まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ダイアナ(Diana)」ポール・アンカ(1957)

 おはようございます。

 今日はポール・アンカの「ダイアナ」です。

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I'm so young and you're so old
This, my darling, I've been told
I don't care just what they say
'Cause forever I will pray
You and I will be as free
As the birds up in the trees


Oh, please stay by me, Diana


Thrills I get when you hold me close
Oh, my darling, you're the most
I love you but do you love me?
Oh, Diana, can't you see?
I love you with all my heart
And I hope we will never part


Oh, please stay with me, Diana


Oh, my darlin', oh, my lover
Tell me that there is no other
I love you with my heart
Oh-oh, oh-oh, oh-oh-oh-oh-oh-oh-oh

 

Only you can-a take my heart
Only you can-a tear it apart
When you hold me in your loving arms
I can feel you givin' all your charms
Hold me, darling, hold me tight
Squeeze me baby with all your might


Oh, please stay with me, Diana


Oh, please, Diana
Oh, please, Diana
Oh, please, Diana

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僕は若すぎて、君は年上すぎる
ねえ、僕はこう言われてるんだ
何と言われたって気にしない
だって、永遠に僕は祈るから
君と僕はずっと自由だって
木の上に止まった鳥のように


ああ、どうか僕のそばにいて ダイアナ


君が僕を強く抱きしめると、ドキドキするのさ
ああ、マイ・ダーリン、君は最高
僕は君を愛しているけど 君は愛してる?
ああ ダイアナ わからないの?
心から僕は君を愛してる
二度と離れないように願っている


ああ、どうか僕のそばにいて ダイアナ

おお、マイダーリン、僕の恋人
他に好きな人はないと言ってくれ
心から愛している
Oh-oh, oh-oh, oh-oh-oh-oh-oh-oh-oh


君だけが僕のハートを奪い
君だけが引き裂くことができる
君の愛しい腕に抱かれると
君が魅力を全部僕に与えてると感じるんだ
抱きしめて、ダーリン、強く抱きしめて
力いっぱいギュッと抱きしめて


ああ、どうか僕のそばにいて ダイアナ


お願いさ  ダイアナ
お願いさ  ダイアナ
お願いさ  ダイアナ

        (拙訳)

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 昨日このブログに登場したバディ・ホリーの「ザットル・ビー・ザ・デイ」の前の週に全米1位になっていたのがこの「ダイアナ」です。

 歌っているポール・アンカは作詞作曲も手がけていますが、当時まだ16歳だったといいますから驚きです。

 彼は才能だけじゃなく、音楽で成功する情熱も人一倍あったようです。

 

 

 カナダのオタワで生まれた彼は子供の頃から聖歌隊として歌い、一時はピアノを学び、13歳の時には、自分のボーカルグループ「ボビーソクサーズ」を結成し、参加できる限りのアマチュア・ナイトに出演していました。

 

 あるとき、キャンベル・スープのラベルをたくさん集めるとニューヨーク旅行に行けるというコンテストを知った彼は、食料品店に勤めると、キャンベルスープを買ったお客さんをつぶさにチェックし、ラベルをもらい集めコンテストに優勝し、ニューヨークに行ったそうです。そして、レコード会社や音楽関係の事務所、コンサートホールなどを訪ね歩き、自分も作曲家として成功してみせると決意したといいます。

 

 1956年、彼は両親を説得してロサンゼルスに行き、電話帳に載っているレコード会社に片っ端から電話をかけ、オーディションを受けました。そして、モダン・レコードというレーベルから最初のシングル "ブラウ・ワイル・デヴレスト・フォンテーヌ "という曲をリリースしますがヒットしませんでした。しかし、彼はファッツ・ドミノの楽屋に忍び込みファッツと彼のマネージャーに会うほど、売り込みを行なっています。1957年にニューヨークに戻ったアンカは、ABCパラマウント・レコードのA&R担当のドン・コスタに会うことができ、曲を披露すると(「ダイアナ」もそこに入っていました)その才能を認められました。

 

 ドン・コスタはアレンジャー、指揮者でイーディー・ゴーメとスティーヴ・ローレンス、のちにはフランク・シナトラとも仕事をし、自身の名義でインストのアルバムもリリースしています。

 

 彼にとってこの人との出会い、というのが大きかったですね。彼の曲自体もキャッチーで優れていますが、コスタのアレンジがまたそれをよく際立たせていると思います。

 

