まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「ならず者(Desperado)」イーグルス(1973)

 おはようございます。

 今日はイーグルスの「デスペラード(ならず者)」を。

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Desperado, why don't you come to your senses
You've been out ridin' fences for so long now
Oh, you're a hard one
I know that you've got your reasons
These things that are pleasin' you
Can hurt you somehow

Don't you draw the queen of diamonds, boy
She'll beat you if she's able
You know the queen of hearts is always your best bet
Now it seems to me, some fine things
Have been laid upon your table
But you only want the ones
That you can't get

Desperado
Oh, you ain't getting no younger
Your pain and your hunger
They're driving you home
And freedom, oh, freedom
Well that's just some people talking
Your prison is walking through this world all alone

Don't your feet get cold in the winter time?
The sky won't snow and the sun won't shine
It's hard to tell the night time from the day
And you're losing all your highs and lows
Ain't it funny how the feeling goes
Away...

Desperado
Why don't you come to your senses?
Come down from your fences, open the gate
It may be rainin', but there's a rainbow above you
You better let somebody love you
(Let somebody love you)
You better let somebody love you
Before it's too late

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デスペラード
どうして正気に戻らないんだ?
今までずっと心の柵を守ってばかりで
ああ、君は難しいヤツさ
君には君の理由があるんだよな
君を喜ばせているものが
どういうわけかを傷つけもする

 

ダイヤのクイーンは引くなよ
彼女はその気なら君を打ちのめしてしまうのさ
いつだってハートのクイーンに賭けるべきなんだ
僕にはこう見えるよ すでにいい持ち札が
ずっと君のテーブルの上に置かれていると
だけど、君が欲しがるのは
手に入らないものばかりさ


デスペラード
ああ、君はもう若くはない
痛みと飢えが
君を家に連れ戻そうとしている
そして、自由は、ああ、自由は
そんなものは、ただ誰かが口にするだけのものさ
君は、この世界をたった一人で歩くという牢獄にいるんだ

 

冬になれば足が冷たくなるだろう
空は雪を降らせもせず、太陽は輝かない
夜と昼の区別もつかなくなっている
そして、君はいいことも悪いことも感じなくなってゆく
こんな風にして感覚をなくしてしまうのは
おかしいよな


デスペラード
どうして正気に戻らないんだ?
柵から降りて 門を開けるんだ
雨が降っていても、君の上には虹がかかっているんだ
誰かの愛を受け入れるべきさ
誰かの愛を受け入れるべきさ
手遅れになる前に

 

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  この曲は1973年に発売されたアルバム「ならず者(Desperado)」のタイトル曲でしたが、シングルではありませんでした。しかし、今の時代になってTVなどでは、彼らの代名詞「ホテル・カリフォルニア」以上に耳にする機会が多いと感じるほどのスタンダードになっています。

 

 アルバム「ならず者」を作るきかっけをドン・ヘンリーはこう回想しています。

「僕たちの友人でミュージシャン仲間のネッド・ドヘニーがジャクソン・ブラウンに21歳の誕生日プレゼントとして、昔の西部の有名なアウトローたちの写真を集めたコーヒーテーブル・タイプの大きな本を贈ったんだ。ジャクソンはその本をJ.D(サウザー)とグレン(フライ)に見せて、こういうアウトローを題材にした曲を一緒に作ってみないかと提案したんだ。最初の曲は、ビル・ドゥーリン、ビル・ダルトン、ボブ・ダルトン、エメット・ダルトン、ビル・パワー、ディック・ブロードウェル、ジョージ・"ビタークリーク"・ニューカムらで構成された有名なアウトロー・ギャングを歌った「ドゥーリン・ダルトン」だった。最初にジャクソンが言い出したのだと思う」

 

 そして、グレンがこの本を他のメンバーにも見せて、アルバムのコンセプトを理解してもらったと言います。

 

 そして、ドン・ヘンリーはこの頃ローレル・キャニオンの一番上にある、かつてバーズのロジャー・マッギンが住んでいたという小さな家に引っ越していたそうで、そこでこの「デスペラード」が生まれました。

 

 「ここで、グレンと僕は初めて二人だけで本格的な執筆活動を行ったんだ。ある日の午後彼がやってきて、僕はためらいながらも、1960年代後半からずっと持っていた部分的にできていたコード進行とメロディを彼に聴かせたんだ。そのスタイルは「アメリカ音楽の父」と呼ばれることもあって、200曲以上の曲を書き、多くの論争を巻き起こしたスティーブン・フォスターの古い曲をベースにしたものだった」

