まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「マホガニーのテーマ(Theme from Mahogany (Do You Know Where You're Going To))」ダイアナ・ロス(1975)

 おはようございます。

 今日はダイアナ・ロスの「マホガニーのテーマ」を。


Theme From Mahogany (Do You Know Where You're Going To)

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Do you know where you're going to?
Do you like the things that life is showing you?
Where are you going to, do you know?


Do you get what you're hoping for?
When you look behind you there's no open door.
What are you hoping for, do you know?

Once we were standing still in time,
Chasing the fantasies that filled our minds.
And you knew how I loved you but my spirit was free,
Laughing at the questions that you once asked of me.


Do you know where you're going to?
Do you like the things that life is showing you?
Where are you going to, do you know?

Now looking back at all we planned,
We let so many dreams just slip through our hands.
Why must we wait so long before we see
How sad the answers to those questions can be?

Do you know where you're going to?
Do you like the things that life is showing you?
Where are you going to, do you know?


Do you get what you're hoping for?
When you look behind you there's no open door.

What are you hoping for, do you know?

 

Writer/s: GERRY GOFFIN, MICHAEL MASSER

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あなたは知っているの?自分がどこに向かっているのか

人生があなたに見せてくれるものは好き?

あなたはどこに行こうとしているの?

それを知っているの?

 

望んでいたものは手に入ったの?

後ろを振り返っても もう開いている扉はない

あなたは何を望んでいるの?

それをわかっているの?

 

かつて私たちは 時に動じることもなく

心を満たしてくれる幻想を一緒に追いかけていた

あなたは私がどれだけ愛しているかわかっていたわ

だけど私の魂は自由だったから

いつかあなたが尋ねた質問を笑い飛ばしたの

 

あなたは知っているの?自分がどこに向かっているのか

人生があなたに見せてくれるものは好き?

あなたはどこに行こうとしているの?

それを知っているの?

 

私たちの描いていたことを振り返ってみると

あまりにもたくさんの夢が二人の手をすり抜けていったわ

その質問の答えがどんなに悲しいものかがわかるまで

どうして二人はそんなに長く待たなければいけないの

 

あなたは知っているの?自分がどこに向かっているのか

人生があなたに見せてくれるものは好き?

あなたはどこに行こうとしているの?

それを知っているの?

 

望んでいたものは手に入ったの?

後ろを振り返っても もうドアは全部閉まっている

あなたは何を望んでいるの?

それをわかっているの?

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 小学生の頃、ネスカフェのTVCMでこの曲を聴きました。その前にロバータ・フラックの「やさしく歌って」も同じネスカフェのCMで使っていましたから、この2曲には今だに同じ空気感を感じてしまいます、、。

 

 スプリームスで数々の大ヒットを飛ばしたあと1970年にソロ活動を始めたダイアナ・ロスは音楽だけではなく、女優業にも乗り出しました。1971年「ビリー・ホリデイ物語」でビリー・ホリデイを演じ、2作目の映画が「マホガニー物語」(1975)でした。

 モータウンの社長ベリー・ゴーディ自らが監督をつとめているので、相当気合の入った作品だったのでしょう。

 この映画で彼女はデザイナー志望からモデルへ転身して一気にスターになる主人公を演じ、主題歌がこの「マホガニーのテーマ」でした。

 

 作詞をしたのはキャロル・キングとのコンビで名高いジェリー・ゴフィン。そして作曲はマイケル・マッサー。

 僕がリアル・タイムで聴いてきた中では最高のバラード作家だと思っている人です。

バカラックの全盛期はリアルタイムで経験していないので、、)

 

   マイケルは元々、マンハッタンで株式のブローカーをやっていましたが、心が満たされないまま過ごす中で音楽を作りたい欲求がどうしても高まっていき、大変に収入に恵まれた仕事だったにもかかわらず辞めてしまったというプロフィールの持ち主です。

 ピアノも独学で当初は譜面も読めなかったそうです。憧れのソングライターは「ムーン・リバー」の作詞でも知られるジョニー・マーサー。ソングライターになるにあたって彼から直々に指導を受けたそうです。

 彼にチャンスが訪れたのは、あるパーティーモータウンのチーフA&Rのスザンヌ・ドゥ・パースに出会ったときでした。彼の人柄に惹かれたスザンヌはダイアナのために曲を書かないかと彼にオファーしたのです。

 それが、「タッチ・ミー・イン・ザ・モーニング」。1973年に全米NO.1の大ヒットになりました。


Touch Me In The Morning

 マイケルはこう語っています。

ジョニー・マーサーから教わった最大のことは、”曲を急かすな”ということです。私が実際に直面したことは、誰もが早く曲を欲しがるということでした。「タッチ・ミー・イン・ザ・モーニング」を仕上げるのに2年かかりました」

                 (The Desert Sun of Southern California)

 時間をかけて仕上げるというマーサーの教えから、マイケルは”完璧主義者”と呼ばれるようになってゆき、歌のレコーディングでは名だたる多くのシンガーたちが音を上げたといいます。

 

 そして、彼が作曲したこの「マホガニーのテーマ」も全米1位になるわけですが、実はこの曲1973年にテルマ・ヒューストンがレコーディングしていました。詳しい経緯はわかりませんがモータウンからリリース予定だったのがキャンセルされ、手違いかもしれませんがニュージーランドだけで発売されています。

 

www.youtube.com

 サビは一緒ですがヴァース(Aメロ)の歌詞が違いますので、ダイアナが歌う際に映画の内容に合わせてあらたに書き直したのだと思います。

 

 スプリームス時代は軽快なポップソング、ソロになってからはバラード・シンガーのイメージが強いダイアナ・ロスですが、その路線を生み出したのがマイケル・マッサーだったのです。

 ダイアナと彼のコラボレーションを集めた「To Love Again」というアルバムが1981年にリリースされていて、二人のコラボレーションを堪能するにはぴったりな内容になっています。

 

 そして、ダイアナと離れたあと彼は、ホイットニー・ヒューストンの「すべてをあなたに(Saving All My Love For You)」「グレーテスト・ラヴ・オブ・オール」、ロバータ・フラック&ピーボ・ブライソンの「愛のセレブレーション」、ナタリー・コール「ミス・ユー・ライク・クレイジー」など、多くのバラードヒットを生み出しました。

 デヴィッド・フォスターとともに、この時代のバラードのスタイルを作り上げた人だったと思います。

 

 最後はダイアナ&マイケル・マッサーの作品をもう1曲。1980年全米9位、「今度は私(It's My Turn)。一聴すれば彼だとわかるようなスタイルを持った作曲家だったことがこの曲を聴いてもわかります。残念ながら、2015年に彼は亡くなっています。


It's My Turn

 

ネスカフェのCMで使われたもう1曲のスタンダード

popups.hatenablog.com

 

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