 さて、この「ダイアナ」には実在するモデルがいます。ダイアナ・アユーヴという女性で、彼が15歳の時、彼女は19歳。彼の弟か妹のベビーシッターをやったことはあったようですがそれほど親密な仲ではなく、教会や地域のイベントで彼女を見かけて、彼が一方的に恋に落ちます。

   しかし、二人の仲は進展することはなく、あくまでも彼の空想の中の恋人で終わったそうです。

 

 しかし、曲は大ヒットし、全米、全英ともに1位。特にイギリスでは9週間連続でトップを独走しました。

 日本でも大ヒット。

 ちなみに、大瀧詠一は日本人にとってのロックの父がポール・アンカだと語っています。

エルヴィス・プレスリーですらなくて、ポール・アンカなんだよ。C→Am→F→Gなのよ、どこまで行っても。父であり母であり、神様。C→F→Gじゃなくて、Am入れるところに日本の特殊性があるんですよ。かといってニール・セダカみたいにメジャー・セヴンスやシックスを使うまでのところはない」

(「大滝詠一Taiks About NIagara」)

 なるほど、C→Am→F→Gのコード進行はまさに「ダイアナ」。僕が初めてアコースティック・ギターを弾き始めた時に、教則本で最初に覚える循環コードもそうでしたし、このコードで弾ける曲はすごく多いな、って思った記憶があります。そのルーツは「ダイアナ」だったわけですね。

 

 さて、それ以降の彼のヒット曲もいくつかピックアップしてみます。

 

「君はわが運命 (You Are My Destiny)」1958年全米7位

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「あなたの肩に頬うめて(Put Your Head on My Shoulder)」1959年全米2位

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 サブスクではこの曲が大人気なんですよね。調べてみたらドージャ・キャットが「STREETS」と「FREAK」という曲でサンプリングしていました。

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  また、アンカはソングライターとしても活躍し、一緒のツアーで仲良くなったバディ・ホリーにも曲を書いています。その曲「It Doesn't Matter Anymore」はホリーにとって最後の録音となった一つで、飛行機事故で亡くなるわずかひと月前にリリースされています。バック・バンドのクリケッツと袂を分かっていたホリーに、アンカはストリングスを加えた新しいスタイルを提案したそうです。

 

「It Doesn't Matter Anymore」1959年全米13位

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 1963年ごろからヒットが出なくなりましたが、1969年にフランスの曲「Comme d'habitude」に英語詞をつけてフランク・シナトラに提供した「マイ・ウェイ」が大ヒットしています。

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 そして1974年に「二人のきずな((You're)Having My Baby)」が彼にとって15年ぶりの全米NO.1ヒットになっています。

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 さて、ポール・アンカは現在80歳ですが、昨年(2021)は新作「Making Memories」(「マイ・ウェイ」、「あなたの肩に頬うめて」などを新録)、暮れにはクリスマス・アルバム「Songs of December」と二枚のアルバムをリリースするなど、今もかなりエネルギッシュに活動しています。

 

 彼の後半のキャリアで最も大きかった話題といえば、マイケル・ジャクソンと1983年に作っていた曲が世に出たことでしょう。同名映画のタイトル・ソングでもあった「This Is It」(2009)、2014年にシングル・リリースされた「ラヴ・ネヴァー・フェルト・ソー・グッド」はともにクオリティが高く、アンカのポップ・ソングライターとしての才能を思い知らせれたようでした。

 

 「This Is It」はマイケルとのデュエットで、アンカのアルバム「マイ・ソングス〜朝のとばりの中で(Walk A Fine Line)」に収録され予定で、マイケルが多忙なためフィニッシュできなかったものだったようです。

 

 最後は、その「マイ・ソングス〜朝のとばりの中で(Walk A Fine Line)」から1曲。アルバムは思いっきりAOR路線に走った内容でしたが、そこからのシングル「朝のとばりの中で」(全米40位)を。デヴィッド・フォスターのプロデュースでピーターセテラのコーラスも入ってるせいか、シカゴの「素直になれなくて」の兄弟分みたいな雰囲気ですが、僕は「素直になれなくて」よりこっちが好きなんです、、、。

 ちなみに、1983年に彼の恩人であるドン・コスタが亡くなったため、このアルバムはコスタに捧げられています。

 

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ポール・アンカマイケル・ジャクソンが共作し大傑作。

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