 

 「僕が驚いたのは、グレンがスティーブン・フォスターとは何者なのか知っていたことなんだ。彼はすぐに理解し、僕が求めていたものを直感的につかんで、何年も眠っていた曲の断片に、追加のコードや歌詞を含む構成を加えてくれたんだ(ジャクソン・ブラウンと「Take It Easy」を作った時と同じように)」

 (Rolling Stone JUNE 10, 2016)

 

2003年の「Very Best of Eagles」のライナーの、キャメロン・クロウによるインタビューではドン・ヘンリーはこのように語っています。

 「68年頃、僕はこの曲を作り始めました。それは "Desperado "という名前ではなかった。でも、同じメロディー、同じコードを使っていた。占星術と関係があったような気がする(笑)。当時のタイトルが何であれ、ひどいものだったよ(笑)。ジャクソン・ブラウンがウエスタンのテーマを提案してくれた。トランプに関係するものだったと思いうけど、それは僕たちが狙っていた方向性と近かったんだ」

 このライナーには、グレンのコメントも載っています。

 「僕たちがファースト・アルバムを持ってイギリスから戻ってきた1日か2日後のことさ。ドンがピアノの前に座って作業中のこの曲を聴かせてくれたんだけど、それが "Desperado "のイントロだった。もともとは、レオという名前の友人のために書いた曲だった。曲はこう始まっていた“Leo, my God, why don’t you come to your senses. You’ve been out ridin’ fences for so long now.”」

 

   数々の大ヒット曲を生み出したグレン・フライドン・ヘンリーのコンビの記念すべき第一作がこの曲だったんですね。

 そして、フォスターにインスパイアされ、レオという友人に捧げられたものだったものに、アルバムのテーマが古い西部のアウトローに決められたことで、古くは”法を破る人”を意味し、19世紀のアメリカ西部では強盗たちを指したという”Desperado”という言葉をあてはめたんですね。

  1969年には「Desperados」という西部劇がハリウッドで制作されていますので、この言葉は19世紀の本などから見つけてきたものではなく、その当時でも西部劇の映画や小説に接する人にはある程度馴染みのあるものだったのでしょう。

 ”Desperado"というタイトルであれば、普通はノリが良くてワイルドなカントリー&ウエスタン風の曲になりそうなものですが、逆にフォスター調の懐しく美しい調べにのせて友人からの忠告を歌にするという意外性が、この曲をより際立たせているのかもしれないですね。

 そして、ドンとグレンのソングライティングのおかげで、”Desperado"は、自分のまわりにいる、無鉄砲で意地を張った生き方をしているがためにかえって自分自身を苦しめ、それでますますヤケになっている、そんな人に想いを馳せることも可能にさせてくれます。

  

 さて、ネットで検索してみるとビリー・ジョエルドン・ヘンリーにインタビューしているものがあって、お客さんからの質問で「人生でやり直したいものは?」という質問に対して、ドンは”デスペラード”のオリジナルのヴォーカル・レコーディングと答えています。

 場所はロンドンで、ロンドン交響楽団と一緒に洞窟のようなスタジオで、ライヴ録音されたそうで、彼は怖気付いてしまったのですが、オーケストラのメンバーのほうは退屈そうだったらしく、隣の演奏者との間にチェス・ボードを置いて、録音の合間にチェスをしていたそうです。

 そして、プロデューサーは彼に4、5回しか歌わせてくれなかったそうです。

「だから、あのヴォーカルは僕の最高の出来じゃないんだ。そして、もう一回やるチャンスがあればと願っている。だけど、いいんだ、、リンダ・ロンシュタットが素晴らしくやってくれたから」

 

 この曲が有名になる最初のきっかけはリンダ・ロンシュタットが同じ1973年にカバーしたからでした。彼女は70年代のウェストコーストを代表する歌姫であるばかりじゃなく、数多くの若い才能を取り上げてチャンスを与えた”女神”のような存在でした。

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 1975年にはカーペンターズもカバーしています。この時期、カレンは心身ともに衰弱し始めていて、そのためリチャードも疲れ果て、納得のできるアルバム制作ではなかったようですが、カレンのヴォーカルからは、それまでのカーペンターズとは違う、切実なものが伝わってくるような気がします。

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 最後にイーグルスの1976年のライヴ音源を。

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