まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「愛のためいき(FEEL LIKE MAKIN' LOVE )」ロバータ・フラック(1974)

 おはようございます。

 今日はロバータ・フラックの「愛のためいき」を。

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Strollin' in the park
Watchin' winter turn to spring
Walkin' in the dark
Seein' lovers do their thing

That's the time
I feel like makin' love to you
That's the time
I feel like makin' dreams come true
Oh, baby

When you talk to me
When you're moanin' sweet and low
When you're touchin' me
And my feelings start to show


In a restaurant
Holdin' hands by candlelight
While I'm touchin' you
Wanting you with all my might


Strollin' in the park
Watchin' winter turn to spring
Walkin' in the dark
Seein' lovers do their thing

That's the time
I feel like makin' love to you

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公園をぶらつきながら
冬から春に変わるのを見つめている
暗闇の中を歩きながら
恋人たちの様子を見ている

その時なの
あなたと愛しあいたい気持ちになる
その時なの
あなたと愛しあいたい気持ちになる


あなたが話しかけると
あなたが甘く低い声をもらすと
あなたが触れているとき
私の感覚が生まれてくるの


レストランで
キャンドルライトのもとで手をつなぎ
あなたに触れている間
全身全霊であなたをほしくなる

 

公園をぶらつきながら
冬から春に変わるのを見つめている
暗闇の中を歩きながら
恋人たちの様子を見ている

 

その時なの
あなたと愛しあいたい気持ちになる

 (拙訳)

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  この曲はロバータ・フラックにとって「愛は面影の中に(The First Time Ever I Saw Your Face)」(1972年)、「やさしく歌って(Killing Me Softly with His Song)」(1973年)に続いて全米NO.1になりました。

 

 しかし、この曲がヒットに至るまで彼女は相当苦労したようです。

 この曲が収録されたアルバム「愛のためいき」のセッション中に、彼女のデビュー時からのプロデューサーのジョエル・ドーンが、レーベル側ともめて突然やめてしまったのです。他のプロデューサーと仕事をしたことがなかった彼女は”ルビーナ・フレーク(Rubina Flake)というペンネームを使って、セルフ・プロデュースに挑戦することになりました。彼女は自分が求めるサウンドを見つけるために膨大な時間とお金を費やすことになり、後に彼女は”生涯最悪の経験のひとつ”と語っていたそうです。

 

 彼女を救うことになったこの「愛のためいき」を書いたのが、R&Bシンガーのユージン・マクダニエルスでした。

 彼女と彼の付き合いは古く、彼女のデビュー・アルバム「ファースト・テイク」のオープニングを飾っていたのが彼のペンによる「Compared To What」という曲でした。

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 "大統領、ヤツは自分の戦争をやっている 人民は何のためにやっているのかわからない、誰も理由を教えてくれない”

 当時のベトナム戦争や社会情勢を強く皮肉った歌で、レス・マッキャンとエディ・ハリスがとりあげて評判になり、のちにジョン・レジェンドザ・ルーツもカバーしています。

  マクダニエルスはソウル・ファンからはOutlaw』(70年)と『Headless Heroes Of The Apocalypse』(71年)という社会的メッセージを打ち出した”ニュー・ソウル”の作品で有名ですが、もともとは1960年にポップ・シンガーとしてデビューしていました。「A Hundred Pounds Of Clay」(全米3位)や「Tower Of Strength」(全米5位)という大ヒットがありましたが、後者はバート・バカラックが書いた曲でした。

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 さて、この「愛のためいき」は、マクダニエルスが45分ほどで書き上げ、フラックはワンテイクで録音したものだったそうです。

ジーン(マクダニエルズ)が最初に電話をかけてきて私に歌ってくれたとき、彼はただ楽器をつまびいていただけだったわ。スタジオに入ったときに、私は基本的な感覚を持っていて、あまり感傷的にならずに進めたかったの。この曲には、言うべきことが書かれていると感じたから。1回だけ歌ってみたら、ジーンが”うわー、本当にすごくよかった。もう一度、フレーズのいくつかをルバート(テンポをわざとずらすこと)にしてやってくれないか』と言われたので、『ノー、これがいいわ』と答えたの。それを再生してみると、(ドラマーの)ラルフ・マクドナルドが『これがいいと思う』と言ったの。みんな同意したわ。あの曲はワンテイクでやったのよ」

RHINO INSIDER August 10, 2016)

 

 1時間もかからず書き上げた名曲、大ヒット曲が数多くあることは、このブログでなんども書いてきましたが、レコーディングまで一発で決まるというのは、相当レアでしょう。

 

  最後に100以上あると言われるこの曲のカバーをいくつか。

マリーナ・ショウ 1975年発売のアルバム「フー・イズ・ジス・ビッチ・エニウェイ(Who Is This Bitch, Anyway? )」に収録されていたヴァージョン。クラブシーンやミュージシャンからの人気は本家よりこちらのほうがあるようです。

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  アルバム「愛のためいき」にも参加していたボブ・ジェームス。1974年のアルバム

『はげ山の一夜(One)』収録。この曲が持つグルーヴをより軽やかにしていています。

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  そして2000年にディアンジェロもカバーしていました。

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