まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ホエン・ユー・ゴナ・ラーン?(When You Gonna Learn?)」ジャミロクワイ(1992)

 おはようございます。

 今日はジャミロクワイのデビュー曲「When You Gonna Learn?」を。


Jamiroquai - When You Gonna Learn? (Official Music Video)

 

 ”今日のニュースを聞いたかい?

     世界中の人々が誓約している ゲームを始めると

   現代社会の犠牲者は この世の中の状況がもたらしたんだ

   アルマゲドンがすぐにくるよ、ほんとにもうすぐさ

   僕らの子供達の運命を救うには  先を見る目だけが頼りだ

  それによって起こる結果は、とても重くシリアスだ

  偽善者たち 僕らは奴らの奴隷さ

  だから友よ、このひどい状況を止めるんだ

   お互いに  頼り合うことで

 

  どんな高い山も深い川も乗り越えて

  今起こっていることを止めなくちゃいけない

  この世界を眠りから目覚めさせなくちゃいけない

  みんな、今起こっていることを止めるんだ

 

     今日のニュースを聞いたかい?

  俺の一番好きなレストランのメニューには

 "お金”が載ってるんだ

   食べ物の量がどうとか話すのはよそうぜ

  もう海には魚は残っちゃいないんだから

   強欲なヤツらが、そこにいた生き物をみんな殺しているんだ

  だから君は自然のあり方に合わせるべきなんだ

  でなけりゃ、自然は僕らから全てを奪ってしまうよ

   何が正しくて何が悪いのか

   僕らの方がよくわかっているなんて過信しないでくれ 

   自分にできることをやることで

  もうすでに自然のバランスをひっくり返してきたじゃないか

      今じゃ 僕の人生も君にかかっているんだ

 

   どんな高い山も深い川も乗り越えて

    今起こっていることを止めなくちゃいけない

    この世界を眠りから目覚めさせなくちゃいけない

    みんな、今起こっていることを止めるんだ

 

       強欲なヤツらは消えてなくなるさ

    僕らが今起きていることを止めたなら

       必ずそうなるはずなんだ

       みんながそれを止めたら 

  僕は君に聞いているんだ

  それを止めなくちゃいけないって

  いつになったらわかるんだい?    ” (拙訳)

 

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Have you heard the news today?
People right across the world
Are pledging they will play the game
Victims of a modern world
Circumstance has brought us here
Armageddon's come too near, too too near, now
Foresight is the only key
To save our children's destiny
The consequences are so grave, so so grave, now
The hypocrites, we are their slaves
So, my friends, to stop the end
On each other, we depend
Oh, we depend

Mountain high and river deep, oh yeah
We've gotta stop it going on
We gotta wake this world up from its sleep
Oh, people, stop it going on


Have you heard the news today?

Money's on the menu in my favourite restaurant
Well, don't talk about quantity
Cause there's no fish left in the sea
Greedy men been killing all the life there ever was
And you'd better play in nature's way
She will take it all away
And don't try and tell me you know more than her
About right from wrong
Oh, you've upset the balance, man
Done the only thing you can
Now my life is in your hands


Mountain high and river deep, oh yeah
We've gotta stop it going on
We gotta wake this world up from its sleep
Oh, people, stop it going on

Mountain high and river deep
We've gotta stop it going on
We gotta wake this world up from its sleep
Oh, people, stop it going on


Greedy men will fade away,
When we stop it going on
I know it's got to be that way
When people stop it going on
I'm askin'
Oh, when you gonna learn
To stop it going on
Now, when you gonna learn
To stop it going on
Now, when you gonna learn
To stop it going on
Oh, when you gonna learn to stop it going on?

