティストがそのかたちで挑戦しましたが、大きな成功を収めた人はいませんでした。

 

 BTSの場合は、そうじゃなかったんですね。まだ何の仕掛けもない状態で、アメリカでも自発的にファンが生まれ、それを『草の根運動』的に育てていったようです。

 あまりに真っ当で泥臭いやり方にも思えますが、ネットの力がTVを凌ぐような時代だからこそ可能だったのかもしれません。

 

 ”アメリカ仕様”の戦略をとらず韓国語のままで曲がヒットするということになった彼らですが、もう一つ上のステージ、英語圏の他のスターたちと並ぶためには、避けて通れなかったのが、英語の曲を歌うことでした。

 その結果生まれたのがこの「Dynamite」です。

 

 BTSが英語の曲を探しているというということで、欧米の作家たちの間で熾烈な競争が起こったといいます。そこで勝ち残ったのはイギリスの作家コンビ、デヴィッド・スチュワートとジェシカ・アゴンバーでした。

  デヴィッドは元ドラマー、ギタリストのトラックメイカー、ジェシカは元女性ボーカル・グループでメジャー・デビュー経験のある、メロディ・メイカー、作詞家です。

 

 

  この「Dynamite」。この曲の秘密を解く鍵が”ディスコ”です。ディスコっぽさは最初からなんとなく感じるとは思いますが、この曲のインスト・ヴァージョンもリリースされていて、それを聴くと、まさに”ディスコへのオマージュ”と呼んでいいものになっていることがわかります。

 


Dynamite (Instrumental)

 

 基本的なビートは”四つ打ち”。そして2拍目と4拍目にクラップ(手拍子)が入ります。ディスコの鉄板パターンです。例えばこの曲。


Earth, Wind & Fire - Let's Groove (Official HD Video)

 しかも、「Dynamite」の場合、ずん、ぱん、ずん、ぱん、ずん、ぱん、ずん、ぱぱん、と8拍目が連打になっています。このリズム・パターンではこの曲が有名ですね。


Patrice Rushen - Forget Me Nots (Official Video)

  ちなみに、少し軽快に歩くくらいの速さ(BPM115前後)で、<四つ打ちで2拍目と4拍目に手拍子>というのが老若男女分け隔てなくリズムに乗らせることのできる<最強のリズム・パターン>だと僕は考えています。

 リズムが均等ですから体を合わせるのが一番簡単ですし、EDMみたいに無機質な四つ打ちビートに抵抗感を持つ人にも、ヒューマンな手拍子が入ることで、ぐっととっつきやすくなります。

 このリズム・パターンの前では人はみな無力なんです(苦笑。

 

 最近ではこの曲もそのパターンですね。


CAN'T STOP THE FEELING! (From DreamWorks Animation's "Trolls") (Official Video)

  MV自体も「Dynamite」とイメージが近いですね。

 

 それから、このリズム・パターンでラップをフィーチャーしたものというと、ブルーノ・マーズの「24K Magic」などもあります。

 

 曲の後半に入ると、シックのナイル・ロジャースを思い起こさせるギターのカッティングやE,W&Fのトレードマークであるホーンが”さりげなく”入ってきます。

 

 そして、オケに”はっ”という吐息のような合いの手が入るのですが、マイケル・ジャクソンを思わせます。考えてみれば、歌詞に「Off The Wall」「Break of Dawn」という彼の曲名が入れられているのは意図的なことでしょう。

(「Off The Wall」のサビも2拍、4拍が手拍子パターンでした)

 だいたい、振り付け自体、マイケル入ってますしね。

 

 サウンド面での”ディスコへのオマージュ”はあくまでも”さりげない”レベルに抑えられているところがかえっていいわけですね。だから、僕のような年代の人間も知らず識らずのうちに惹きつけられていたのでしょう。

 

 そして、ベタなディスコに聞こえないのは、彼らの鍛えられたラップのスキルで組み立てられていることが大きいでしょう。また、歌のパートでも、メイン・ボーカルを取るメンバーたちの声質がそれぞれ繊細で、それもディスコのイメージから遠いものとして聴こえる要因になっています。

 (メイン・ボーカルのJUNGKOOKの歌の技量や、JIMINの魅惑的な声質などは、とてもヒップホップ・グループとは思えないレベルです)

 

 ちなみに、ソングライターのデヴィッドは彼の所属する会社の社長に、この曲を書くにあたって

ジャミロクワイをあらためて聴き直すといい、そこに何かありそうだから」

とアドバイスを受けたそうです。

 確かに、ジャミロクワイはディスコのビートを新しいスタイルで取り入れる才能に非常に優れていました。「Dynamite」って曲もありましたし。

 

 そう考えると、マイケル、E,W&Fからジャミロクワイそしてジャスティン・ティンバーレイクと、この「Dynamite」を聴くとディスコ・ポップの歴史がフラッシュバックしてゆくような感覚になります。

 

 これほどダンス・ポップの”鉄板”パターンが幾重にも重ねられたような曲だったら、全米1位になっても不思議はないかなあ、などとも思えてきます。

    

   そんなことを考えていると、僕個人の 2020年のNO.1ポップ・ソングはこれにするしかないかなあ、とやや降参に近い気持ちで思ったわけです。

(去年のNO.1はヒゲダンの「プリテンダー」でしたので、こんなマニアックなブログ書いているわりにミーハーな人間なんです、、、)

 

 

 最後に、ダンス抜きでも彼らひとりひとりの技量の高さが伝わってくる「Dynamite」のライヴ・パフォーマンスを。


BTS (방탄소년단) 'Dynamite' @ Good Morning America

 

 

「Dynamite」の歌詞にも出てくる、マイケル・ジャクソン「オフ・ザ・ウォール

 

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