 

 

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  ジャミロクワイはボーカルでソングライターのジェイ・ケイを中心とするユニット、バンド。しかしほとんどの人が、<ジャミロクワイ=ジェイ・ケイ>というイメージを持っていると思います。

 

 ジャミロクワイJamiroquai)は”Jam”(即興演奏)と北米のインディアン”iroquai”(イロコイ族)を合わせた名前で、当時ジェイ・ケイが北米の先住民族の生き方に深く影響を受けていたことが反映されています。

 大きな毛皮の帽子、コート、バッファーローの角のロゴなど、彼のビジュアル・イメージもアメリカの先住民族のスタイルを倣ったものでした。

 

 中でも彼は、カナダを中心とする地域の先住民族クリー族のことわざに影響を受けたと語っています。

 

「<最後に残った一本の木が朽ち、最後に残った一本の川が毒され、最後に残った魚が捕らえられたときにようやく、我々はお金が食べられないという事実に気付くのだ>。その言葉が、僕には世の中のあらゆる問題の本質をついているように思えたんだ。ちょうどテレビのとある番組で、象のおぞましい間引きの映像を見たばかりでさ。40頭くらいの象が、ヘリコプターから射殺されるというね。それを見て、心がざわつくのを感じたんだ」

 (「ジャミロクワイ<デビュー20周年記念スペシャルエディション>」ライナーノーツより)

 

 レストランのメニューに”お金”があるとか、海にはもう魚が残っていないとか、強欲な奴らがそこにいた生き物をみんな殺しているんだ、といったこの曲の歌詞はここからきているんですね。

 

「頭から終わりまで、この曲を書くのにかかったのは30〜40分だったと思う。一緒に曲を作るはずだった奴がランチから戻ってきた時には、すでに僕ひとりで全部仕上げてしまったんだ」

 (同上)

 

 この曲を彼のマネージャーが気に入り、売り込み用にレコーディングすることになるとプロデューサーがつき、”売れ線”にするために歌詞を半分に削ったそうですが、納得できなかった彼はそれを突っぱねてもう一度歌詞を元に戻したそうです。

 

 それから、昔からの知り合いであるウォリス・ブキャナンに、この曲の冒頭で強いインパクトをもたらすことになるディジリドゥ(オーストラリアの先住民アポリジニの楽器)を演奏してもらい、レコーディングを仕上げました。

 

 そして彼はこの曲を”アシッド・ジャズ・レコード”から発売します。

 アシッド・ジャズ・レコードは1987年にエディ・ピラーとジャイルズ・ピーターソンの二人のDJが立ち上げたレーベルです。アシッド・ジャズとは、当時のイギリスのクラブ・シーンから生まれたジャンルで、古いソウル・ミュージックやジャズ、ラテンなどを”ダンス・ミュージック”としての視点で新たに蘇らせたものです。当初は DJたちの選曲スタイルを指しましたが、ブランニュー・ヘヴィーズやインコグニートなど、そういう背景をバックにしたアーティストも現れ人気を集めていました。

 

 しかし、アシッド・ジャズのシーンはそれほど大きなものではなかったようで、その中で彼のように若く、ボーカル、曲、サウンド、ビジュアル全てを兼ね備えたニュー・カマーが現れると騒ぎになり、クラブDJたちは競うようにこの「When You Gonna Learn?」をかけまくり、その人気はクラブ・シーン自体を越えてゆくのは時間の問題だったようです。

 

 日本でも彼の人気はすぐに火がつきました。

 

ジャミロクワイ< デビュー20周年記念スペシャルエディション>」のライナーノーツで、”フリー・ソウル””サバービア・スイート”といった”新しい選曲スタイル”で渋谷系のムーヴメントを牽引したひとりである橋本徹氏が書かれた文章に興味深いところがあります。

 

「1993~94年頃、渋谷を歩く若者たちのファッションが、それまでのネオアコ的なベレー帽から、70年代的な(つまりジャミロクワイ的な)ニット帽に変わったのを、僕も見逃さなかった。そうした街の空気と時代の風を受けて始まったのが、”フリー・ソウル”のDJパーティであり、コンピレイションCDである」

 

 ジャミロクワイ(ジェイ・ケイ)という才能は、当時の日本のファッションやライフ・スタイルにも大きな影響を与えたアーティストだったわけです。 

 

 

 

 

 

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